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底辺採取家の異世界暮らし  作者: 旅籠文楽


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36/78

36. 調停者

 


     [2]




+--------------------------------------------------------------------------------+

         ◆レベルが『6』にアップしました!◆

    ------------------------------------------------------------------

 ナギ/古代吸血種(アンシェ・カルミラ)


   〈採取家(ピッカー)〉- Lv.5 → 6 (EXP: 34 / 7200)


   生命力: 567→615

    魔力: 1260→1367


   [筋力] 147→159  [強靱] 210→228  [敏捷] 189→205

   [知恵] 672→729  [魅力] 588→638  [加護] 35


-

 新規修得スキル → 【素材探知/植物】Rank.1 - 採取家スキル


   〔魔法〕魔力消費:40

   周囲1kmの範囲内で、術者から最も近い位置にある

   『指定した名前』の植物の位置を探知できる。

   スキルランクが上がると探知数と探知範囲が拡大される。


+--------------------------------------------------------------------------------+




 古代樹の周囲を包む結界の外に出た後、昨日に引き続きレビンと手を繋ぎながらポニカの木を【伐採】していると。やがて身体から光が放たれると同時に、いつも通りナギの視界にレベルアップのウィンドウが表示された。


(―――あれ?)


 ウィンドウに記された内容を見て、思わずナギは首を傾げてしまう。

 能力値の増え方が、いつもより少し多くなっているような気がしたからだ。

 今まではレベルが上がる度に[知恵]は『48点』ずつ、[強靱]は『15点』ずつ増加していたように思うのだけれど。今回は[知恵]が『57点』、[強靱]が『18点』増えている。


 つまり、いつもより成長量が2割ぐらい多い計算になるだろうか。

 余分に数点増えた程度なので、誤差の範疇と言えばそれまでだけれど。


《私も具体的に数値を把握しているわけではありませんが、高いレベルに達している者ほど、レベルアップ時の能力値増加量は向上すると言われています》


 エコーが念話でそう教えてくれた。

 何にしても、能力値が多めに増えてくれる分には有難いことだ。


 今回のレベルアップで新たに修得したのは【素材探知/植物】というスキル。

 〈素材感知/植物〉のスキルと名前がよく似ているけれど、あちらが常時発動(パッシブ)スキルであるのに対し、こちらは能動的に行使する『魔法』であるようだ。

 効果は『指定した名前の植物』を『周囲1kmから探し出す』というもの。

 〈素材感知/植物〉とは違い、かなり広い範囲から素材を探知することができるようなので、特定の植物だけを集めたい時には便利に使えそうだ。


《―――お姉さま。気配が致しますわ》


 新しく覚えたスキルについて色々と考えていると。不意にレビンの声で、ナギの頭の中に念話が届いた。

 他者の気配を察知することに関しては、〈気配察知〉のスキルを覚えて間もないナギよりも、掃討者としての経歴が長いレビンの方にずっと分がある。

 レビンが察知したのであれば、間違い無く彼ら(・・)が近くにいるのだろう。


 20秒ほどその場で待機していると、ナギの〈気配察知〉もまた、その気配の位置を捉えた。

 なので、こちらから接近してみると。ナギの存在に気付いたその魔物は、他者を畏怖させる厳めしい容貌とは裏腹に、陽気な声でナギに声を掛けてきた。


「ヨウ、ナギ。酒ハイツ持ッテ来テクレルンダ?」

「いま持ってきてますよ。お渡ししますね」


 森の中を闊歩する4体のオーク達。

 その小集団の先頭に立つ、ナギの名前を呼んだ大型の両手剣を携えたオークに。ナギからもまた、明るい声でそう応えた。


 彼らはナギの隣に立つレビンの存在にも気付いている筈だけれど、彼女に攻撃を加えようとする様子は見られない。

 〈非戦〉スキルの効果が正しく適用されている証左だろう。やはり手を繋いでさえいれば、レビンもまた襲われることは無いようだ。


 〈収納ボックス〉の中から、ロズティアの都市で最初に購入した6樽の酒を取り出して、オーク達の目の前に並べる。

 当たり前だけれど、6樽分ともなれば結構な量だ。予想以上に沢山の酒が得られることが嬉しいのか、後ろに率いられている3体のオーク達が、それぞれに小さく歓声を上げた。


「有難イ。集落ノ奴ラニ、良イ土産ガデキタ」

「事前に『ガウム』さんにお伝えしていた通り、前払いで頂いていた金額よりも、少しだけ多めに買ってきました。無理にとは言いませんが、できれば足が出た分を追加で頂けると有難いです」


