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私、時永めぐる(14)は10度目の人生を歩んでいる_2


 ハイジャックを鎮圧後、飛行機は直近の空港へと着陸はせず、予定通りに香港へと到着した。


 前回のごった返した状況をどうにかするために現実改変をしたところ、予定通りに進むことになってしまった。多分、前回着陸した空港が受け入れできない状況となったのだろう。


 恐らくは天候の状態が悪くなったんじゃないかな? というか現実改変さん、空港の混雑をどうにかするよりも、天候を悪くする方が楽と判断したのか。……ある意味、あの状況はそれだけ救いようがなかったということかな?


 そして予定通りに到着したわけだけれど、残念ながら修学旅行は中止でトンボ返りが確定した。


 こればっかりはね。生徒の保護者がこの状況に心配しまくっているし、なにより国として『修学旅行を楽しんでおいで』と云うわけにはいかないだろうしね。


 あ、そうだ。マスコミも来ているんだった。きっと日本の報道関係も来ている筈だ。こっちに支社とかありそうだし。


 うん。絡まれるのも面倒だから、私は無視される方向で改変しておこう。幸い、今回は私個人だけが被害者という立場ではないからね。


 私の身代わりは大崎さんだ! 大崎さん、可愛い系の美人だしね。もしかしたら芸能事務所からスカウトがくるかも知れないね。昔の飛行機事故で、奇跡的に生き残った女の子がスカウトされたって話も聞くし。


 ……考えるに、ロクでもないな、芸能系。家族を亡くして、自身も満身創痍だってのに、立ち直る時間を無視してスカウトなんてするなってものだよ。もちろん……なのかどうなのかは知らないけど、その女の子はそのスカウトを辞退したそうだけどね。


 ふん縛られたテロリストたちが連行されていった後に、私たちは飛行機から降りることができた。


 考えたら前回もそうすれば、あの混雑も少しは解消されてたんだよ。なんで一緒くたにしたのかな?


 前回とは違い、気持ち人が多いなと思える程度の空港内を、案内に従って進む。


 うむ。こっちに向かってくる人もないし、今回は刺されることも――


 銃声が響いた。


 そしてまたしても私の頭にこつんと当たる銃弾。


 周囲の人たちは、私たち――というか、日本人を除いてみんな伏せている。そういえば、海外だと銃声=伏せろ! って感じらしいけど、銃器に疎い日本ではそんな常識なんてない。そもそも銃撃なんて身近ではない。


「みんな伏せて!」


 私は怒鳴った! 突っ立っていたら流れ弾に当たりかねない。つか、完全に私を狙っているよね!? なんでだよ!!


 銃撃と同時に空ちゃんが飛んだ。恐らくは飛んできた銃弾の入射角から、狙撃場所を大雑把に把握したみたいだ。そっちはまかせていいだろう。


 というか、想定外のお仕事が凄いな【エネルギー変換吸収】。これは嬉しい誤算だ。


 屈みはしたものの、伏せずに頭をあげている私は狙いやすいだろう。とりあえず、飛び道具は私に対しほぼ無力だ。


 周囲で突っ立っていた日本人……というか、私の同級生と先生方は、私の怒鳴り声に従って伏せている。


 パニックになっている時は、誰かに命令されるとその通りに動くというのは真実のようだ。


 でも前回は私、刺されたんだけどな。またしても銃撃とは。これは場所が変わったから――


 そんなことを思っていたら、またしても背中から刺された。


 丁度私が列の端っこにいたというのもあるだろうけど。っていうか、まるっきり私を刺した相手が見えないんだけど!?


 【生命探知】を発動する。するとその存在がはっきりする。


 え? 透明人間!? なんだそれ!? そんなのわかるかぁっ!!


