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底辺採取家の異世界暮らし  作者: 旅籠文楽


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54/78

54. 徒歩1分

 


     [3]




+--------------------------------------------------------------------------------+

         ◆レベルが『14』にアップしました!◆

    ------------------------------------------------------------------

 ナギ/古代吸血種(アンシェ・カルミラ)


   〈採取家(ピッカー)〉- Lv.13 → 14 (EXP: 3 / 39200)


   生命力: 980→1036

    魔力: 2177→2303


   [筋力] 254→268  [強靱] 363→384  [敏捷] 326→345

   [知恵] 1161→1228  [魅力] 1016→1075  [加護] 71440


-

 新規修得スキル → 【掘削】Rank.1 - 採取家スキル


   〔魔法〕魔力消費:100

   直接触れている地点から任意の形に、最大1立方メートルまでの

   体積の大地を刳貫(くりぬ)き、土砂や鉱物などの素材を纏めて回収する。

   スキルランクが上がると一度に掘削できる最大体積が拡大する。


+--------------------------------------------------------------------------------+




 探知した『カママ』がある方向へ向かいながら、道中で『セイジダケ』を採取していると。不意にナギの全身が、眩い光を放つ。

 いつものレベルアップ演出であることは、すぐに判った。

 流石に13回目ともなると、もう驚くようなことさえ無くなりつつある。


「おめでとうございます、お姉さま!」

「おめでとう、ナギ」

「ありがとうございます」


 賞賛してくれた二人の言葉に、ナギは笑顔で感謝を伝える。

 なんだか最近は【伐採】の魔法でのレベルアップばかりだったので、普通に採取していてレベルが上がったのは、随分と久しぶりのような気がした。


「それで、今回修得なさったスキルは、何なのでしょう?」

「楽しみ」


 興味津々と言った様子で、前のめり気味に訊ねてくる二人。

 レベルが上がれば、新しいスキルを必ずひとつは修得することができる。そのことを正直ナギ自身よりも、二人の方が楽しみにしているようにも見えた。


「えっと、今回は【掘削】という魔法みたいです。効果は―――」


 視界に表示されているステータスウィンドウを眺めながら、ナギは二人にスキルの詳細情報を解説する。

 今回修得したのは『掘削』という名前の通り、地面を掘る魔法であるらしい。

 掘った場所にあった土砂や鉱石は回収出来るようなので、実質的に『採掘魔法』のようなものとも言えるだろうか。


「お姉さま、実際に見せて下さいまし」

「ん、見たい」


 二人にそう促されれば、もちろん吝かではない。

 地面に手をつけて、ナギは覚えたばかりの魔法を早速行使してみる。


「―――【掘削(ラグーン)】」


 すると、ナギが手を触れさせている位置を起点に、前方側の地面が綺麗な立方体の形状に()り抜かれた。

 一度に【掘削】できるのは1立方メートルまでとのことなので、おそらく一辺がちょうど1メートルの立方体なのだろう。どうやらサイズを意識せずに【掘削】を行うと、自動的にこの形状で地面が刳り抜かれるようだ。


「この魔法は、氷室を作る前に欲しかったかなあ……」

「ふふ、そうですね。これがあれば楽に地面を掘れたでしょうし」


 もし今後また新しく氷室を建てる必要が生じた時には、今度はレビンに竜の姿で地面を掘って貰うのではなく、ナギが魔法で【掘削】すれば済みそうだ。

 とはいえ、もう必要な場所には全て設置したと思うので。今後新しい氷室を建設する機会は無さそうな気もするが。




+--------------------------------------------------------------------------------+

 -> ナギは『土砂』を『1295個』採取。

 -> ナギは『腐葉土』を『301個』採取。

 -> ナギは『ダーチ』を『4個』採取。

 -> ナギの〈収納ボックス〉スキルが『Rank.7』にアップ!

