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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
参―見守る者―
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死神少女は港町を巡る

【ブラウェイン王国 港町スレイル】

世界一と言われるこの港町には多くの国の船が行き来する。

色々な国の人が来るものだからとにかく宿が多い。

この地域には昔から海賊が蔓延っており、町を巡って争いが多発していた。

王国は海賊討伐を長いこと続けたが状況はよくならず、争いは激しくなる一方であった。

そんな中、とある海賊団が周辺の海賊を一掃した。

戦いの長期化により疲弊していた王国はその海賊団を招き入れた。

そしてある条約を結んだ。町への滞在を認める代わりに町を守ってほしいと。

それ以来この町には警備を兼ねる海賊団が駐留していた。下手な軍隊よりも強い海賊がいることでそこらの町よりも治安は良くなっていた。


そんな場所に三人の少女はいた。












「取り敢えず病院行こうよ病院。」

「このくらい平気。」


先程腕に痣が出来たエミリアを気遣ってハンナが言う。


「だって放っておいたら腕がちぎれるよ!」

「えっ!?」

「それ多分違うやつ。」


レイラが真に受けている。


「えっと……あれが病院っぽい。じゃあ行くよ!」

「わっ、ちょっ……」


エミリアをハンナが横向きに抱き上げる。

所謂お姫様だっこの体勢だ。

ハンナが少しよろける。


(嘘っ、エミリアすっごい軽い!!)


ハンナは狩人だからか華奢な見た目の割に力が強い。

だがそれにしてもエミリアは軽かった。

後でお肉を無理矢理突っ込ませることにしたハンナは病院らしき建物に突撃した。
















診断結果はただの痣だった。

念のためにと寝る前に塗る薬をもらった。

何もなくてよかったが、二人は過剰に喜んでいた。


今回は海の見える宿にした。

安上がりながらいい場所があったものである。

実はエミリア達、三人揃って海を見るのは初めてだった。


若者の間では海に向かって「バカヤロー」と叫ぶのが流行りらしいが残念ながら彼女らに人前でそんなことをする勇気は無かった。


「ヤッホー!!」

「ここ山じゃない。」


一人は勘違いしていた。



町を歩くと青いバンダナの人がちらほら見られた。

彼らが海賊なのだろうか、これまで会った盗賊よりも人が良く、そして強そうだ。

戦闘になったら流石のエミリアも骨が折れそうだ。

町の人と海賊が仲良く力仕事をしている。

キクスより町の雰囲気が良い。





キクスの掲示板で見かけてからずっと気になっていたもの。

創作パンの『激甘ジャムクリームパン』を手に入れた。

かなり人が並んでいたが一時間で買うことが出来た。


「………おぉ。」

「「あま~い!!」」


名前の通りとてつもなく甘い。

ただここまで甘いのはちょっと……と思ったが二人が幸せそうなのでエミリアは黙っておくことにした。

少し胃に来そうだ。


行列を眺めてると色々な格好の人がいた。

冒険者や海賊、エルフや砂漠の民、東の島国アズマからわざわざ来ている人までいた。

ちなみに全員女性だった。



「………え゛っ!?」



変な声が出た。

エミリアの視線の先には一人の女性、問題なのは格好だった。

まるで下着のような見た目の極限まで肌を出したそれはビキニアーマーと呼ばれる代物である。

エミリアは名前だけは知っていたが実際見るのは初めてだった。

あの格好をしている女性はだいたい強いらしいが、目のやり場に困る。



あれは二人に見せるものじゃない。

エミリアは二人を連れて立ち去った。












この町でとれた宿は値段の割にいい感じの部屋だった。

ふかふかなベッドが丁度三つあり、寝場所には困らそうだ。







「…………何で私のベッドに来るの?」


レイラとハンナはエミリアのベッドに侵入して腕に抱きついていた。


「えと……人肌こいしいから?」

「エミリア分補給。」


レイラはともかく、ハンナは理由が謎だった。

まぁ二人がそれでいいなら構わないか。

寝づらいわけではないし……















数時間後、ハンナのラリアット(寝返り)で違う意味で眠らされそうになったのは別の話。

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