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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
漆 ―王国脱出―
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死神少女の帰還

【ベルセイン帝国 城塞都市ジェスト】

城壁の上から弩砲が魔物を仕留めた。

ハーピィも撃ち漏らしなく撃墜され、第四波は治まった。


「撃ち方やめ!今のうちに休息をとれ!」


つかの間の平穏が訪れ、その間に兵士達は水を飲み、補給を行う。


すると一人の兵士が何かを見つけた。


「隊長!森に人影が!!」


黒の森から人間サイズの影が出てきた。その数は二、何かをおぶっているようだ。


「あれは…………賢者様だ!賢者様がお戻りになられた!!」

「門を開けろ!急げ!!」




門が開かれると同時に二人の少女が青く光り、走る速度が上がる。

魔導人形が二人を見送る。




門に入ると兵士達が迎えに来た。

赤マントの兵士がナタリー達に話しかけてきた。


「城塞都市守備隊長のゴーグです。賢者様、お待ちしてました。」

「はぁっ………お迎え感謝いたしますわ…………。あ、この二人をベッドに。」


気絶したクリスティアナと具合の悪いレイラを兵士に預ける。


「賢者様とお連れの方、こちらでお休みに……。」

「いえ…………まだお姉様が森に………!!」








ちょうどその時黒の森で異変が起きた。


「おい!!なんだあれは?!」


城壁の兵士、冒険者は森が赤く光るのが見えた。

同時に森中のざわめきが激しくなっていく。


光は少し経つと治まった。



「戦闘体制!!」


魔物の大群が再び現れた。

ハーピィやクロウなどの飛べる魔物も含まれていた。


魔導人形が地上の魔物を駆逐し始め、随伴の重装兵はクロスボウで魔導人形に襲いかかるクロウを撃ち落としていく。


だが先程よりも明らかに数が多かった。


城門が開き兵士と冒険者が助けに向かう。魔導人形も一体追加だ。



「大砲の使用を許可する。味方を撃つなよ!」


城壁の上にいた司令塔のヴィクターが指示を出すと兵士達は備え付けられた大砲の発射準備にとりかかる。

大砲の砲撃は強力だが連射が効かず、砲弾は放物線を描くので当てにくい。

一番気を付けたいのは味方への誤射だ。重装備の兵士といえども直撃を受けてしまえば無事では済まない。


「撃ち方始めー!!」


大砲と弩砲が一斉に放たれる。

直撃を受けた魔物は一気に吹き飛び、数体を倒した。


前方で魔導人形三体が大物を次々と倒していき魔物の勢いが少しずつ衰えてきた。

小型の魔物は兵士や冒険者が相手をする。


「よし、このペースなら被害は抑えられそうだ。」


「っ?!将軍っ、あれを!!」


何かを見つけた兵士は明らかに動揺していた。



森の奥から木々を薙ぎ倒して何かが迫ってきているのが見える。

木を倒しながら移動しているということは相当な力を持っている、もしくは巨体を持っているのか。





多数の魔物が出てきた直後にそれは森から出てきた。


青みがかった黒い巨体を支える無数の細く小さな足、三つある赤い瞳のような部位は小さな目の集まり。


芋虫のような魔物を冒険者やハンターはキャタピラーと呼んでいた。



「全員下がれ!!俺たちじゃあ相手にならん!!」


城門の前にいた兵士と冒険者たちは魔物を倒しながら避難を始めた。

その時、森からもう一つ小さな影が出てきた。


「お姉様!!」


その言葉に守備隊長の一人が反応し森の方を見た。


「あれが将軍の言っていた保護対象殿か!」


遠目から見たエミリアは明らかに消耗した走り方をしていた。

キャタピラーは側を通ったエミリアに気づくことなく魔導人形に糸を吐いていた。


「早く!!奴が魔導人形に気をとられている間に!!」





エミリアが城門を見上げた時、城門上部の壁が開き始めた。

中から巨大な金色の大砲が顔を出し、今から撃ちそうな雰囲気を出していた。


エミリアは最後の力を振り絞って走る速度を上げた。

接近してくる魔物は城壁の兵士が大砲や弩砲で倒してくれている。時折爆風がエミリアの体勢を崩すが転ぶまではいかなかった。




エミリアが城門に飛び込むと同時に門は固く閉じられた。


「よく頑張った嬢ちゃん、もう安心だぞ。」


飛び込んだ彼女を受け止めた壮年の冒険者の言葉に安心したエミリアは疲れが一気に襲いかかり眠ってしまった。


「おいボガード、その子は賢者様の姉ちゃんらしいぜ。」

「そうか。なら早く会わせないとな。」








城壁ではナタリーがエミリア到着と同時に、兵士が止めるのも聞かず戦闘街へ飛び降りていた。

彼女のことだ、風の魔法でも使って勢いを和らげただろう。


「ヴィクター将軍、巨獣砲の発射体制が整いました!」

「よし。魔導人形が食い止めている今しかない、ぶっぱなせ!!」

「はっ!!」


ヴィクターの真下にある金色の巨獣砲の導火線に火がつけられた。


「巨獣砲、撃て!!」


ドゴンッと凄まじい音が響き巨大な砲弾が発射。

砲弾はゆっくりと重力に引かれていく。



着弾予測地点、キャタピラー頭部。

キャタピラーは魔導人形に気をとられ自身に迫る物体に気がつかない。









轟音が鳴り響く。



城壁からヴィクターが顔を出し状況の確認をする。



煙が晴れてきた。





着弾した場所には魔物と魔導人形の残骸。


勝利が確定した瞬間だ。

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