 刃物が抜かれる。本来なら、そこでそれなりに出血するのかもしれないが、血が漏れることもない。


 実のところ、これの対策も最悪の方法と思われるが、しているのだ。


 とんでもなく痛いし苦しいことになるけれど。


 【風魔法】を使い、私と襲撃者意外には私の声が聞こえないようにする。


『残念。もうそれじゃ私は殺せないんだ』


 英語で囁いてやると、襲撃者は動揺した様だった。


 襲撃者の足元に【異空門】を開く。たちまち襲撃者は【異空門】の中にすとーんと落っこちていった。


 行先は橋姫様のダンジョン。私の血に塗れた刃物を持った輩がいきなり現れたなら、橋姫様のことだ、適切に対処してくれるだろう。


 刃物で貫かれた心臓はコアが修復してくれた。服に空いた穴も、ひとまず【幻術】でごまかしておく。


 これでよし。胸に違和感は残っているけれど、その内に消えるだろう。


 銃撃者も空ちゃんが捕まえて、こっちで活動している天狗さんたちに渡してくれるだろうし、さすがにこれでもう終わりだと思いたい。


 さて、私が今回心臓を一刺しされても生き残れた理由。それは、コアのある提案によるものだ。


 それは小学校卒業式の死亡イベントが終わった直後の頃。



《マスター。心臓を増やしましょう》



 ……は?


 なにを云いだすんだこいつは、などと思いながら私は目を瞬かせた。


 いや、心臓を増やすってなによ。


《記録によると、多指症のような奇形の一種ということになるのでしょうか。心臓をふたつもつ男性が実在したそうです》


 え、なにそれ。というか、心臓ふたつって、どう機能していたんだろ。ポンプがふたつってことだけど、それで血流とか安定できてたの? おかしなことになりそうなんだけど。不整脈的な。


《問題なかったようですね。とある外科医が、片方の心臓を摘出して、心臓移植に用いたそうですよ》


 酷くないかな? いや、さすがに同意を求めはして、了承されたんだろうけど。……もしくはお金で解決的な?


《そのあたりは不明ですが。後日談として。摘出された心臓は再生され、心臓ふたつの状態に戻ったそうですよ》


 なんか、すごい人だな。内蔵の位置が左右逆転している人がいるっていうのは、漫画でみたことがあるし、実際にいるらしいけれど、心臓ふたつは初めて聞いたぞ。


《おそらくは、シャムの双子的なものなのだと》


 えーと、二重胎児とかいわれるやつだっけ? 本来、双子として生まれる筈が、体の一部がくっついて生まれて来るってやつ。そういえば、双頭の女性についてはテレビで見た覚えがあるな。


《はい。それど同様かと。ただ、それが心臓だけというだけで》


 なるほど。で、私の心臓をふたつにしようと。


《デュアルシステムにすれば問題ないかと。現状、私はマスターの心臓を【理核】の物理的本体としている状態ですので、心臓を破壊されると機能が完全停止します。ですから、右側にも心臓を造り上げ、そこに私のバックアップを取っておけば、片方の心臓を破壊されても問題なくマスターの身体の保全をすることができます》


 ……つまり、今後の身体検査とかの結果を、すべて改竄しろと。


《なぜ真っ先にそれがでてくるのですか。まぁ、その通りですが。死ぬよりはマシでしょう》


 なんだか頭を抱えたくなった。


 えぇ……生き残るために身体を改造しろと?


 いや、まぁ、見た目的には変わらないけどさぁ。


 ということで、今に至る。故に私の心臓は現在ふたつだ。意外にも、ふたつになっても血流とかに問題は起きていない。一応、心配だから、心臓がふたつでも問題なく身体は機能すると、現実改変をしておいたからかもしれないけれど。


 というか、あの透明人間はなんだったんだ?


 アニメとかに登場した光学迷彩的なものは半ば実用化されているみたいだけど、あそこまで綺麗に透明に成れるものじゃないし。


 もしかしたら、そういった類の妖を使っていたのかなぁ。


 まぁ、帰ったら橋姫様に訊けばわかるだろう。






 ……うん。トンボ返りだし。すぐだ。



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― 新着の感想 ―
最後の一文が11度目のフラグに感じた。 こわいよお。無事に帰れますように(ー人ー)
わお、スゴい対策があったもんだ。
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