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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾参 ―黒き神の子―
156/174

砂漠の町に来たる死の旋風

【砂漠の町ゴドゴゴ】

真上から容赦なく照りつける太陽。

厳しい太陽光に負けないかのような喧噪。


この日、砂漠の民の部族長セルジオが大闘技場にて宣言した。


今回のトーナメントで勝ち上がった者に美しき奴隷を授ける。



「全員殺して皆を助ける。」


そんな中エミリアはただ一人、大闘技場のアリーナにいた。









時は遡る。



部族長によって囚われの身となった6人は同じ檻に入れられていた。魔法が使える三人には魔力封じの首輪を付けられ無力化されてしまう。



セルジオから全員が大闘技場の優勝者への景品にされたことを告げられた。

クリスティアナに話した通り大闘技場のマンネリ化は事実で、新たな刺激を求める観衆や参加者には抜群の効果があると見ていた。


大闘技場について話している最中にセルジオから提案があった。




もし大闘技場で最後まで勝ち進んだら解放解放しよう。





大闘技場には連日強者が集まる。

特に常連組である砂漠の民は高い戦闘力で何人もの相手を潰してきた。


年端もいかない少女に勝ち目は無いと踏んでの提案だ。





「俺が「私がやる。」」


ラバダの言葉に被せてエミリアが参加を望んだ。

四人は反対したがエミリアは引き下がらなかった。





「全員殺せば助かるんでしょ?簡単じゃん。」



その挑発にセルジオは乗った。

今でこそ不況の波に飲まれているが大闘技場は砂漠の民の古くからの伝統であり誇りだ。

それを外国の小娘に簡単と一蹴されたのだ。










迎えた翌日、大切な仲間を助けるためエミリアはただ一人場違いとも言える大闘技場にいた。



『さぁお待たせいたしました、本日のメインプログラム!バトルトーナメントが始まります!』


会場の何処かに居るであろう実況者の声が聞こえてきた。

歓声が喧しくなりエミリアは顔を顰めた。


『本日開催されるバトルトーナメントは過去最多の128名の参加者となっています。熱いバトルが展開されることでしょう!』



実況者の挨拶を聞き流しながら手持ちの確認を始める。


大闘技場へ来る時に大量のナイフは返されたのでいつも通りの戦いは出来る。



『ではここで改めてルールを説明いたしましょう。』


・1対1によるトーナメント方式

・最後まで勝ち上がり『キング』を倒して優勝者となる

・試合開始の合図前の攻撃は禁止

・異国の楽器『銅鑼』が鳴ったら開始

・観客に被害が及ばなければ何でもあり

・時間制限無し

・対戦者の何方かが死亡、降参するまで試合は継続する

・分身や召喚は可 飛び入り参加や観客席からの支援攻撃不可

・ゴミを投げたら出禁

・試合中の負傷は勝負が確定するまで治療不可

・勝敗が決してから勝者は敗者に対し何をしてもお咎め無し







『其れでは一回戦第一試合、選手の入場!まずはこの選手、我等が部族長が提供した奴隷を解放するため救急参加した美少女、エミィィィルルルィア!!』


大闘技場に現れた場違いな少女に観客はヒートアップした。


「………うるさ。」


顔を顰めながらナイフを高速で回す。

イライラしているとこうなる。


『対するは大闘技場の常連組、砂漠の狂犬カァァァマァァァ!!』


向かい側の入口から色黒の男が走ってきた。

ウォォォと雄叫びを上げながら棍棒を振り回すのがカマとか言う砂漠の民らしい。



「運が悪いな嬢ちゃん、俺がすぐに楽にしてやろう。」


「ふん。」



しゃべることは無い、とエミリアはナイフと逆手のグリムリーパーを構えた。


お互いに距離を取った定位置で武器を構えた。



『試合開始!!』


ゴワァァンと銅鑼が鳴った瞬間カマが飛び出した。



直後に身体を貫かれた。



槍状のグリムリーパーがカマを捉えた。

先端にカマが付いたグリムリーパーをそのまま地面に振り下ろす。


持ち上げて、振り下ろす。


ビタンビタンと槍に突き刺さった男を何度も叩きつける度に赤色が飛び散る。

カマは既に動かないがエミリアの探知能力が生存を確認していた。


槍を思い切り叩きつけた所でようやく絶命。




圧勝であった。









『しっ……勝者、エミリアァァ!!』


絶句する観衆を掻き消したのは事態の把握に時間がかかった実況者の声だった。



「お疲れ様ですお姉様!」


選手控え室でナタリー達が出迎える。

控え室にはアリーナの様子が窓からよく見えたのでエミリアの戦いぶりが見えただろう。


「初戦突破、おめでとうございます。」


「流石エミリア、相手に何もさせなかったね。」


「お姉ちゃん格好いい!」


「まぁ、最初はこんなもんじゃない?」


初戦は呆気なく終わったがエミリアは気を抜くつもりはなかった。

全員をぶちのめして部族長(名前は忘れた)に痛い目を見させないと奴隷行きなのだ。

自分だけならともかく大切な仲間達を悲惨な末路に向かわせたくなかった。




そんな四人の首下には鉄の首輪が付けられていた。

魔力封じを兼ねた脱走防止の魔道具だ。


エミリアは闘技場参加者ということで特別に外されていた。残りの首輪はエミリアがキングに勝った時点で外れるらしい。


ふと控え室の隅を見遣るとラバダが腕を組んだまま座り込んでいた。


クリスティアナと色々リンクしている彼は魔力封じの首輪により魔力の供給が絶たれてしまい、自身の魔力が尽きないように最低限の動きに留めていた。


とは言え魔力はまだまだ余っているのだが実はクリスティアナの首輪を力任せに外そうとしたら他の三人の首輪が絞められてしまった、責任を感じた彼は自ら休止状態になったのだ。

クリスティアナから魔力が供給されるまでは動くことはないだろう。





試合開始前までクリスティアナは責任を感じてずっと消沈していた。

エミリアの戦いぶり………という名の殺戮に少しは元気を取り戻したかも知れない。


闘技場の試合展開は早く、あっという間にエミリアの番が来た。

剣状のグリムリーパーを撫でると応えるように薄く光る。



「次もすぐに殺す。」



負けるわけにはいかなかった。


大闘技場

第一回戦第一試合


経過時間 9秒 

勝者:エミリア・ルーベンス

敗者:カマ・セイヌ


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