表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/518

183.ふと思いついた金策





「単位か」


 去年はクノンが実験を持ち掛けたが、今年は逆だ。


 去年は、「実力の派閥」代表ベイルを中心に、先輩方に協力をしてもらい。

「魔術を入れる箱」改め「魔帯箱」の開発を行ったのだ。


 そのため、一年の前半で単位を取り切る方針で動いていた。


 今年は逆に。

 クノンが誘われたので、それに参加する形となる。


 ――シロトと別れ「調和」の拠点を出た後、クノンは考えながら歩いていた。


 思ったより話し込んでいたようだ。

 もうじき陽が暮れるので、今日はもう帰るだけである。


 考えることは造魔学のこと……ではなく、単位についてだ。


 今年度はすでに一ヵ月が過ぎている。

 年度の始めだったせいもあり、色々と忙しく、主立った活動はできていない。


 一応、先日の神花捜索の件で貢献したことを認められ、一点貰えるという話にはなった。

 これは幸運だった。


 そして、単位は残り九点必要なわけだ。


 シロトは言っていた。


 ――「今度やる造魔の実験は、少し高度なものになる。細かい魔術の操作が得意なクノンがいたら大変助かると思う。しかし恐らく数ヵ月単位で時間も必要になると思う」と。


 短くても三ヵ月を見ている。

 長ければ、もっと掛かる。


 そう言われると、確かに危ない。

 先に単位を取って進級を決めてから挑んだ方が、精神的にも楽だろう。


「……まあ、その方が都合もいいか」


 色々考えた末、クノンは腹を決めた。


 まず単位を取る。

 これが最優先。

 

 次に、造魔学の勉強をする。

 これまでは調べもしていなかった禁忌の学問であり、基礎さえできていない状態だ。

 シロトの足を引っ張るわけにはいかないので、ある程度は学んでおきたい。


 この二つは、時間がないとできない。

 まあ、造魔学の勉強については、合間の時間を使うことになるだろうが。


 だから、すぐに着手しないというのは、クノン的にもありがたい。

 もちろん気持ちは今すぐ実験したいのだが。


 それと、セララフィラのことだ。


 今度は忘れない。

 少なくとも、彼女の生活が安定するまでは、気に掛けておこうと思う。


 今は金欠で仮住まいに移っているそうなので、マイナスと考える。

 これがプラスになって住居を検め、そして毎月ちゃんと定額を稼げるようになるまでは。


 できるだけ協力したい。

 狂炎王子とも約束をしているから。


「――こんな時に思いつくんだよなぁ」


 二人で散々話し合った時は、彼女の金策は思いつかなかったが。


 今考えてみたら、ふと、思い浮かんでしまった。


 セララフィラもできそうな金策の方法。

 魔術が盛んなディラシックでも、これまで聞いたことがないやり方なので、きっと新しい商売の形になる。


 これはお金になりそうだ。

 しかも、考えようによっては非常に面白そうな案だし、広く発展も望める。


 案外、とても大きな一大産業にまでなるんじゃなかろうか。

 それこそ世界に広まるような。


 興味を持つ土属性はきっと多いだろう。


「……これも単位になるかな?」


 しかし問題がある。

 どれくらい時間が掛かるか、見通しがつかないことだ。


 土属性がメインの仕事なので、属性違いのクノンには予想もつかない。 


 土属性ならわかるだろうか?

 ベイルに相談するか?


