表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾弐 ―嫉妬の果てに―
150/174

死神少女の復讐

【ベルセイン帝国 小さな村リネ】

「ヒーローは遅れてくるってこの事か。」


ライルは動けないナタリーより先にエミリアを相手にすることにした。

新聞では分からなかったが身の丈に合わない大鎌を持った少女は明らかに異常だ。

赤い瞳は魔族などが持っているがどう見ても人間にしか見えないし、それどころか魔力もあるようには思えない。

だがこんなチビが自分より上なのは許せない。


「まぁいいさ、お前も一緒に殺してやろうか。」


ライルは一気にエミリアに詰め寄ると剣を振り下ろした。



避ける素振りを見せずエミリアは剣を左手で掴んだ。


「なっ!?」


エミリアの小さな手から血が流れてくるが離すどころか力を強めた。




バキッ


そのまま剣をへし折った。


「馬鹿なっ、ミスリルの剣を素手で?!何なんだお前は?!」



エミリアは黙ったままライルの顔を見ていた。









この声は聞いたことある。






エミリアは両親を失った日を忘れたことは無かった。

森から帰った幼いエミリアには燃えさかる我が家はあまりにもショックが大きかった。


その時に聞こえた声も覚えていた。






これで僕が一番だ。



そしてかつて王国で旅をしていた時にエミリアはライルを見かけていた。

その時に無性に殺したくなった事もあった。






エミリアの脳が心を護るために忘れていたのかも知れない。

だが今ははっきりとわかる。

こいつは火事の現場にいた。


顔も見ていた。





あぁ、こいつなんだ。






「お前だけは殺す。」


ドス黒いオーラを放つ大鎌をライルに振り下ろす。


が、障壁で防がれる。


「ちっ………。」


何度か当てたが障壁は壊れる気配が無い。

その時霊体状態のルールーが話しかけてきた。


「主、あれは危険。攻撃するとあっちが回復する。」


精霊であるルールーは障壁の性質を瞬時に見破った。


「どうすれば良い?」


「あの強度の障壁はあらゆる攻撃を防ぐから破るには時間がかかる。聖女と賢者が二人がかりで解除するような代物。」


「………ナタリーもクリスも動けない。」


ナタリーは先程の戦闘でやられ、クリスティアナは障壁破壊のショックで動けない。





「でも、あんな障壁は人間が張れる筈がない。あれを維持できるのは魔族か天使か精霊くらい………」





「ん………何かいる。」


エミリアの探知能力が目に見えない何かを感じ取った。

それと同時に瞳が青色に戻った。



























精霊ルナンドはライルと契約して裏側で活躍していた。

「自分は一番」を口癖にこの主人は外道な手段でその座を維持していた。


ルーベンス夫妻を焼死させてからも手は緩めなかった。

一番を脅かす存在は基本的に闇討ち。

それが失敗したら真っ向勝負となるが、ルナンドがいなければ死んでいた場面がいくつもあった。


ライルに取り憑く事で能力を強化することもできたが、この男は力によるゴリ押ししかできない。

賢い相手だと間違いなく負ける。 

だからルナンドが色々と邪魔をする必要があった。


先程の賢者もルナンドに気づかない内に口を塞がれパニックになってから一撃を受けた。

ルナンド自身は脆弱だが人間からは視認できない。

目の前にいる少女は危険だが先程のように不意を突いて口を塞ぐか首でも絞めれば驚くだろう。

その一瞬が勝負だ。




「駄目。」


ルナンドの顔を振り向かせたルールーはそのまま殴った。精霊としてルナンドは上位だがルールーとは格が違いすぎた。

聖剣の精霊としてやってきたルールーはそこらの精霊では歯が立たないのだ。


「私の主に手を出すな。」


ルールーが手を翳すとルナンドが粒子となって消えた。

消したわけではない、ただ動けなくしただけだ。


精霊同士の殺害は御法度だ、精霊王に怒られる。



パリーーン










ライルの斧は一撃が重い分隙は大きい。

力任せな斧はエミリアを掠める事無く全て避けられた。


剣戟を続けても勝てないと分かったライルはエミリアから距離を取ると魔法を使い始めた。


詠唱が終わるとエミリアを炎が包囲した。

その直後に足下から火柱が吹き出し完全に炎に包まれた。

ライルは手を緩めず電撃や石柱を放つ。

姿は見えないが当たってはいるはずだ。

止めに爆裂魔法で一気に仕留める。

強力だが発動に時間がかかるのが欠点だ。


「うぉ!?」


発動直前で炎の中から大鎌が飛んできた。

寸前で躱した直後に炎からエミリアが飛び出した。


そのままライルに飛びかかり馬乗りになると顔を殴り始めた。さっき拾った石は随分ゴツゴツしていた。


障壁は展開されていない。

精霊によって維持された障壁は消滅しエミリアの殴りを真面に受けた。


五発くらい殴ったらライルに蹴り飛ばされた。

直後に大鎌が戻ってきて右手に収まる。

火達磨になり多数の魔法が直撃した筈のエミリアは見た目はボロボロだが身体には傷一つ付いていなかった。


「何なんだお前は………!?」


流石にエミリアの異常性に気づいたライルは斧に力を込めると刃が光り出す。


「僕が一番だ………僕は主人公なんだ!」


身体強化の魔法をかけたライルは斧を地面に付けると引きずりながら一気に詰め寄った。


「お前なんかに邪魔されてたまるかぁぁぁ!!」


斧を振り上げると衝撃波が飛び出し一直線にエミリアへ向かっていった。

先程の剣戟で位置が入れ替わってエミリアの背後には家と深い眠りから覚めない仲間達。


「っ!!」


仲間が傷つく位ならとグリムリーパーを突き立てた瞬間。衝撃波はそのままエミリアを巻き込んだ。















土煙が晴れると氷の壁がそびえ立っていた。




氷が砕け散るとそこにはエミリアと、


「お姉様に………触れないでくださいましっ。」


復活したナタリーが右手を翳していた。



エミリアの能力はチート気味ですが万能ではないので案外ちょうど良いのかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