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492.属性が違う考え方





「へえ。『景色を記録する魔道具』か」


 ベイルは腕を組む。


 きっと、今。

 彼の頭には、たくさんの完成へ向かう道が浮かんでいるはず。


 もちろん、すべてが完成に繋がるわけではない。


 仮説を立てて。

 試行して。

 一つずつ確かめるのだ。


熱転写紙(アリモスし)の応用か?」


 さすがベイル。

 すぐに近いものを思いついたらしい。


 熱転写紙(アリモスし)


 紙媒体に描かれた絵や文字をそのまま写し取る、紙型魔道具だ。

 要は印刷である。


 ただし、恐ろしくコストが高い。

 高級な素材を使うので、非常に高価なのだ。


 それに。


 書いた方が覚える。

 それがクノンの持論である。


 だから、あまり興味はなかったのだが。


「その通りです。昨日見かけて、ああいうのはどうだろうって思って」


「ふうん。

 ……『景色を記録する』ってのは面白いな」


 ベイルがニヤニヤし出した。


「俺が今見ている景色を紙に写す、ってことだろ?


 はは、無茶なこと考えやがる」


 乗り気になってきたようだ。


「話を持ってきたってことは、おまえらもう構想はできてるんだろ?」


「ええ。聞きたいですか?」


「むしろ言うなよ。

 こういうのはある程度は自分で考えねぇと」


 同感である。


 クノンとジュネーブィズは、二人で一から話して詰めていった。

 それはそれで楽しいし、勉強になるが。


 でも。


 一人で考えたり。

 一人で実験したり、研究したり。


 そうやって地力を磨くことも大事である。


「実力の派閥」。

 ここの多くは、きっとそこを重視している。


 だから個が強く、横の繋がりが浅いのだ。


 一人では限界がある。

 だが、誰かに頼りっぱなしでは腕が鈍る。


 どんなスタンスでもいいが。

 最低限のことは一人でできるようになっておいた方がいいと、クノンは思う。


「少し考えてぇな。


 昼まで時間をくれ。

 できそうだと思えたら、エリアへのプレゼントはそれで決定だ」


 前向きに考えてくれそうだ。


 ベイルが却下したらどうしようかと思ったが。

 これは大丈夫そうだ。


「あはは。まあ代表がエリアちゃんに贈るプレゼントだからね。


 私たちも手伝うつもりだけど。ふふ。

 今回は代表がリーダーやって、私たちに指示してほしいな。はは。ははは。ウフ。


 彼女へのプレゼント……頑張ろうねハッハーッ!!」


「おう、絶好調だなおまえ」


 まあ、とにかくだ。


「では僕たちは一旦外しますね。

 ジュネーブ先輩、行きましょう」


 と、クノンは立ち上がる。


「そうだね。代表、昼頃また来るから」


「ああ。あ、ついでに俺の昼飯持ってきてくれ。一緒に飯食いながら話そうぜ」


「わかりました」


 後ほど会う約束をして、クノンらはベイルの実験室を出た。


 さて。


「先輩、どうします? 一緒に行きます?」


 どこへ。

 そんなの言わなくてもわかるだろう。


「ふふ。一緒に行こうかな。

 資料は、オフッ、多い方が、いいからね」


 決まりだ。

 二人は図書館へ向かうことにした。


 ――ベイルが、クノンたちと同じ方向で考えるかはわからないが。


 集めた資料が無駄になることはないだろう。


 一つとは限らないから。

 完成へ向かう道は。


 だから魔術は面白いのだ。





 そして昼頃。

 クノンとジュネーブィズは、再びベイルの研究室へやってきた。


 たくさんの資料と。

 昼食を持って。


 なお、ベイルの案内で隣の部屋に移動した。


 彼の部屋には、本や資料を置く場所がないから。

 もはや何も置けない状態だから。


 だから、隣に移った。

 こちらは空きの実験室だそうだ。


 実質ベイルの持ち部屋。

 それくらい頻繁に使ってはいるらしいが。 


 綺麗である。

 何せテーブルと椅子くらいしかないから。


「――やっぱり属性の違いって出ますね」


 で、だ。


 ベイルが書き殴ったメモを見れば。

 やはり土属性としての考え方が如実に出ている。


 クノンにない発想が多い。

 でも、これでもいけそうな感じはする。


 属性ごとの思考。

 これもまた、魔術の面白いところだ。


「ああ、マジかよ……そっか。そっちか」


 そしてベイルも、資料を見て思うことがある、と。


「水晶やガラスを使うって辺り、土属性って感じだねフフフフ」


 鉱石の加工。

 土属性の得意分野である。


 透明な水晶やガラス。

 それに景色を焼き付ける。


 ベイルはそんな方法を思いつき、突き詰めたようだ。


 だが、クノンとジュネーブィズは、鉱物を使う方向にはいかなかった。


「そうだな、コストを考えるとこっちか。


 ダイスカメレオンの(まぶた)な。

 あの半透明の柔らかい素材だよな。


 ……ああ、そうそう。

 なんか特殊な加工で透明度が増すって聞いたことあるな。あれ使うのかよ。すげぇ発想だな」


「水晶は僕らも考えましたけど、ガラスはいけます?」


「強度がねぇ。絶対持たないと思うけどねぇ」


「強化ガラスでなんとかなるだろ」


 三人はじっくりと話した。


 ある程度、完成図が見えてきた。

 この分なら、完成にはそんなに時間はかからないだろう。


 順調にいけば、だが。


 ――クノンらの裏の目標は、「景色を記録する魔道具」ができてからだ。


 エリアのためにも。

 なんとか完成させたいところだ。





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― 新着の感想 ―
・ベイルもエリアも国の所属は変えられない ・エリアは貴族だが、婚約破棄自体は可能。 ・ベイルは奨学金をもらっている庶民。返済できる実力はある。 ・ベイルに脈がない どこが一番終わってるって、脈ナシが…
世界観的にカメラ類の技術がないのは流石におかしいから国家機密等々で研究されてるのかな? クノンたちの成果物より高性能なものがすでに出回ってるなら大丈夫そうだけど、存在してない画期的な発明扱いなら、コレ…
貴族だと贈り物の種類によっては何らかの属性が込められてたりするからな 身に付ける物なら恋愛的な束縛とか、何色の花は特定の感情を表す等 新しい物なら後々その手の意味が付与されてもそんな意味がつく前に貰っ…
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