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底辺採取家の異世界暮らし  作者: 旅籠文楽


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31/78

31. 露店市の賑わい

 


     [3]



 錬金術師ギルドの建物を出た後は、エコーに念話を飛ばして貰い、レビンに商談が終わった旨のメッセージを届けて貰う。


《お姉さま、いま広場におりますので、すぐに合流致しますわ》


 すぐにレビンから、折り返しの念話がナギの頭に届いた。

 どうやら今日開催されている広場の露店市を、一足先に見て回っていたようだ。


 錬金術師ギルドの建物は広場から然程離れてもいない。

 下手にこちらが広場に向かうと、露店市の混雑に混じってお互いを見つけにくくなりそうなので、錬金術師ギルドの前までレビンに来て貰うことにした。


「お姉さまに良さそうな靴を売っている露店を、幾つか調べておきました」


 合流するなり、はにかみながらレビンはそう口にしてみせる。

 森歩きに適する、新しい靴をナギが欲しがっていたことを、レビンは覚えてくれていたらしい。

 ナギは「ありがとうございます」と、率直な感謝をレビンに伝えた。


「今お姉さまが履いている靴に、近い形状のものを探して回りましたが。その形の靴はサイズが固定されますから、実際に履かせて貰って合うかどうかを確かめてみるほうが良いでしょう」

「ん、それはそうだね」


 レビンに案内されながら、無数の露店が立ち並ぶ賑やかな露店市の中を歩く。

 普段は噴水と流水階段(カスケード)が奏でる、せせらぎの音が響く穏やかな広場が。四日に一度開催される露店市の今日は、無数の露店と利用客で溢れかえった別の姿を見せるのだから。何だかナギには、少し不思議な光景にも思えた。

 とはいえ普段の心落ち着く広場も、今日のような活気ある広場も。どちらの姿もまた、人の生活に寄り添う光景であることは間違い無い。


「あ、ごめん。レビン、このお店を見てもいい?」

「はい。お姉さまが見たいのでしたら、もちろんです」


 途中で調理器具を扱っている露店があったので、商品を物色する。

 調理器具なら武具や採取道具とは違い、専門家での整備補修(メンテナンス)をあまり必要とはしないだろうから。鍛冶屋ではなく、露店市で購入しても問題無いだろう。


 祖父の家で何度か使ったことがある、いわゆる『文化鍋』に似た形状の金属製の鍋があったので、それを購入した。

 お米を炊くのに便利そうだし、普通の鍋として使うこともできるだろう。

 他にも、焼き物料理に使えそうな鉄板もひとつ購入する。

 結構大きいサイズの鉄板を購入したので、露店の店主から「持てるかい?」と心配されてしまったけれど。もちろん〈収納ボックス〉に入れることができるので、持ち運ぶ上での支障はない。




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 -> ナギの〈収納ボックス〉スキルが『Rank.3』にアップ!

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 他にも、食器類を商う露店の片隅に『箸』が売られているのを見かけたので。立ち寄って購入して〈収納ボックス〉に仕舞いこむと。

 その瞬間に〈収納ボックス〉のスキルランクが『3』に上がったりした。




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 〈収納ボックス〉Rank.3 - 採取家スキル


   異空間にアイテムを30種類まで収納することができる。

   スキルランクが上がると収納枠が拡大される。


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 やはりと言うべきか、収納枠が『20』から『30』に増えている。

 これで収納枠が一杯になる心配は、当面抱かずに済みそうだ。


 ちなみに箸は、ナギだけでなくレビンも購入していた。

 ナギが使うのであれば、レビンも使い方を覚えたいらしい。


(昔この世界に招かれて来た、稀人(ミレジア)が広めたんだろうか)


 箸を見て、ナギは静かにそんなことを思う。

 もしかしたら箸だけでなく、つい先程購入した『文化鍋』もまた、昔この世界に招かれた稀人(ミレジア)が広めた物だったりするのかもしれない。


 靴のほうは、最初にレビンが案内してくれた露店では、残念ながら購入したいと思えるものが見つからなかった。

 いや、正確に言えばナギが欲しいと思うような、頑丈な靴も幾つかあったのだけれど。そういうものは基本的に大人向けのサイズで作られていたので、ナギには到底履けそうになかったのだ。


 以前の『凪』だった頃の身体ならばともかく、今の『ナギ』の身体はかなり体躯が小さい、少女のものになってしまっている。矮躯になれば当然、それだけ足のサイズも小さくなる。

 そして、いまレビンが履いているものもそうだけれど―――子供向けに売られている小さめサイズの靴は、その殆どが厚手のサンダルを紐で足に括り付けるようなタイプのものだった。

