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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾参 ―黒き神の子―
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黒き神の子

【砂漠の町ゴドゴゴ】つ

ハンナが巨鳥を相手している間にナタリー達はエミリアの救助を試みていた。

だが突然見知らぬ黒いローブの集団が現れたのだ。


「何ですの貴方達は?」


何時でも撃てるぞとナタリーの背後に氷柱が展開された。

すると黒ローブの集団の中央から一人無防備にも一歩出てきた人物がいた。


「やぁやぁ初めまして、君達は僕を知らないだろうが、君たちのことはよく知っている。」


「どういう意味ですの?」


「我らが主人はあらゆる時間を渡るから敵対者の情報は把握しているのだよ。」


「時間を渡る………まさか!!」


クリスティアナは目の前に立つ集団の目的、リーダー格の正体がわかった。


「初めまして、僕はグラズ。邪神ズヴェン様の御子にして邪神様を崇める『タイリー教団』の教祖をしている。」




タイリー教団は邪神ズヴェンがこの地に降り立った時に創設された所謂邪教と呼ばれる宗教団体だ。

時渡りの邪神によってもたらされる神託を受け、これから起きる未来を最良の物にするべく様々な活動をしていた。


当初は割と真っ当な活動をしていたが今の教祖、邪神の御子グラズから教団は邪神の為に非合法な行動を起こしていった。


「聖都での戦いで邪神様は敗れたが、消滅してはいない。故に我々は再臨を果たすために多くの血を必要とした。」


「生贄ってことですのね?悪趣味だこと。」


「………王国の闘技場での魔物騒動も貴方達の仕業ですね。」


「その通り、邪神様が降臨するための糧となるのだ、これほど名誉なことはない。」


「貴方はっ………人の命を何だとっ……!」


闘技場のような場所には蘇生用の魔法陣はあるものの万能ではない。

蘇生といっても直ぐに生き返ることは無く、時間をかけて身体を治した上で蘇るのである。

故に蘇生中に更に傷が増えると生き返るまでの時間が延びるし、死亡してから半日以上経つと魂を戻すことが出来なくなってしまう。

クリスティアナは闘技場の蘇生魔法陣を人命の軽視と考えているため廃止を訴えていた。


望んで聖女になってはいないが命の尊さは理解しているつもりだ。

目の前の男はそんなクリスティアナの思想と真逆のことをしたのだ。


「クラウス殿下は良い仕事をしてくれました。邪神様を復活させてくれたおかげでかの方の魂は世界に留まることが出来た。」


「第二王子も、貴方が?」


「勿論。アナタへの歪んだ感情に訴えかけただけで、あとはご存知の通り。」


グラズがくくくと笑みを浮かべ、ナタリーは心底嫌そうな顔をした。


「唯一の誤算は邪神様は身体を失い、この世界に長居できなくなっていた。だがそれも今日で終わる。」


グラズが倒れているエミリアに近づいた。


「邪神様の依り代に相応しい身体が見つかった!彼女の狂気と闇属性への適性は実に理想的!」


「お姉様にちかづくな!!」


グラズ目がけて氷柱が飛ぶが見えない壁で防がれた。

魔法障壁だろう。


「チッ!」


「可愛くない女だ、目の前の障害を排除しないと連れて行けないか。」


グラズが右手を上げると黒ローブの集団がナイフや杖を取り出した。

魔導師の他にアサシンのような者もいるようだ。


「邪魔者を消せ。」


黒ローブの集団が一斉に襲いかかった。


「くっ!」


クリスティアナも障壁を展開して攻撃を防ぐ。

ナタリーはその隙に魔法の詠唱を始めるが下手をするとエミリアを傷つけてしまう。

そうなると使える魔法は限られてくる。

氷柱を射出して一番近い黒ローブを狙い撃つことにした。


「グオオォォォ!!!」


障壁から飛び出したレイラがドラゴンになると黒ローブの集団を襲い始めた。

ブレスを使うわけにはいかないので巨体を活かした接近戦で挑んだ。

アサシン達は負けじとドラゴンの爪や尻尾を躱しながら斬りつけるが、幼体とはいえ相手はドラゴンの上位種であるフレイムドラゴンにはミスリルでも掠り傷くらいしか与えられない。


ならば冷気魔法だと魔導師達がフレイムドラゴンに狙いを定めた瞬間。



ドスドスドスッ


魔導師達の額に矢が突き刺さる。

フレイムドラゴンの頭上にはいつの間にかハンナが陣取り、ドラゴンの天敵を葬った。


「流石はAランク冒険者は伊達ではないということですか。ならばこれはどうでしょう?」


グラズがそう言うと周囲に魔法陣が現れ、更に黒ローブが増えた。


黒ローブの一部がフレイムドラゴンの頭上に何かを投げた。


「うわっ?!」


予想以上の速度でハンナの数ミリ近くを円盤が通り過ぎた。

アサシンが投げたのはチャクラムと呼ばれる投擲武器で、円盤の外側が全て刃で出来ている。

直撃すれば簡単に肉が裂ける。


エミリアなら刃の無い内側を掴んで投げ返すのだろうが、ハンナにはそんな芸当はできない。


「厄介だなぁ、結構速いし………。」


チャクラムは幅が広い分大きく避ける必要があった。


「ギャアアォォォ!!」


ハンナの迎撃が無くなった事でドラゴンに冷気魔法が襲いかかる。

弱点を突かれたドラゴンが暴れ始め足元のアサシンを纏めて潰した。


「くそっ………」


あまりドラゴンに負担はかけられない。

魔法の発動音で魔導師の位置を把握すると頭を一瞬出し、


ドスッ


一撃。

その直後チャクラムの飛ぶ音がする。


これ間に合わない。

死んだかも。






ドキューーン!!


轟音と共にハンナを狙ったチャクラムが撃ち落とされた。




「………ご主人のお友達には手を出させませんよ。」


闘技場の端に緑色の着物の女性が長い筒を構えていた。





時は少し遡り、魔物が闘技場に現れた頃。

エミリア達を見守っていたアズマの巫女桃江は突然の襲撃に対処していた。


得物の薙刀で迫り来る魔物を纏めて薙ぎ倒していると少女達に群がる黒ローブに気づいた。

ここからでは間に合わない。


「明日香!!」


桃江の呼びかけと同時に銃声が鳴り響いた。


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