 -> ナギは経験値『2135』を獲得。

+--------------------------------------------------------------------------------+




 視界の隅に投影されている行動記録(アクションログ)のウィンドウを確認してみた所、普通の『土砂』以外に『腐葉土』と『ダーチ』が手に入っていた。

 『ダーチ』というのは食材で、森林の地中から採れる根菜の名前だ。どうやら今ナギが【掘削】を行った地面の中に、4個のダーチが存在していたらしい。


 手に入った経験値は『2135』点。

 〈採取生活〉スキルが『7』のナギは、何かを1個採取をするたびに7点の経験値を得ることができるため、経験値が得られた素材は305個分という計算になる。

 つまり『腐葉土』は経験値が得られるが、『土砂』からは得られないようだ。

 以前、河川の水を〈収納ボックス〉に回収した時にも経験値は入らなかったし、容易に大量確保できる無価値な素材は、回収しても『採取』としてはカウントされないのかもしれない。


「その魔法は、制限があるのは『体積』だけ?」

「あ、はい。そうですね……説明にはそう書いてあるようですが」


 イヴに問われ、慌ててナギは魔法の説明文を確認する。

 【掘削】の魔法には、一度に掘れる量が『最大1立方メートル』と書かれているが、特に他の制限などは記載されていない。


「じゃあ、例えば『広く浅く』は掘れる?」

「できそうな気がしますね……。やってみましょう」


 試しにナギは、地面を『10cm』の深さで『可能な限り広く』掘ろうと意識しながら【掘削】の魔法を行使してみる。

 すると、さっきに較べて3倍ぐらいの幅と奥行きの広さで、地面を浅く掘ることができた。


《掘削範囲は幅・奥行きともに、約『3162mm』のようです》


 それを見ていたエコーが、正確な効果範囲を教えてくれた。

 『316.2cm』の自乗に『10cm』を掛けると、約『1,000,000cm3』になる。

 なので今回も、効果を及ぼした体積は『1立方メートル』のままだ。




+--------------------------------------------------------------------------------+

 -> ナギは『土砂』を『466個』採取。

 -> ナギは『腐葉土』を『1108個』採取。

 -> ナギは経験値『7756』を獲得。

+--------------------------------------------------------------------------------+




 地面の浅い部分は、その多くが『腐葉土』であるらしく、何気に経験値もかなりの量が手に入った。

 腐葉土は薪と一緒にエコーズへ寄付すれば、畑で有効活用して貰えるだろうか。


「その魔法があれば、根菜掘りが快適になりそうですわね」

「そうだね、楽はできるかも」


 レビンにそう答えながら。一方でナギは、使い所を見誤らないようにしなければならないなと、心の中で自戒してもいた。


 確かにレビンの言う通り【掘削】の魔法は根菜彫りにも便利に利用できる。地中に埋まっている根菜の位置も、〈素材感知/植物〉のスキルを持つナギには正確に把握することが可能だからだ。

 根菜が効果範囲に収まるように【掘削】を行い、〈収納ボックス〉の中に土砂と根菜を纏めて回収。そのあと不要な土砂をボックスから排出すれば、手間を掛けずに根菜だけを手に入れることができるだろう。


 とはいえ問題が無いわけではない。【掘削】の魔法だと、地中に張り巡らされた植物の根を、土砂と一緒に根こそぎ回収してしまうからだ。

 ナギは〈繁茂〉というスキルを持っているため、自身の魔力を微量消費する代わりに採取した植物に栄養と体力を与え、その植物の再成長を促すことができる。

 そのスキルを活用するためには、採取する部位を『植物の一部』に留めなければならない。必要な部分以外を残すからこそ、植物は『再成長』するのだから。

 【掘削】は便利だけれど、この魔法に頼ると植物全体を回収してしまうせいで、まず『再成長』は見込めなくなる。なるべく濫用は避けたいところだが。


 とはいえ、例えばイモのような根菜であれば可食部だけを採取して『再成長』を期待することも可能だろうけれど。ダイコンやカブのような根菜だと、結局は植物全体を引き抜く以外の採取方法が無いことも事実なわけで。