 子供は成長が早いので、足のサイズが大きくなるのも早い。足全体を包む構造の靴を買ってもあまり長くは使えないので、サンダルをベースとした安価な靴を買い与えて長く使わせるほうが、親としては好ましいのだろう。

 とはいえナギの場合は、体躯こそ完全に子供同然とはいえ既に『1662歳』の身体であり、これ以上の成長など期待できないし。採取で森を歩く機会が多いことも考えると、やはり足全体を保護してくれる靴のほうが望ましい。


 幸い三つ目に覗いた靴専門の露店が、布帛や皮革を多用した商品を幾つも取揃えていたので、そこでナギは自分に合う靴を二足購入した。

 片方は細めの縄を編み込んで作成した靴底を、厚い帆布で覆った短靴、いわゆるエスパドリーユのような靴だ。もう片方は荒天時の悪路移動にも耐えられそうな、皮革製のショートブーツを選択した。

 今後は状況に応じて、二つを履き分けて利用しようと思う。


 靴を購入した後は、露店市内で幾つかの食材を購入する。

 露店市に店を出す人には農夫の人が多いため、露店では農作物も多く販売されている。とりあえずお米は最初に見かけた瞬間に、一切迷うことなく大量購入した。

 また、流石に牛乳は無かったけれど、畜産関連の産物を売っている露店もそれなりに多かったので、途中で厚手の牛肉を二人分購入した。

 この世界の食材は〈鑑定〉で見える『品質』の値が『0』以下にならない限り、安全に食べることができる。だから〈鑑定〉持ちのナギには判るのだが、どうやらこの世界の生肉は、常温環境でも三日ぐらいなら日持ちするようなのだ。

 牛肉は先程購入した鉄板で調理して、夜にレビンと食べようと思う。


「そういえばお姉さま、商談の結果はいかがでしたか?」


 一通りの買い物を済ませた後。露店市を出て、西門へ向かって歩く道すがらに、レビンがそう問いかけた。


「それが、自分でもびっくりするぐらい上手く行ったかな。最終的には、薬草1つあたり『60,000gita』ぐらいの値段で買い取って貰えたし」

「まあ! 100個以上あるのですから、かなりの大金になりますね!」


 ナギの言葉を受けて、レビンがまるで自分のことのように喜んでくれた。

 錬金術師ギルドに持ち込んだ『コジシキョウ』と『ミズネンタケ』は、どちらも〈鑑定〉で見える流通相場額が『15,000gita』程度。だからナギとしては、それぐらいの額で買い取って貰えるだけでも充分だったのだけれど。

 最終的には品質の良さが決め手となり、全部で118個の薬草に対してジゼルが提示した額は『700万gita』という破格だった。


「これほど品質に優れたものを目にするのは、私も初めてです。『コジシキョウ』と『ミズネンタケ』はどちらも中級霊薬の材料となる薬草ですが、ナギさんが持ち込んで下さったこちらの素材を用いるなら、上級に迫る効能を持つ霊薬さえ作れる可能性がありますので」


 高額を付けた理由を、ジゼルはそのように語っていた。

 ちなみに、実際には『500万gita』分だけを現金で受け取り、残りの額はギルド一階の販売店で売られている『酒』で払って貰った。

 これからオークと交渉することを思えば、酒は幾らあってもいい筈だ。


 ギルドカードを提示して西門を通過し、都市の外に出る。

 この時間に都市から出ようとする人は珍しいのだろう。通行する際に、衛士の人が「間もなく陽が落ちるから気をつけなよ」と心配して声を掛けてくれた。


「いちいち言われなくても判ってますわ」


 レビンは衛士に冷たい声でそう応えていたけれど。声色とは裏腹に、表情はそれほど嫌そうでもないようにナギには見えた。

 案外レビンは、それほど『人間嫌い』でも無いのかもしれない。


 そういえば―――以前、レビンの家に泊めて貰った時。

 小さな家でも造るのが難しいという話をしてくれた際に、レビンがこう言っていたのをナギは覚えている。


「―――体験してみるとよく判りますが、建築というのは本当に難しいものですわね。巨大な建造物を平気で建ててしまう人間の技術力には驚かされるばかりです」


 ディノークが言っていたように、レビンが本当に『人間嫌い』であるなら。

 人間という種族に対する『敬意』を率直に顕したような。こんな台詞がレビンの口から出てくることは、無いように思うのだけれど。





 

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お読み下さりありがとうございました。


[memo]------------------------------------------------------

 ナギ - Lv.4 /掃討者[F]


  〈採取生活〉2、〈素材感知/植物〉2、〈収納ボックス〉2→3

  〈鑑定〉1、〈非戦〉2、〈繁茂〉1

  【浄化】1、【伐採】1


  〈植物採取〉3、〈健脚〉1、〈気配察知〉2、〈錬金術〉1


  169,912 → 5,113,312 gita

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