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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
伍―邂逅―
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死神少女は病を押して死を振り撒く

【ブランウェル王国 マルティアナ平原】

王都から北に向かった所に、木々に囲まれた丸太小屋がある。

シルフの森に近いこの小屋は昔、冒険者達の拠点として使われていた。


馬車から降りたクラークはクリスティアナの腕を引っ張り小屋に連れ込む。


「殿下、今夜までには戻らないとならないのです!!」


「なぜだ……………」




「なぜお前は名前で呼んでくれない!!」


乾いた音が鳴り響く。

クリスティアナの白い頬に赤い手形がついた。

ぶたれると思わなかったクリスティアナは尻餅をついてしまった。


「うぅっ………正気に戻ってください……今の殿下はおかしいです。」

「俺は正気だ。おい、こいつが逃げないように見張っておけ。城から持ってくるものがある。俺が戻るまで手を出すんじゃないぞ。」


クラークはついてきた騎士にそう言うと馬車に乗り王都へ向かった。


「…………聖女様、申し訳ありません。殿下の命令には逆らえないのです。」


騎士の一人はそう言うとクリスティアナを適当な部屋に入れた。




部屋で一人になったクリスティアナは途方に暮れた。

扉のそばには騎士が張り付いている。

窓を覗くと数人の見張りが辺りを見ていた。


「………うぅ、初めてぶたれました。」


暴力とは無縁の生活をしてきたクリスティアナには衝撃的だった。

しかも相手が相手なだけ恐怖心も追加される。

逃げたら自分は殺されるのではないか?

