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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
伍―邂逅―
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死神少女と勇者の話

伍章はちょくちょくエミリア以外の場面があります

【ブラウェイン王国 王都ミゼリオナ】

ブラウェイン王国の王城がある首都、ミゼリオナ。

王城を中心に大きな城壁で囲われており、貴族街や市民街、商業地区、工業地区、教会地区など区分けされている。

人間や一部友好的な亜人種、諸外国大使などが集まるこの場所はまさに世界の中心とまで言われている。



そんな場所に少女三人はいた。












王都に着いた一行は宿を確保するとエミリアに連れられ商業地区へ向かった。


「んー、久しぶりのクロワッサン。」


ここのところパンを食べてなかったエミリアはご満悦だった。

目を閉じてしっかりと味わっていた。

レイラはメロンパン、ハンナはジャムパンなど各々好物を食べていた。




「……広すぎる。」


王都はさすがに大きい。

一日二日では回りきれそうになかった。

ハンナは多すぎる人混みに何故か酔っていた。


「あっ……あの子。」


レイラが指差す方向には一人の少女。

ドラゴンの羽に尻尾、そして身体の一部が鱗で覆われていた。


「知り合い?」

「ううん、同族ってだけ。」

「………レイラはああいう姿になれるの?」

「やったことはないけど、多分できるかも。でも私はこっちか本来の姿が気に入ってるから。」

「そう。」

「それに……その………恥ずかしいもん。」


レイラによるとあの姿は『半竜化』というらしい。

人型の姿で竜の力を使うことができるようになる。

どうやらレイラの中では人型時に竜の一部は見せたくないらしい。

見てみたい気もするが無理強いは良くないだろう。


エミリアは側にあったベンチに座るとレイラを膝に乗せて頭を撫でた。

気持ち良さそうに目を細めている。


「まぁ、人には好き嫌いとかあるもんね。」

「んぅ~。」


妹と親友には嫌いな食べ物があった。

エミリアは食べ物に関しては好き嫌いなかったためよく押し付けられていた。

本当はよくないのだろうが、二人の頼みとなると断りきれないのがエミリアだ。


ベンチでダウンしていたハンナが立ち上がる。


「うー…やっと慣れてきた。」

「無理はダメ。」

「大丈夫、多分……おっと。」


ハンナが近くに来ていた馬車を避ける。

商業地区は人も多いが商人の馬車も結構通る。

速度が出ていないとはいえ気を付けないと轢かれてしまう。




市民街へ戻った一行は先程まで無かった人混みに気づく。子供がやけに多い。

中心には何やら額縁のような物をもった男性。

額縁の中には『勇者物語』と書かれた字と黒い物に立ち向かう少年の絵だ。



どうやら子供向けの紙芝居のようだ。

これを聞くような年ではないが何となく気になったので三人で聴いていくことにした。







それは突然だった。

雲ひとつない青空を突如黒い靄が覆った。

靄は王国だけでなく帝国、砂漠の国、東の島国、北の魔国にまで広がった。


靄の一部が王城に降り立ち、『邪神ズヴェン』を名乗った。

遠い過去から時を渡り、やってきたというのだ。

ズヴェンは挨拶代わりだと王都の城壁の一部を破壊し、去った。


数分後、世界各地で魔物が黒く変色、凶暴化し始めた。

緊急として王国に帝国皇帝、砂漠の族長、島国の将軍、北の魔王が集まり打倒邪神を掲げた。



その日から世界が団結してズヴェン討伐に乗り出した。

ズヴェンは様々な魔物を向かわせ討伐隊を苦しめた。

だが人々はうまくやった。

時間はかかったが襲いかかる魔物を倒すことができた。


一方ズヴェンは強力な結界を作り出し閉じ籠ってしまった。

そして新たな魔物を召還し始めた。

結界は非常に強固で魔王ですら破壊できなかった。




そんなとき、とある地に一人の少年が現れた。


『ユウキ』と名乗った少年は女神により異界からやってきたのだという。

ユウキは各地の魔物を駆逐し、強くなっていった。


国王と皇帝はユウキを助けるために二人の少女を向かわせた。


帝国からは大魔導師『アネット』、王国からは大神官『プルーム』だ。

二人はユウキのために力を貸した。

心強い仲間を得たユウキは更に強くなり、たいていの魔物を倒せるようになった。


そしていよいよズヴェン討伐の時が来た。

ユウキのために世界中から人が集まり、助けになった。



ユウキは不思議な呪文を唱えるとズヴェンの結界を破壊した。




ズヴェンとの決戦は熾烈なものとなり、ユウキも傷ついた。

ズヴェンは不利を悟り時空転移をしようとした。

その時プルームの封印魔法が発動した。


封印魔法は詠唱に時間がかかり、その間は一切の行動ができなくなる。

ユウキとアネットが時間を稼いだことで詠唱ができたのだ。


ズヴェンは身動きがとれなくなり、やがて黒い塊となった。



戦いには勝利した。

しかしこの時点でズヴェンを倒すだけの力はなく、強力な結界で封印を維持することになった。


凱旋したユウキは勇者の称号を与えられ世界の英雄となった。

異界の勇者は元の世界へ戻れたがそれをしなかった。

邪神により凶暴化した魔物はまだ残っている、それを討伐するというのだ。


アネットとプルームは引き続きユウキの力になり、魔物の数は減っていった。


森を荒らす変異態の魔獣、海から襲いかかる巨大な魔物、山を支配するドラゴンなどユウキの手で倒された。




ユウキは自分が老いて動けなくなるまで戦い続けた。

彼の最期は愛しい二人の妻と多くの子供たちによって看取られたそうだ。











なかなか興味深い内容だった。

ハンナと同じ髪色の少年が強大な敵を倒す話。


よくありそうだが全てがノンフィクションだという。


宿に戻ろうとするとレイラがエミリアの背中に抱きついてきた。

話の途中で俯いてたから気になっていたが、勇者と戦ったドラゴンを自分と重ねていたのだろうか。















「ん…………背中が濡れ…………レイラ………………泣いてるの?」

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