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底辺採取家の異世界暮らし  作者: 旅籠文楽


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10/78

10. 対話と取引 - 4

 


     [3]



 『竜の揺籃地』での採取は順調に進む。

 より森の深部へ踏み入っているからなのか、いつしか〈素材感知/植物〉のスキルに反応する対象を『300gita』以上に絞ったままでも、かなりのペースで様々な素材が感知対象として引っかかるようになってきた。


 大体1分間も歩いていれば、3~4個は素材が見つかるだろうか。

 余裕があれば残さず採取して行きたい所ではあるのだが。流石にそれらを全て拾っていては、ロズティアに着くのが随分と遅くなってしまいそうだ。

 それに採取する品目があまり偏り過ぎていると、売却する際に安く買い叩かれてしまう可能性もありそうに思える。

 なので、ここまでの道中で充分な量を確保したステギとツキヨゴケの採取は中断し、これ以降は他の素材だけを回収していく方針に切り替えることにした。




+--------------------------------------------------------------------------------+

 □マハウフ/品質[49]


   【カテゴリ】:薬草

   【流通相場】:310 gita

   【品質劣化】:なし


   火の精霊力が弱い場所で育つ薬草。特に寒い地域ではよく採れる。

   眼病を癒したり予防したりする点眼薬の材料となる他、

   飲むことで咳嗽(がいそう)を鎮める生薬としても用いられる。

-


 □ペルメット/品質[69]


   【カテゴリ】:薬草

   【流通相場】:950 gita

   【品質劣化】:-0.2/日


   近くで朽ち果てた魔物の死骸から養分と魔力を取り込んだことにより

   古木に生えていた枝葉(しよう)の一部が黒く変質し、悪しき魔力を纏ったもの。

   加工することで魔物が苦手とする煙を出す炭を作ることができる。


+--------------------------------------------------------------------------------+




 新たに感知対象に引っかかるようになった素材が2つ。

 ひとつはマハウフという薬草で、これは相場価格こそステギより安めであるものの、代わりに1株見つけると付近にもう6株から8株程度が間違いなく群生しているようで、簡単に採取で数を集められるのが嬉しい。

 〈鑑定〉の説明文にある『咳嗽(がいそう)』とは、いわゆる『(せき)』のことだ。

 つまりマハウフの生薬には『(せき)止め』の効能があるらしい。ありふれた症状であるだけに、それに効く生薬にも高い需要が見込めそうだ。

 もうひとつのペルメットの方は、老木の枝の一部が黒く変色した……というよりは、どこか黒っぽいオーラを纏ったものだ。

 こちらは単価がとても高い代わりにまばらにしか存在しておらず、必ず一本ずつしか手に入れることができない。数を揃えるのはなかなか難しそうだ。


 さすがに森の深い場所で採れる素材だけあり、どちらも金銭効率は素晴らしいの一言に尽きる。

 マハウフは地面から簡単に引き抜ける薬草だし、ペルメットは乾いて脆くなった古木の枝を手折るだけなので、採取作業がとても楽に済むのも有難い。

 〈繁茂〉のスキルもあることだし、道中で発見した分は遠慮なく一通り回収してしまおうと思う。




+--------------------------------------------------------------------------------+

 -> ナギは『ペルメット』を『1個』採取。

 -> ナギの〈採取生活〉スキルが『Rank.2』にアップ!

 -> ナギは経験値『2』を獲得。

+--------------------------------------------------------------------------------+




 森に入って2~3時間ほど経った頃には、採取を繰り返したことで〈採取生活〉のスキルランクが『2』へとアップした。

 これにより、採取する度に『1点』の経験値が得られていたのが『2点』ずつへと増加し、経験効率が一気に倍増する。


 ちなみに、いつの間にか〈非戦〉のスキルもランクが『2』へ成長していた。

 全く気付いていなかったが、一体いつ上がっていたのだろう。


行動記録(アクションログ)を確認してみました所、どうやらナギ様がオークと話している最中にスキルランクが上がっていたようですね》


(なるほど……)


 スキルは活用すればするほどランクが成長する。なので『魔物との戦闘を回避する』効果を持つ〈非戦〉スキルのランクが、本来は好戦的な筈のオークの近くにいる最中に上がるというのは、納得できる話だ。