 そのナギの言葉に、オークは頷いて応える。


「アア、話ハ聞イテイル。我々ハチャント約束ヲ守ル。俺ハ金ヲ持ッテナイカラ、イマ別ノ奴ニ持ッテ来サセテイル。スマナイガ、チョット待テ」

「判りました」


 ドシンと、四体のオークはその場で思い思いに座り込む。

 流石に地面に直で腰を下ろすと、服が汚れそうなので。ナギは手近に生えていたポニカの木を【伐採】し、残された切り株の上にレビンと一緒に腰を下ろした。

 別に服が汚れても【浄化】の魔法を掛ければ綺麗にはなるのだけれど。なるべく無駄に汚したくないと考えてしまうのは、日本人的な(さが)だろうか。


「よろしければ、食べませんか」


 そう告げて、ナギが〈氷室ボックス〉から両手に一杯のポニカの実を取り出して差し出すと。両手剣のオークは「貰おう」と言って、片手で全てを受け取った。

 オークの体躯は人間の大人と較べても、一回りも二回りも大きい。少女も同然の矮躯になってしまっているナギとは、手のひらのサイズひとつとっても、倍以上の差があるようだ。


 ナギから受け取ったポニカの実を、四体のオーク達は分け合って口にする。

 つめたく冷えた分だけ甘さを増しているポニカの実は、やはりオークの好みにも合うらしく。彼らは口々に「旨い」と好感触の言葉を漏らした。


「デキレバ次回ハ、武器モ買ッテキテ貰エルト有難イガ……」


 先程まで両手剣を携えていたオークが、ポニカの実を摘みながらそう口にする。

 彼らが酒と共に武器も望んでいることは知っていただけに、そう言われることは判っていたけれど。その言葉にはナギも眉を曇らせるしかない。


「すみません。流石にオークの皆さんに武器をお渡しすると、他の人から恨まれたりするかもしれませんので……」

「……マア、ソウダロウナ。俺達ト人族(アースリング)ハ、殺シ合ウ敵同士ダ。敵ニ武器ヲ渡スヨウナ奴ハ、同胞デモ敵トシテ判断サレル。社会トハソウイウモノダ」

「そ、そうですね……」


 まさかオークから『社会』について説かれるとは思わなかった。

 何と言うか……本当に。人族と遜色ない相手なのだな、と今更ながらに思う。


「ダガ『人族(アースリング)』ハ敵デモ、『ナギ』ハ敵デハ無イ。俺達ノ『友』ダ」

「友―――ですか?」

「ソウダ。ナギハ俺達ガ必要トシテイル物資ヲ届ケテクレタ。俺達ハ受ケタ恩ニハ正シク報イル。ナギハ何カ―――不思議ナチカラニ護ラレテイテ、攻撃シタイトハ思エナイガ。今後ハソノチカラガ無クトモ、俺達ガ友ヲ襲ウコトハナイ」


 真っ直ぐにナギの目を見ながら、そう告げてくれたオークの言葉が。じんと染み入るかのように、ナギの心の裡に溶けた気がした。

 日本に住んでいた頃には、友達もそれなりに多かったけれど。とはいえ、これほど真っ直ぐにナギを『友』と呼んでくれる相手は、いなかったように思う。


「ありがとうございます」

「……変ナ奴ダ。礼ヲ言イウノハ、コチラダロウ」


 殆ど無意識に礼の言葉を口にしていたナギに対して、オークは小さく笑いながらそう言ってみせる。

 いつしかナギには―――オークの人達の事が、自分にとっても違いなく『友』であるように思えていた。


「モチロン、ナギノ隣ニイル、竜ノ娘モダ。ソノ竜ノ娘ハ、同ジ森ニ棲ム俺達ヲ、今マデニ散々殺シ回ッテクレタ。多少ノ恨ミモ無イデハナイガ―――ナギノ友ダトイウノナラ、ソノ竜ノ娘ニモ、モウ俺達ガ武器ヲ向ケルコトハ無イダロウ」