 どの道『再成長』が期待できない植物に対しては、遠慮無く活用していくほうが良いかもしれない。


「あっ、お姉さま! あれではありませんか!?」


 考え事に嵌っていたナギを、レビンの声が現実へ引き戻す。

 慌てて状況を見確かめて―――そして、ナギは随分と驚かされることになった。


 ナギ達が向かっている前方側。不意に樹木が途切れ、少しだけ開けた森の一区画に、大量の赤い花がみっしりと(ひし)めき咲いている『花畑』が現れたからだ。


《ここが目的地点のようです》


 するとこの赤い花が、探し求めていた『カママ』ということだろう。

 一口に赤い花とは言っても、その色合いは様々だ。真紅に近い色をしているものもあれば、薄桃や赤紫に近い色合いをしているものも多い。

 色取り取りの赤い花弁が、静かに揺れている花畑の景色は。緑ばかりだった筈の森の中に、どこか不思議な名勝を作り出していた。


「素材を集める用事が無くても、ピクニックに来たくなる光景ですわね」


 レビンがそう漏らした言葉に、心の中でナギも全力で同意する。

 日本に住んでいた頃に何度か訪れたことがある、近所の『コスモス園』の雰囲気が、ちょうどこんな感じだったように思う。

 もうあと2日で冬の気候になるという事情さえなければ、後日改めて弁当持参で遊びに来たくなるような、そんな場所だった。


 花の数は、見渡せるだけでも数千は―――。いや、軽く一万以上はありそうな気がする。

 適当に歩くだけでは全然見つからなかった『カママ』だけれど。この花畑に生えているものを一部回収するだけでも、容易に2000個を集められそうだ。


「ナギ、採るのは必要な分だけにすべき」

「そうですね」


 こんなに綺麗な光景を、安易に破壊しては勿体ない。

 単一の素材なら無制限に入れておける〈収納ボックスが〉あるとはいえ、必要数以上には採らないほうが良いだろう。

 また必要になったら、その時に採りに来れば良いのだから。


「この場所が、他の掃討者に見つからないことを願うばかりですね」


 カママを優しく摘み取りながら、ナギがそうつぶやくと。

 その言葉を聞いたレビンとイヴが、ほぼ同じタイミングで噴き出した。


「うふふ、お姉さま。この場所まで来れる掃討者なんて、そうは居ませんわ」

「ん、全く以てその通り。ここは防犯面では立地的に最強」

「―――ああ、言われてみれば」


 二人の言葉の意味が理解できたナギもまた、軽く吹き出してしまう。


 確かに二人の言う通り、この花畑は掃討者に対する防犯面では最強の場所だ。

 何しろ、Bランクの掃討者がパーティを組んでようやく勝てるレベルの魔物が、大量に棲息する集落から徒歩1分という、究極の『オーク近物件』なのだから。





 

-

お読み下さりありがとうございました。


[memo]------------------------------------------------------

 ナギ - Lv.13 /掃討者[F]

  〔アルティオの使徒〕〔オキアスの使徒〕〔調停者〕


  〈採取生活〉7、〈素材感知/植物〉4、〈繁茂〉3

  〈収納ボックス〉6、〈氷室ボックス〉4、〈保存ボックス〉1

  〈鑑定〉4、〈非戦〉5、〈生体採取〉1

  〈自採自消〉1、〈採取後援者〉1

  〈複製採取/植物〉2、〈複製採取/解体〉1

  【浄化】4、【伐採】6、【解体】1、【素材探知/植物】1


  〈植物採取〉8、〈健脚〉3→4、〈気配察知〉3、〈錬金術〉1

  〈調理〉2


  227,812 gita

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― 新着の感想 ―
[一言] 後書きの変化記載漏れです。 14レベルに上昇して、収納ボックス7に上昇。 そして【掘削】の記載忘れです。
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