 スキルはランクが上がれば、その効果が強化される。




+--------------------------------------------------------------------------------+

 〈非戦〉Rank.2 - 採取家スキル


   左右の手に武器を持っていない場合、絶対に攻撃されない。

   周囲1m以内にいる武器を持たない仲間にも効果が適用される。

   スキルランクが上がると仲間への効果範囲が拡大される。


+--------------------------------------------------------------------------------+




 〈非戦〉スキルの場合には、どうやらナギの近くにいる『武器を持たない仲間』にも『絶対に攻撃されない』効果が及ぶようになるらしい。

 流石に『周囲1m』では効果範囲が狭すぎるように思えるが。ランクがもっと成長して範囲が拡大されれば、更に便利なスキルとなりそうだ。


(とはいえ、今はひとりぼっちなんだけどね……)


 こちらの世界に友人や知人のひとりさえ居ない現状では、ランクを成長させる意味があまり無い気もする。

 エコーがいつも自分の内側に居てくれるとはいえ、異世界はひとりきりで生きるには淋しすぎると思うから。ロズティアの都市に着いて生活が安定したら、年齢が近そうな友達を作る努力もしてみたい所だ。


《殆どの人族(アースリング)の方は、現在のナギ様に近い年齢に達するよりも前に、寿命で死んでしまうと思われますが》


(いや、別に『この身体の年齢』に近い友達が欲しいわけじゃないから)


 もちろんナギが欲しているのは肉体年齢の『1662歳』に近い相手ではなく、あくまで日本で生きていた頃の()の年齢である『18歳』に見合う相手だ。

 自分自身だけでなく、友達のことも〈非戦〉のスキルで護れるというのは興味深い。もしロズティアで年齢が近い友達が得られたなら、一緒に都市の外に出て採取を楽しむというのも面白そうだ。

 もちろんその為には自分と同じように、友達にも武器を持たないでいて貰わなければならないことになるが―――。


(そういえば『武器』というのは、どこまで含まれるのでしょう?)


 ふと、ナギはそんなことを思い、思念でエコーに疑問を伝えてみる。


《………? お尋ねの意味が判りかねますが?》


(えっと……ロズティアに着いたら、ツキヨゴケの採取用にスコップかナイフでも購入しようかと思っているのですが。そういった道具を手に持っているだけでも、やはり〈非戦〉のスキルは発動しなくなってしまうのでしょうか?)


 〈非戦〉のスキルには『左右の手に武器を持っていない』時にだけ効果を発揮する、という前提条件がある。

 ツキヨゴケの採取道具として、街でスコップかナイフのようなものを購入した場合。よく考えてみれば……ナイフは明らかに武器そのものだし、スコップだって武器として使おうと思えばできなくは無いだろう。

 採取用途の道具を携行することで〈非戦〉のスキルが発動しなくなり、自分の安全が脅かされてしまっては。採取どころでは無くなって、却って本末転倒なことにもなりそうに思えるが。


《手に持っているものが『武器』であるかどうかは、その物品の種類によって決まるわけではありません。ナギ様が『他者を攻撃する』目的で持っていればそれは『武器』となりますし、そうで無ければ『武器』ではありません》


(えっと……つまり、どういうことですか?)


《苔を採るためにナイフを持っていても、樹木を伐採するために大きな斧を持っていても、それは別に攻撃を目的とする道具ではありませんから『武器』ではありません。

 逆に『戦闘に使うため』に手に持っているのであれば、それがナイフでも木の枝でも『武器』として認められ、結果として〈非戦〉のスキルは発動しなくなります》


(ふむふむ。つまり、僕自身の用途認識が重要となるわけですか)


《その通りです》


 昨日、この世界に来た直後の頃。ゴブリンの集団に対抗するために木の枝を拾おうとしたナギを、エコーが慌てて引き留めてくれたことが思い出される。

 あの時のナギはゴブリン達に少しでも抵抗できるように―――つまり『武器』として用いるために、木の枝を拾おうと考えていた。なので木の枝を拾った時点で〈非戦〉のスキルは発動しなくなり、ゴブリンはナギを攻撃可能になっていたわけだ。