だが逃げなければ下手すれば世界が暗闇に閉ざされる。


どうにもならないとわかるとクリスティアナは泣き崩れた。



「………ぐすっ…………エミリア………ナタリー…………。」












丸太小屋から少し離れた所には小さな倉庫がある。

前の住人が使っていたであろう斧や木材、消耗品などが置いてある。


今では誰でも使えるよう、時折消耗品の補充がされる。




「殿下の女好きはしってるけどよ、聖女様への執着はすげーよな。」

「そうだな。あそこまで夢中になった女は今までいなかったな。」


倉庫の中で騎士が二人会話をしている。

ただのサボりである。

この二人は素行に問題があるとされ、騎士団に入れなかった所をクラークに拾われた。



「ところで聖女様の顔見たか?すっげーかわいかったぜ?」

「俺は見てないが、そんなにか?」

「あぁ。貴族の令嬢なんか目じゃないぜ、ありゃあ。平民なのが惜しいよ。」


話題はやはりクリスティアナのことになる。



「…………殿下が戻るまでには時間があるな?」

「…………あぁ。」

「…………手を出さなきゃいいんだな?」

「…………。」


邪な感情を行動に移すのに時間はかからなかった。


「大丈夫さ、味見くらい許されるはずだ。」


下衆な笑みを浮かべ倉庫の扉を開ける。




「死ね。」


扉から槍が飛んできた。

先頭の騎士は避ける間もなく頭を貫かれた。

もう一人は何が起きたのかわかってない。


黒い影が飛び出すと騎士に馬乗りになる。

そして流れるように首をナイフで掻き斬った。




「ごほっ…………クリスを変な目で見るな。」


黒い影………エミリアは冷めた声で毒を吐くが、それを聞く者はいない。



倉庫の扉に立っていた騎士はエミリアの接近に気づかず既に絶命していた。

エミリアは死体を倉庫の中にいれる。



と、エミリアは倉庫を見渡す。


「……………使えそう。」


何を思ったかエミリアは斧を持っていった。










木の影に隠れながらエミリアは丸太小屋に近づいた。

なんとなくクリスティアナがここにいる気がする。

丸太小屋の周りは騎士がいる。

病人であるエミリアでは全員は相手できないかもしれない。

だが全員を許すつもりもなかった。


クリスティアナに怖い思いをさせた。それだけで騎士達と第二王子は敵認定された。




丸太小屋には出入口が一つしかないが後ろにも騎士がうろついていた。

窓からの脱出を警戒しているのだろうか。


速度が大事だ。


エミリアは木陰からナイフを騎士に向け投げると同時に飛び出した。

騎士が叫ぶ前に喉にナイフが刺さり、膝をついた。

持ってきた斧で騎士の顔を砕いた。

膝をついたまま騎士は絶命していた。

斧を引き抜くとエミリアはすぐさま走りだし丸太小屋正面に向かう。




壁際から覗きこむと正面には騎士が二人見えた。周囲に身を隠せそうな場所は無い。

エミリアは小石を手前の騎士に向かって投げた。


騎士がこちらを向いた瞬間にナイフを投げ走り出す。

叫ぶまもなく喉に突き刺さる。


「なんだおま、ぐあぁぁ!!」


もう一人が叫んだところで斧を顔面に振り落とす。

エミリアの青い髪に血がかかる。



今の騒ぎで小屋の中の騎士には気づかれただろう。

エミリアは扉の前で気配を探る。



「2……4人。1人はクリス。」


扉の近くに2人待ち構えてるのも感じ取れた。


「よいっしょ……。」


エミリアは騎士の死体を担いで扉の前に立つ。

そして扉を蹴って開け死体を投げ入れた。


左右から剣が振り下ろされるのを見て、エミリアはまず右にいる騎士に近づき顔に膝蹴りする。


「ぎゃっ!?」


騎士が怯む、すぐ振り向きもう一人の騎士に斧を振り下ろす。


「ごあっ!!」


顔に直撃、即死だ。

殺気を感じて振り向くと、膝蹴りされた騎士が苦しい顔をしながら剣を向けていた。


「貴様、こんなことをしてただで済むと思うな!!」

「誘拐犯もただで済むと思わないで。」


坦々と告げるとナイフを投げた。

騎士はナイフを弾いたがエミリアに接近を許し、蹴り飛ばされる。

小柄な身体からは想像もつかない威力に思わず怯んだ。

隙を逃さず倒れた騎士に近づき………






股間に斧を振り下ろした。


「ぎゃあぉぉぉ!!!」


騎士が叫ぶがそんなの聞こえないという風にまた振り下ろす。

積年の恨みを晴らすかのように何度も振り下ろす。

そして止めに力強く振り下ろす。


騎士にはもはや叫ぶ気力もなかった。



上から誰かが降りてきた。


目が合った瞬間、エミリアは斧を投げた。

騎士に弾かれ今度はナイフを、しかしまた弾かれた。


「狼藉者め、お前を生かして帰さん。」

「最初からそのつもりだから……けほっ。」


今の会話の最中に周りを少し見渡し使えそうな物を確認する。


エミリアの少し後ろには燃えてる暖炉、そして飾りと思われる剣と魔物の剥製。


目の前の騎士は隊長格なのか立派な剣を持っている。


エミリアはまずナイフを投げた。

騎士は盾で防ぐ。その隙に近づき回り込む。

盾を持つ腕にナイフを投げた。


「くっ?!」


騎士はナイフを弾くが指に当たったようだ。

エミリアはプレートナイフを逆手に騎士へ仕掛ける。


騎士の剣を受け止め、鎧に覆われてない箇所を探す。

………顔しかない。


エミリアは外簑からナイフを取り出し、剣を持つ騎士の右手を切りつける。


手甲に阻まれナイフは弾かれるが気をとられた騎士をエミリアは突き飛ばす。

すぐさまナイフをもう一本、今度は顔に投げる。



「ぐぁ!!」


もう一本。

喉に深く刺さった。


接近しプレートナイフを喉に突き刺す。



「うっ!!」


騎士は死に際に剣を振り、エミリアの左腕を斬った。

報復と言わんばかりに騎士の顔を蹴る。



「はぁ………はぁ………うぅっ。」



感じ取れる気配は一つだけ。

風邪の症状が悪化したらしく息が荒くなっていた。


斬られた腕を抑えながら気配の元へ向かう。

二階だ。



部屋は一つしかなかった。

扉に耳を当て様子を伺う。

気配は感じるが物音がしない。


左手は今は使えない、右手で投げナイフを持ち扉を開けた。




「………エミリア?!」

「クリス……助けにきた………」




クリスティアナを見つけると同時にエミリアは倒れた。

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