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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾参 ―黒き神の子―
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闇より深い黒

【バナス砂漠 グシュ遺跡】

数百年前の文明によって建てられたこの場所は何かの儀式に使われたらしい祭壇があった。

祭壇の間には生贄の為の台座があり、生贄を寝かせて火で炙ることで神への供物とし災害を抑えていた。

偶然なのか不思議な力が働いたのか、そうすることで砂嵐は治まっていたらしい。


今はタイリー教の本拠地として使われ、邪神復活の為の儀式の場となっていた。



エミリアを連れて転移してきたグラズは台座に寝かせると儀式の準備に取り掛かる。

と言っても特別な液体一杯分を用意するだけなのだが、乾燥すると駄目になるので容器から出したら直ちに飲ませる必要がある。


神官らしき者が金の杯にドス黒い液体を満たすとエミリアの口元に近づけた。


「っ!!」


「うわっ!?」


液体が垂れる直前、目覚めたエミリアが神官の手を払うと台座から飛び降りた。


「このタイミングで起きるとは、持ち前の勘の良さがそうさせたのかな?だが………」


グラズが何かを呟く。


「今は大人しく寝てなさい。」


「う………」


エミリアに強い眠気が襲いかかる。

が、すぐに治まるとグラズに一気に詰め寄った。





ゴリュッ!!


「ほっ!!?」


グラズの股間を蹴り上げる。

悶絶する神の御子を眺める間もなくエミリアは走り去る。

後を追うように黒ローブの集団も広間から居なくなった。




とてつもなく嫌な気配を感じたエミリアが無理矢理意識を覚醒させると何かを飲まされようとしていた。


偉そうな奴の魔法を持ち前の魔法抵抗力で沈静化して急所蹴り。

何とかその場から立ち去るも知らない場所で逃げ切れるとは思っていない。


だが問題があった。


「いづっ……………」


闘技場でキングに付けられた傷が治っていなかった。備え付けの回復魔法陣で治りきる前に連れ出されていたのだ。

腹から背中にかけて、そして撃たれた左手が激痛む。

背後から迫る気配は多数。この怪我では探知能力が活かせない。


廊下らしき場所に出ると近くの部屋に迷わず入る。

そこは小さい物置らしい。

迫ってきていた気配が扉の前に集まっていた。


今のエミリアには武器が無い。足に巻いていたナイフホルダーはグラズに外されたのか無くなっていた。ルールーの声が聞こえないということはグリムリーパーも近くに無い。


何でもいい、あいつらを殺せる物が欲しい。






もうこれでいいや。







黒ローブの集団がエミリアが潜伏する部屋の前に集まる。

黒ローブの一人が様子を窺うべく扉の前で聞き耳を立てた。



ガツッ!!


扉から鋭利な金属が飛び出し、黒ローブの顔面を貫いた。

エミリアは扉を蹴破ると近場の黒ローブの脳天にガツンとお見舞いする。


物置で見つけたのはツルハシだった。

使いづらいが贅沢は言ってられない。


ツルハシを引き抜くと迫っていた毒ナイフを蹴落とし、頭を破壊。


これはまずいと黒ローブの一人がチャクラムを投げた。

危険に気づいたエミリアはチャクラムの内側を器用に掴むと持ち主に返し、頭が分かれた。

掴むときにまだ治りきってない左手が擦れたがたいしたことではない。


「あれだけの人数相手にこの大立ち回り、やはり器に相応しい。」


黒ローブが残り数人のところでグラズがようやく追いついた。若干内股気味なのがカリスマ性を下げていた。


「部下達は優秀な筈なのですが、規格外の相手だと私がやるしかなさそうですね!」


「っ!?」


エミリア目がけて蹴り上げた。

若干反応が遅れスカートがめくれ上がっただけで済む。


「……女の子に何てことするの。」


「アズマには『目には目を』という言葉がありましてね、同じ目に遭わせようとしただけです。」


「あんたは誘拐犯だから良いの。全員殺してお家に帰る。」


「それはいけません、我々の野望の為に協力してもらわないと。」


「やなこった。」


ツルハシをグラズに振り下ろす。

ガキッ!


「あっ!?」


障壁に阻まれツルハシを弾き飛ばされた。

一瞬の隙を突いて黒ローブが一斉に迫った。



一番近いのは真後ろ、突き。

次は右前、右から袈裟斬り。

攻撃を読んだエミリアは刃が当たる寸前、後ろのアサシンのナイフを持った手を掴むと前方の敵に突き刺す。


左………縦斬り。


懐に入り頭突きをかまし、ナイフを奪って頭に突き刺す。




左後方…………


「ぐっ!?」


読み切る前に蹴り飛ばされた。

もうエミリアの身体は限界だった。







祭壇に再び連れて来られたエミリア。

両手と両足は何重にも縛られ絶対動けないようにされていた。


神官らしい者がまたドス黒い液体を持ってくる。

エミリアの顔に近づけられるが抵抗するだけの力は残ってなかった。




そして液体はエミリアの身体に入っていくと同時に祭壇が怪しい紫色に光り出す。

一際輝くと黒い靄が現れ、エミリアの中に入った。











自分が自分で無くなっていく感じがした。


まるで何かが塗りつぶしてくるかのように身体を蝕んでくる。

死ぬ……なんてものじゃない、存在が消されるようだ。




もう、駄目なのかな


自分がこんなに弱いなんて


















ごめんね




















「諦めちゃだめだよ、エミリアおねーさん。」

※ツルハシを人に向けて使わないでください

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