 エコーが咄嗟(とっさ)に制止してくれなければ、非常に危なかったことは疑いようも無い。


 逆に考えると……武器として使う意志が無ければ、別に木の枝を手に持つこと自体は何ら〈非戦〉のスキルに支障は無いことになる。

 試しにナギは近くに落ちていた木の枝を拾い、手に持ってみる。

 ちょうど前方から、こちらに向かって歩いてきた四体のオーク達と遭遇したが。彼らはナギに軽く手を振ってみせると、やがてそのまま通り過ぎて行った。


(……ちなみに武器を持っていたせいで魔物から攻撃されている時に、あとから慌ててその武器を〈収納ボックス〉に入れた場合は、やっぱりもう〈非戦〉の効果は期待できませんよね?)


《いいえ? 素手になり、武器を持たなくなった瞬間に〈非戦〉の効果が適用されますので、相手はナギ様を攻撃することが不可能になります。既に相手が戦闘状態に入っているかどうかは、スキルの発動の是非に全く関係ありません》


(ず、ずるいなあ、それ……)


 今までナギは〈非戦〉を『戦いを回避するスキル』とばかり思っていたが。

 これはもしかして……掃討者として魔物と積極的に戦うような場合でも、かなり役に立つスキルなのでは無いだろうか。

 だってこのスキルがあれば、いつでも自分の意志で『戦闘を中断できる』のだ。

 勝てそうに無い相手だと判断したならいつでも武器を収納して安全に逃げられるし、戦闘中にちょっと疲れて休憩を取りたくなったら、それだって自由にできてしまう。


(とはいえ、魔物と戦う予定なんて全く無いのだけれど―――)


 採取をしているだけで充分な収入は得られそうだし、レベルも上げられる。

 怪我をするリスクを抱えてまで、ナギが武器を手に取る理由なんて無いのだ。




+--------------------------------------------------------------------------------+

         ◆レベルが『3』にアップしました!◆

    ------------------------------------------------------------------

 ナギ/古代吸血種(アンシェ・カルミラ)


   〈採取家(ピッカー)〉- Lv.2 → 3 (EXP: 0 / 1800)


   生命力: 445→486

    魔力: 990→1080


   [筋力] 115→126  [強靱] 165→180  [敏捷] 148→162

   [知恵] 528→576  [魅力] 462→504  [加護] 2


-

 新規修得スキル → 【浄化】Rank.1 - 採取家スキル


   〔魔法〕魔力消費:10

   任意サイズの空間から汚染を取り除く。

   または毒物の[毒性値]を減少させ、毒を弱体化させたり無毒化する。

   効果体積が大きい場合、サイズに応じて魔力消費量も大きくなる。

   スキルランクが上がると毒物から[毒性値]を減らす効果が向上する。


+--------------------------------------------------------------------------------+




 そんなことを考えながら採取に没頭していると。程なくナギの身体が一瞬だけ強く光り輝き、レベルが『3』へ成長したことを示すウィンドウが視界に表示された。

 〈採取生活〉のスキルランクが上がって経験値効率が倍になっていたので、そのうちレベルも上がるだろうと期待はしていたが。ナギが想像していた以上に早く、その瞬間は訪れたようだ。


 色々と能力値も成長しているようだが、そちらにはあまり興味が無い。

 おそらく[筋力]は攻撃力に、[強靱]は防御力に影響するのだろうけれど。どうせ魔物と戦うつもりは無いので、数値が高くても低くても意味なんて無いのだ。


《今回修得した【浄化】は魔法スキルです。魔法は行使する際に一定量の魔力を消費してしまいますが、射程距離や効果範囲に強みを持つものが多いです。

 【浄化】は文字通り、術者が望む空間範囲から汚染を取り除き、清潔な状態へと変化させる魔法です。厳密には術者が取り除きたいと認識する『余計な付着物』を、対象から取り除く効果の魔法となります。ですので例えば、採取した素材に付着している土や泥を落とす、といった用途などにも利用できます》


(なるほど。採取にも便利に使える魔法というのは良いですね)


《但し【浄化】は生物の体内へは全く効果を発揮しません。

 目の前にある毒薬に【浄化】を用いれば、その液体を無毒なものへ変えることは可能ですが、服毒して身体を冒されてしまった人を助けるために【浄化】を行使しても、それによって相手を解毒することは不可能ですのでご注意下さい》


(ふむふむ……。それは、生きていなければ効果を発揮するということでしょうか? 命を奪った毒蛇に【浄化】の魔法を掛ければ、安全な食材として扱えますか?)