 彼ならきっと興味を抱くだろう。

 もちろん、ダメならダメと言ってくれるだろう。その方がありがたいし時間の無駄もない。


「――よし」


 クノンは早足に歩き出す。


 方向は定まった。

 しばらくは迷うことはない。





 次の日。

「実力の派閥」の拠点である古城を訪ねると、運よくベイルに会うことができた。


「――おまえよく思いついたな! めちゃくちゃ面白いじゃねえか!」


 まあ、彼は何日か徹夜した感じの疲れた顔色をしているが。

 きっと何かの実験中なのだろう。


 彼はちょうど休憩していたようで、食堂で寝ながら食事しているところを捕まえた。


 単刀直入に話すと、ベイルは疲れた顔で目を輝かせていた。

 そしてすぐに虚ろになった。


「でも今はちょっとなんか……都合が悪いんだ」


 だろうな、とクノンは思った。


「忙しそうですね」


 見るからに徹夜顔である。

 多くは聞かないが、明らかに疲れ切っている顔だ。


「そうなんだよ。ついでに言うと、次にやる実験も決まってる。今年はまとまった時間が作れるかどうかも怪しくなってきた。ほんと時間が足りねえ」


 忙しいのはいいことだ、とクノンは思った。


 やはり魔術師としては。

 単位のための実験より、自分がやりたい実験をやりたいものだ。


 やりたいことが詰まっているというなら、それはそれで幸せだろう。


「ちなみに、僕の話を聞いてみた感じ、どれくらいでできそうですか?」


「一週間あれば形にはなると思う」


「そんなに早く?」


「構造が単純だからな。それと、魔術師としてじゃなくて技術者としての技が必要だろ? あるいはセンスか?

 こういうのはラディオが強いぞ」


 ラディオと言えば、ベイルと同じく「魔帯箱」の開発に協力してくれた先輩だ。


「でもあの人も忙しいでしょう?」


 彼は貴族相手に商売ができるほど、細工物の腕がいい。


 それに加えて、あまり人と一緒に何かするというタイプでもない。

 一人で黙々と作業するのが好きなんだそうだ。


 まあ、必要とあれば普通に誘うが。

 どうしても嫌なら断るだろうし、誘うだけならタダだ。


「そうだなぁ。あいつはよっぽど興味を持たないと共同実験はやらないからな。

 エルヴァはどうだ?」


「それは真っ先に考えました。僕は紳士なので男性より先に女性を優先します」


「おう、そうか。おまえも変わりないようで何よりだ」


 だがしかし。

 今回はダメなのだ。


「ちょっと訳ありでして。『調和』とはまだ関われないんです」


 まあ、とりあえずだ。

 クノンが知りたかったのは、実験期間の目途だ。


 ベイルは一週間でできると言っていた。

 ならば、長くて一ヵ月と見なして。


 それくらいの期間なら、軽い気持ちで挑戦してみてもいいかもしれない。

 もちろん単位を狙う意味でも。


 単位が取れて。

 セララフィラの金策になって。

 おまけに、宙に浮いたままになっていた実験も、どうにかなる可能性がある。


 我ながら面白い思い付きだとクノンは思った。

 いろんな要素が絡み、そのアイデアを後押ししているように感じる。


 もちろん気のせいだとは思うが。


 ――あとはセララフィラ次第だろうか。


 いや。


「じゃあ僕はもう行きますね。先輩もがんばって!」


「あーはいはい。これ以上頑張ったら倒れそうだけど頑張るよ」


 へろへろと手を振るベイルと別れ。

 擦れ違ったエリアとジュネーブィズに挨拶しつつ、クノンは「実力」の拠点を後にした。


 恐らく現在。

 セララフィラは今頃、聖女の地下温室作りに挑戦しているだろう。


 クノンは彼女の様子を見に行くことにした。


 どうやら無関係ではなくなりそうだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版『魔術師クノンは見えている』好評発売中!
『魔術師クノンは見えている』1巻書影
詳しくは 【こちら!!】
― 新着の感想 ―
[一言] 何を思いついたのか、すごく気になります! しかも色々と繋がる?ようですし!!
[一言] シロトとの共同研究前にする事 1.単位の取得 2.造魔学の勉強 3.セララフィラの金策への助力 部屋を散らかさずに研究を進める訓練もしておいた方が…
[気になる点] クノンの頭の中では何がみえているんでしょうかね。 次から次へと湧き出るアイデア。 ひらめきの天才! [一言] 何だろう。 スポーツ系の漫画をみているような気分になります。 一見地味だけ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