第7話(累計 第14話) ミアのプロポーズ。
解剖を終えた後、フィンにあてがわれた休憩室。
そこのベットの上で抱きしめ合うフィンとミア。
解剖に慣れず途中退場してしまって悲しむミアを、フィンは抱きしめて慰める
するとミアは、これまでため込んでいたフィンへの愛情を一気に放出。
これまでの冗談半分ではない、本気のプロポーズ。
フィンのお嫁さんになりたいと宣言した。
しかし、フィンもまだミアに結婚は早いとはぐらかす。
「先生、お話が難しいよぉ。簡単に言ってぇ」
「はぁ。まったくミアくんには困るな。じゃあ、はっきり言います。あと数年、ミアくんは頑張って大人の女性になりなさい。そして私にもう少し踏ん切り、キミと結婚する気持ちが固まり、その時に君の気持が変わっていなければプロポーズをお受けしましょう」
ワザと話が分からないと言い張り、フィンからのはっきりした答えを望んだミア。
フィンはため息をついて、ミアのプロポーズを数年後になら受けると答えた。
「え! 今、ボク空耳を聞いたのかな? ボクのプロポーズを受ける。ボクと結婚してくれるって言ったよね、先生!」
「このアホ生徒! もう一回言います。私は大人になったミアくんとなら結婚してもいいです。全く、この子は放置していたら何をしでかすか分からないですから、心配です。心の底までの~天気過ぎて、悪いオトナに騙されるかと思ったら我慢できません。だったら側で可愛いキミの一生を見守るのも一興でしょう」
「わーい。やったー。ボク、先生のお嫁さんになれるんだ―!」
「これだから、ミアくんはお子ちゃまだと言うんです。まったく困った子です。これからミアくんが、ちゃんと大人のレディになれたらですからね。それまでに私以上の相手が見つかれば、そっちに行ってもいいんですから」
「やだもん! ボク、ぜーったい、先生以外とは結婚しないもん。ぎゅーだ!」
困ったと言いながらも赤い顔をしつつ、ミアを抱きしめたままのフィン。
ミアもぎゅーっとフィンを強く抱きしめ返し、フィンの匂いを嗅いだ。
「先生、石鹸のにおいがする―」
「そりゃ、さっきシャワーを借りたましたからね。ミアくんは何処か甘いにおいがするよ」
お互いの匂いを嗅ぎ合う二人。
いつしかお互いの顔を見合わせる。
お互いの顔には欲情が見られ、二人とも潤んだ瞳をしていた。
「せんせー。キスして良い?」
「そういうのは普通、男性側から聞くぞ、ミアくん。先に言っておく。いくらハーフエルフは只人族よりも性欲が強くないとはいえ、キスまですると我慢出来ずに私はキミを襲うぞ」
ミアは真近にある優美なフィンの顔から目が離せない。
フィンもミアの柔らかい肌をもっと感じたい。
二人の視線はお互いの唇へと向かう。
「いいもーん。せんせーにだったら、無茶苦茶にされてもボク嬉しいもん」
「この馬鹿者……」
「ん。むちゅ。あ、あん」
フィンは、更に馬鹿な事を言いそうなミアの唇を己の唇で塞いだ。
◆ ◇ ◆ ◇
「あー。良かったのぉ。ボク、先生とエッチしたんだー!」
「ミアくん。頼むから誤解が広がる様な事は言わないでくれ。キミとはキスとハグ、添い寝以上の行為は何もやっていないのだから。はぁ、我慢するこっちの立場も考えてくれよぉ」
数時間後、ミアとフィンは同じ部屋から出てきた。
泣き疲れていたミアはキスで満足したのか、フィンの胸の中であっというまに眠った。
抱きつかれたままであったが幼い寝顔を間近で見て、フィンはミアはまだまだ小さな子供であったのを再確認する
そして彼女を傷つける『行為』は行わず、彼も共に眠る事にした。
「あー、先生が初めて泣き言をボクの前で言ったの。やったー!」
「はいはい。ミアくんは一々はしゃがない。今回は解剖で、お互いに『死』を意識したから反動で『生きる』。つまり愛する相手との『性』を求めてしまったのだろう。戦場ではよくある困った事だが、今回はまあいい。私は最後の一線でちゃんと我慢できたわけだし」
フィンは、はしゃぐミアの前で照れ隠しに自分がミアを求めてしまった事を理論的に説明する。
そして、これ以上暴走して可愛いミアを襲わない様に自分の気持ちを抑え込んだ。
「さて、仮眠ができたから頭も十分とすっきりした。じゃあ、事件解決を目指して頑張ろう、ミアくん」
「はい、せんせー!」
師弟から夫婦漫才モードになっているのを感じるミアであるが、フィンが横に居てくれるのは、とても嬉しい。
だから、つい抱きつきにいってしまう。
「だから! ミアくんは、一々私に抱きつかない。確かにキミのプロポーズは受け取ったが、まだ保留中だ、第一、キミの両親に私は挨拶をせねばならんだろ? 人生の大事な案件を勢いで決めていい話ではないぞ?」
「あ、そーでした。じゃあ、事件解決後にお父さんとお母さんに逢ってね、先生」
「ああ、分かったよ、ミアくん。何回も念を押すが、今回は仮の婚約ということ。結婚自体は数年後の話。それまで私は、ミアくんにキス以上は手出しをしない。これで良いよな」
「うん。いいよ、先生。うふふ。数年後が楽しみなのぉ」
うっとりと頬を薔薇色に染め、未来を夢見るミア。
その横顔が普段の幼げなものから変わって、乙女のものに感じたフィンはミアから視線をそっと外す。
「大人っぽい姿を見せたかと思えば、幼子の様。その逆もそうだ。この年頃の女の子の扱いは実に困る。第一、私の何処が良かったんだ? 種族に寿命は違う。年齢も大きく違うし、実家のサポートに資産なぞ取り換え児の私には一切期待できんぞ? 性格も自分で言うのもナニだが、堅物で頑固な捻くれ者。ミアくんの同年代で、もっと良い男はいないのか?」
「だってぇ、ボク。先生に一目惚れしたんだもん。最初に先生を見た時、ボクはこの人のお嫁さんになるって決めたの」
「ん? 私と初めて出会ったとき、ミアくんはまだ五歳くらいだったような」
フィンはこれが機会だと、どうしてミアが自分を愛するようになったのか聞くと、五歳の時に初めて対面してからという問題発言を聞いてしまう。
「そーだよ。ボクは五歳の時に先生と結婚するって決めたの。それをおとーさんに話したら、おとーさんはすっかりしょげちゃったんだけど」
「おい! ミアくん、それを早く言いなさい。これは面会の際にお土産やら花やら持って行って、ご両親のご機嫌を取らねば。娘を騙すのかって、私が殺されかねん」
「だーいじょーぶ、先生。最近でも、ボク先生と結婚するんだ―って毎日言ってるから。おかーさんはあまり本気にしていないし、おとーさんはイジケるの」
「それはダメなパターンじゃないか! ミアくん。頼むから話をこれ以上複雑にしないでくれ」
「どーしよーかなぁ。うふふ。楽しいなぁ」
結局、この後も二人は事件の事を忘れ、しばし夫婦漫才を楽しんだ。