《それは問題無く可能です。―――もちろん、美味しいかどうかは判りかねますが》


(あはっ。それはそうでしょうね)


 エコーの返答に、ナギは思わず表情を綻ばせる。

 余程食べる物に困っていない限り、他にもっと良い選択肢があるだろう。


《もちろん【浄化】の魔法は、ナギ様ご自身を綺麗にする用途でも積極的に活用されるほうが良いと思います》


(う……。僕、もしかして匂いますか?)


 昨晩は宿の部屋で、濡らした布で身体を拭う程度の身嗜みは行ったが。とはいえ、それで身体を清潔に保てているとは思えない。

 昨日から二日続けて、長時間に渡って歩行し続けているのだから、かなり汗もかいてしまっていることだろう。

 体臭は得てして当の本人には自覚しづらいものだ。話し方から察するにエコーは女性なのだろうし、実は今まで結構気になっていたのかもしれない。


《いえ、吸血種(カルミラ)系の種族は基本的に汗をかきませんし、身体から老廃物も出ませんので、体臭は気になさらずとも殆ど生じないと思われます。

 とはいえ、森の中を歩けば靴や服は自然と汚れてしまいます。身体がすっぽり収まる空間範囲に【浄化】を用いれば、ナギ様が現在着用している衣服や靴に付着した汚れを纏めて落とすことができますので、便利に活用されると良いと思います》


(ああ……。確かに靴とかは結構、酷いことになっていますね)


 林冠に覆われた森の中は湿度が一定に保たれるため、湿り気を帯びた林床の腐葉土は靴や服に張り付きやすい。

 何度か気になって細い木の枝でこそぎ落としては見たものの、ナギの履いている革靴は靴底(ソール)の目に土が詰まり、快適に歩けるものでは無くなっていた。


「―――【浄化(リューチシャ)】」


 エコーからやり方を教わり、ナギは覚えたばかりの魔法を早速行使してみる。

 すると、靴は目詰まりから解放されてすっきりと歩きやすくなり、ナギが穿いている丈の長いスカートの裾に付着していた土汚れも綺麗に取り払うことができた。


「こ、これは便利ですね……」


《はい。今後は積極的に活用されていくことをお勧めします。魔法も通常のスキルと同様に、使い込まなければランクが上がりませんので》


 魔力消費量は効果範囲の広さに応じて増えるらしいが、自分の身体と着用品を綺麗にする程度の範囲であれば、魔力は10ポイントしか消費しないで済むようだ。

 ナギは魔力の最大値が『1080』と非常に高いので、10ポイントの消費など痛くも痒くもない。効果の程を考えれば些細なコストだし、積極的に使っていくべきだろう。

 消費した魔力は時間経過で勝手に回復するらしく、採取しながら歩いているだけでも少しずつ回復していく。10ポイント程度の小さな魔力消費であれば、それこそ1~2分ぐらいで回復できてしまうのではないだろうか。


(この魔法があれば、服の替えが無くても何とかなるかもしれないな)


 【浄化】の便利さを確認したナギは、内心でそんなことを思う。

 ちょっと魔法を使うだけで着用している衣服全てを瞬く間に清潔にできるのだから。あらゆる技術が充分に発達した現代生活でも、全く太刀打ちできない便利さだ。


(ああ―――。でも、風呂にだけはちゃんと入りたいなあ……)


 一方、ナギは内心でそんなことも思う。

 魔法を使えば、衣服だけでなくナギ自身の身体も清潔になる。

 だから身体を洗浄する必要など無いのかも知れないが。それでも―――風呂に入りたいという衝動は、日本人にとってそう簡単に割り切れるほど単純な欲求ではないのだ。





 

-

お読み下さりありがとうございました。


[memo]------------------------------------------------------

 ナギ - Lv.2→3


  〈採取生活〉1→2、〈素材感知/植物〉1、〈収納ボックス〉1、

  〈鑑定〉1、〈非戦〉2、〈繁茂〉1

  【浄化】1


  〈植物採取〉1、〈健脚〉1


  91,990 gita

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