第六十三話 氷結海
―――両翼が攻撃され、翼がもげる旅客機。
映画のワンシーンでありそうな状況ではあるが、実際にそんな状況に巻き込まれたくはない。
ドゴォオオオンンッツ!!
「ぎょぇぇぇぇづ!!翼がもげたぁ!!墜落するーーー!!」
「南の島に向かう前に、天国へ向かう羽目に!?」
「助けてくれぇぇぇ!!」
窓からも見える、爆炎と共にぶっ飛んでいく翼に、一気に落下していく景色。
普通ならば確実に終わったと、絶望して良い光景。
しかしながら、ダンジョンが出ているこのご時世、このような非常事態もまた想定できるもの。
『乗客の皆様にお知らせいたします!!当機は現在、海上へ落下中!!緊急時に備え、両翼の残存個所をパージし、緊急用特殊海上漂流袋を出します!!海に浮かびますが、その前のショックに備えてください!!』
ただでは墜落しないように設計されており、もげた翼の根元から改めて切り離され、瞬時にエアバックのような袋が膨らんでいく。
ドッボォォォォォン!!
「「「わああああっ!!」」」
もちろん、落下の衝撃までは完全になくせないとはいえ…それでも、いきなり海の中にドボンとなって、全員が海のもくずになることは避けられたらしい。
でも、それで事態が好転するわけがない。
【【【ワギャァァァッヅ!!】】
ドォォンッツ!!ドォォンッツ!!
ワイバーンの群れが上空から降下してきて、獲物を最後まで狙うようだ。
どうにか海に着水できたとはいえ、羽根のもがれた鳥なんぞ、彼らにとっては都合の良い獲物にしか見えない。
このままではせっかく助かった命も、海上に儚く散る。
―――まぁ、それは何もしなければの話だが。
おとなしく、そのまま狩られるだけの弱い獲物だと思ったか?
否。空の上では自由に動けなかったが、地上にひとたび降りてしまえば、多少は足場がどうにかなればできるものであり…
【冷凍光線照射!!】
パキパキイイイッツ!!
「っつ!?なんだ!!海が凍ったぞ!!」
波を打ってた水しぶきが急激に凍り付き、瞬時に旅客機の周囲が氷結する。
海上に氷塊が生まれ、氷の足場が出来上がったかと思えば…
ザッバァァァンッツ!!
大きく水しぶきを上げ、機体の後部から飛び出し、氷の足場に着地する影。
更にそのまま、一度できた足場を利用して粉砕する勢いで一気に空に跳躍し、ワイバーンと同じ高度に達する。
【いっ!】
【セーーーの!!】
【デェ!!】
糸を絡め、体を伸ばし、振り回す。
単純な動作にも見えなくはないが、その規模が異なっている。
大きな蜘蛛の糸で絡みついて、体を伸ばす銀の刃を、華奢な腕がかるがると振り回し、ワイバーンたちに直撃する。
ズババババンッツ!!
【【【ギャゲエエエエエエーーーーーッヅ!?】】】
「あれは…そうか、その手があったか」
ワイバーンたちの断末魔が響き渡り、他の乗客たちがあっけにとられている中、異土はすぐに気が付いた。
そこにいたのは、貨物室のコンテナにいたはずの、三人の姿。
氷上へ降下している様子だが、エリーゼにサクラ、クロハ…どうやら、協力し合っての合体攻撃を行ったようだ。
クロハの糸でサクラの身体に結び付け、サクラが体をびぃんっと伸ばして攻撃範囲を広げ、後はそのまま勢いよくエリーゼが振り回すことで、あの刃の攻撃が出来たのだろう。
三人そろっての合体攻撃…とにもかくにも、おかげでいったんはこの窮地をしのげそうであった‥
ドッ、バギィッツ!!
【【【あ】】】
ドッボォォォォォォォォォォン!!
「って、うぉぉい!?氷が割れて、皆見事に海に落ちたぞ!!」
「耐えきれなかったその勢い…いや、体重がとかは…無いよな、多分?」
「いうな、その手の話題は半殺し…いや、ワイバーン殺しのようにされるぞ!!」
…着地に失敗したというか、急ごしらえの氷の足場は、着地に向かなかったらしい。




