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乙女な神官戦士と魔法学院教授の異世界法医学ファイル~ボク、スパダリでハーフエルフの先生と一緒に完全犯罪は見逃さないの!~  作者: GOM
第2章 異世界でも年金偽装は発生する。

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第6話(累計 第13話) 解剖その2:実解剖。そして愛の……。

「それでは解剖を始めます。手伝いは学院の者がします。まずは、採血から。ミアくんは、ここから先は下がって記録係を頼む」


「は、はい、先生」


 フィンはミアに少し下がって観察するように命じる。

 まだ幼い彼女に負担を掛けない意味もある上に、実際に執刀する際には動物の解体・解剖に慣れている助手の方が助かるからだ。


「では、採血を」

「了解です」


 フィンの研究室で学ぶ学生が手慣れた様子で心臓付近に深く銀の針を刺し、心臓内の血液を注射器で採取する。


「ふむ、保存魔法の効果で血液はまだ凝固や分解をしていなかったか。助かるな。うむ、鮮やかな緋色をしている。死後にて『酸素』が無いにもかかわらず、鮮やかな赤を示すという事は、『あの』種の毒物か」


「え!? 毒なんですか、先生」


「まだ確証はないが、かなり可能性が高いな、ミアくん。続いて後頭部から髄液の採取を。ふむ、透明で血液が無いから、脳血管系の病気ではないな」


 助手に手伝ってもらいながら、ミアの方に顔を向けずに推理した内容を話すフィン。

 そして、粗方のサンプル採取が出来た後、周囲に呼びかけた。


「それでは、これ以降は腹部から切開を始める。術式はY字切開。メスとしてご遺体が作られていたナイフを使用させていただく。では、モイーズさん。ありがとうございました」


 フィンは小型だが、切れ味が良さそうな刃物を遺体の上に降ろす。

 そして感謝を述べて、すっと刃を遺体の肌に切り入れた。


「う!?」


「ミアくん、無理してみなくてもいいぞ。他の方も同じくだ」


 既に死亡している為、切られていく身体からの出血は少ない。

 フィンにより遺体の皮膚、筋肉、脂肪が丁寧に切り払われていき、肋骨は専用のニッパーで切断。

 最後に腹膜が切り裂かれる。

 今まで何の匂いもしなかった部屋の中に、臓物から出る臭気が広がっていく。


「だ、だいじょーぶ。猪の解体とかもボク、手伝ったことがあるし」


 フィンは、蒼い顔をしながらも大丈夫と言い張るミアを心配する。

 いくら強くてモンスターをも倒すとはいえ、まだまだ幼い乙女なのだから


「それならよし。肋骨には生活反応が無く死後に折れた跡がある。これは、蘇生術、心臓マッサージの後か? また、心臓と肺に典型的な病変が見られる。これは『肺水腫』だな。心臓血の採取も心房ごとに頼む。臓器各部だが『うっ血』をしている。お、口腔内や気管支に火傷はないものの、微量だが煤があるな。次に胃だが内容物が残っている。もし死亡直後に保存魔法が欠けられていたのなら、胃の内容物。最後に食事をしたものも残っているだろう」


 フィンは周囲に語りかけながら、各臓器を丁寧に取り出していった。


「脳は血管部位も異常なし。心臓も脳も血管の梗塞など致命的な病変がない上、体内でも臓器にガンや壊死、大量出血などが見られないから、急な病死は考えにくいな」


 フィンは、最後に頭蓋骨も取り外した後に脳も取り出した。


「ぐぅ。ううう」


「ミアくん、早くトイレに行きなさい。他の人もこの部屋の中で吐かないでください。汚染が広がります」


 多くの人々が口を抑えたり、()しゃする中。

 ミアは、口を両腕で押さえながら女子トイレに駆け込む。

 乙女は知人がバラバラにされていくのを我慢できず、数時間前に食べたものを吐き出してしまった。


「ごめん。ごめんなさい。クロエちゃん、モイーズさん、ごめんなさい。ボク、最後まで見守らないといけないのに出来なかったよぉ……」


 ミアは、なおも吐き戻しながらトイレで泣き崩れた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「せんせー、ごめんなさい。ボク、解剖に立ち会うなんて言いながら、途中で……」


「別に気にしなくてもいいよ、ミアくん。いくら遺体に慣れようとも、知人がバラバラになっていくのを見ているのは辛いからね」


 解剖終了後、フィンは集まった人々から多くの質問を受けたため、軽く講義を行った。

 その後、シャワーを浴びて休憩をする為に神殿内に用意された部屋に向かうと、ベットの上に泣き崩れていたミアが居た。


「でもでもぉ」


「ミアくん。キミが全部背負い込むことはないんだよ。何でも一人で全部出来る必要なんてどこにもない。私が出来る事をミアくんが全部出来る必要はないし、逆もそうだ。だって、私は片づけが苦手だが、ミアくんは得意だろ? それにミアくんは私よりも戦うのが強いぞ」


 慣れない解剖と各種講義に疲れながらも、可愛い教え子が苦しんでいるのを黙っていられるほど、フィンは不愛想でも薄情でもない。

 周囲に他の人の目がいない事を確認しつつ、そっと泣き止まないミアを抱きしめた。


「あ、せんせい」


「先に言っておくが、これはイヤらしい目的の抱擁じゃないぞ。アホな子供が悲しんで泣き止まないから、あやしているだけだ」


 長い耳の先まで赤くしながらも優しくミアを抱きしめるフィン。

 ミアの背中をぽんぽんと幼子をあやす様にさする。

 ミアも、ぎゅっとフィンを抱きしめ返した。


「せんせー、ボクね。ずーっと前から先生の事が大好きだったの。どうして好きになったのか、最近までよく分からなかったんだ。けど、先生はいつもボクを優しく見守ってくれていたんだ。今日だってずっと気にかけてくれて。そんな優しい先生が大好き。ずっと先生と一緒に居たい。ボク、先生のお嫁さんにしてください」


「なら、少しは所作も勉強して大人になりなさい。そうしたら、考えないでも無いです。私もミアくんの事は好きです。男女の愛というよりは教え子、妹や家族に対する愛に近いのですがね。ですが、この先キミがもっと大人になれば、私も大人相手、男女として意識する対応にせざるを得ません。そうなれば距離を今以上に取らなければならなくなります。そこは理解してください」


 ……先生、それってボクから逃げていない? あれ、先生の息は荒くなるし、心臓の鼓動も激しいぞ? あ、そうか。先生、ボクを『女』として意識してくれたんだ。


 ミアのプロポーズを受けるも、一時保留するというフィン。

 彼にとってもミアは意識する存在ではあるが、まだまだ子供として見ていた相手。

 ただ、今抱きしめ合う肉体は、幼い少女から結婚適齢期な乙女へと変化しつつある。

 だからこそ辛抱をして一線を今は引き、ミアがフィンの結婚相手としてふさわしい姿に成長するのを待つ、もしくは自分よりミアに見合った相手に譲る事にした。


「先生、お話が難しいよぉ。簡単に言ってぇ」


「はぁ。まったくミアくんには困るな。じゃあ、はっきり言います。あと数年、ミアくんは頑張って大人の女性になりなさい。そして私にもう少し踏ん切り、キミと結婚する気持ちが固まり、その時に君の気持が変わっていなければプロポーズをお受けしましょう」

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