 そう告げた後に、オークは「竜ノ娘ガ先ニ攻撃シテキタ場合ハ別ダゾ?」と言葉を付け加えた。

 自衛は当然のことだと思うので、ナギはただ「ありがとう」と感謝を伝える。


「……お姉さま? いま、このオークは何と言ったのでしょう? 私の方を見ながら、何かを言っていたようですが……」


 ナギと手を繋ぎながら同じ切り株の上に腰掛けているレビンが、少し不思議そうな表情をしながら、ナギにそう訊ねる。

 エコーによる言語の翻訳は、あくまでもナギ自身にしか効果が無い。レビンにはオークが話している内容が判らないし、オークに対して何か言葉を告げたとしても伝わらないのだ。


 オークと交わした会話の内容を、レビンに掻い摘んで説明すると。

 レビンは得心したように頷いたあとに、ひとつの言葉を継げた。


「お姉さま、このオーク達に翻訳して言葉を伝えて下さいませ。

 わたくしもまた、お姉さまの『友』です。間違っても、お姉さまの『友』であるオーク(あなた)達に向けて、今後武器を向けるようなことは致しません―――と」


 言われた通り、ナギがオークに言葉を翻訳して伝えると。

 オークはにんまりと嬉しそうに笑みながら、レビンに片手を差し出した。


「『友』ノ『友』トハ、良イ『友』ニナレル。ソウハ思ワナイカ?」

「あなたが今、わたくしにどんな言葉を口にしたのかは、何となく判りますわ」


 ナギが言葉を翻訳するのを待つまでもなく、レビンはすぐにオークの手を取り、その手のひらを握り締める。

 木洩れ日の下で、少女とオークが笑顔で握手しているその光景は。すぐ隣で見ているナギの目にさえ、どことなく不思議な光景であるように思えた。




+--------------------------------------------------------------------------------+

 -> ナギは『調停者』の神席を獲得。

+--------------------------------------------------------------------------------+




 ナギの視界に表示されている行動記録(アクションログ)のウィンドウに、そんな文章が表示されるが。生憎と、よく意味が判らない。

 いや『調停者』という言葉の意味自体は、もちろん判るのだけれど。


「ナギ。今後、俺達ノチカラガ必要ニナッタ時ニハ、ソウ言エ。チカラヲ貸ソウ」


 10秒ほど交わされたレビンとの握手が終わった後に、続けてオークはナギの方にも片手を差し出してくる。

 いつまでもウィンドウの方を眺めているわけにもいかないので。ナギはちゃんとオークの視線と向き合いながら、その手を取って、握手を交わした。


「こちらこそ。僕にできることがあれば、何でも言って下さい」

「助カル。デキレバマタ、酒ナドヲ頼メルト有難イ」

「判りました。定期的に買ってきますね」


 オークが握り締めてくる手は力強くて。ナギは少しだけ手が痛かったけれど。

 それでも―――多少の痛みがあっても、この握手は『攻撃』などではない。

 〈非戦〉スキルが発動しないのは、当たり前のことなのだ。





 

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お読み下さりありがとうございました。


[memo]------------------------------------------------------

 ナギ - Lv.5→6 /掃討者[F]

  〔調停者〕


  〈採取生活〉3、〈素材感知/植物〉2、〈繁茂〉1

  〈収納ボックス〉4、〈氷室ボックス〉1

  〈鑑定〉1、〈非戦〉2→3

  【浄化】1、【伐採】2


  〈植物採取〉4、〈健脚〉1、〈気配察知〉2、〈錬金術〉1


  5,113,312 → 5,227,812 gita

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[一言] 後書きのレベル表記! 4のまま上げ忘れてますよー!
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