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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾壱 ―巨人と巨船と魔導人形―
139/174

死神少女は危険地帯へ乗り込む

残酷描写にご注意ください

【ナーガ海】

海賊は確実に数を減らしている筈だが海賊船の数はあまり変わっていない。

第一皇女であり飛行騎士でもあるオーレリアは上空から戦況を眺めている。


港では巨人とギガントが取っ組み合っている。

ギガントがどれだけ魔力を使うのかは知らないが長期戦は無理だ。

中にいるナタリーが魔力切れを起こせば港町に巨人の驚異が迫る。


そして海賊船に乗り込む飛行騎士や冒険者は海賊を次々と捕縛している。

捕虜となった海賊は地上に送り海賊船は木っ端微塵に破壊された。



ここで違和感を感じた。


「おい、さっきまで浮かんでいた残骸は何処へ行った?」


彼女達の真下には海賊船だった物が漂っていたはずだ。

結構な数の残骸が少し目を離した隙に全てが消えていた。


「海に沈んだ………にしてはあれだけの数がそんなに早く沈むのでしょうか?」


後ろに控えていたペガサスに騎乗する護衛の一人が答えるが彼女も何かを感じたようだ。


「………無限に現れる海賊船か。」


オーレリアは呟くと水晶に話しかける。


「ブラッド船長、私だ。砲撃を中止せよ!海賊船の残骸から新たな船が生まれている可能性がある。繰り返す、砲撃を控えよ!」


これで要塞船による砲撃は止まる。

だが海賊船も攻撃を止める訳ではない。

オーレリアは別行動を取る飛行騎士の隊長に新たな指示を出す。


「制圧した海賊船は残らず燃やせ!残骸から海賊船が増えるぞ!」








「殿下から命令だ!海賊船は全て燃やし尽くせ!冒険者にも伝えろ!」


水晶を通して全飛行騎士に命令が伝わる。

そして何処かから持ってきた松明が海賊船に放り込まれる。

中に誰かが残っていたとしても知らないことだ。

冒険者が居ないのは確認済みだ。


ハンナの鋭敏な耳は隣の船の会話をしっかり聞き取っていた。

あの水晶から聞こえたオーレリアの声も何とか聞き取れた。


となるとやる事は決まった。

用の無い海賊船はフレイムドラゴンにより火達磨と化した。

何か人のような物が見えるが気のせいだろう。

エミリアの探知に反応したとしても問題ない。どうせ死ぬのだし。


次の獲物を探そうと見回した時に圧倒的な存在感を見せる船が現れた。


「………多分あれにボスがいる。」






他の海賊船を凌駕する巨大な船体は帝国民なら恐らく誰もが見覚えのある、そして今ここにある筈の無い物だった。

要塞船ジェストの乗組員が叫ぶ。


「そんな馬鹿な!あれはハーベリアだぞ?!」


巨船ハーベリアは間違いなく軍港で修復中だ。

だが海賊船に囲まれ現れたそれはどう見ても帝国最大最強の軍船だった。

周囲には大型船が展開しており以前の相当作戦の時と立場が逆になっていた。


「巨獣砲なんか撃たせてみろ、港は崩壊するぞ!」


船長ブラッドはすぐに指示を出す。


「これよりジェストは巨船へ接近する!衝撃に備え白兵戦用意!」


要塞船が進路を巨大戦艦に向ける。


「飛行騎士団、周囲の船を燃やせ!ジェストはハーベリア擬きに肉薄する!」


水晶を通して飛行騎士に指示が行き渡る。





エミリア達は一足先に巨大戦艦ハーベリアへ降り立っていた。

そこには今までで一番多くの海賊が待ち構えていた。


二人と一頭を包囲した海賊の一人がエミリアに斬りかかる。

すぐにグリムリーパーで首をはねられた。


一人でダメならと今度は一斉に襲いかかる。


「グオォォォ!!」


だが海賊にはフレイムドラゴンへの対抗手段が無かった。

ドラゴンの怒りを買った海賊達は抵抗もできないまま焼かれた。


一通り海賊を処刑し終えたエミリアは船内へ突入する。勿論ボス共々皆殺しにする為だ。

レイラも少女の姿で一緒に着いていく。


「おぉっ!?」


突然船が大きく揺れた。

エミリアの探知能力で多数の何かが船に乗り込んでいるのがわかった。

きっと海軍の人達だろうとエミリアは気にしないことにした。


もし海賊の仲間なら仲間の元へ送るだけだ。







第一皇女オーレリアは絶句していた。

彼女の目の前には海賊の惨殺死体、ほとんど首や他の部位が切断され生きている者は居ない。

先程まで居たドラゴンの仕業とは思えなかった。

フレイムドラゴンの爪は高温に熱されている為、傷痕には必ず火傷も追加される。

焼死体を除けば異常な切れ味の武器で、しかも一撃でやられていた。


確かフレイムドラゴンには少女が二人乗っていたはず。

一人はクロスボウを持っていた。

ならばもう一人の子の仕業?


ふとオーレリアの頭の隅に朧気な記憶が甦る。




魔法学園で壮絶な虐めを受けていたナタリーはオーレリアと出会った事で変わった。

正義感の強いオーレリアは陰湿な虐めを許さずナタリーを保護した。


ナタリーが少しずつ魔導師として非凡な才能を発揮していく中、こんな会話をしていた。


「私のお姉様は敵には容赦しませんの。命乞いも降伏も認めない。そんなお姉様を見習うことにしますわ。うふふふ………。」


後日ナタリーを虐めていた令息令嬢は氷像となって発見された。

誰がやったのかはすぐに分かったがオーレリアと当時の学園長は追求することはなかった。

もはや彼女は誰にも止められない域に入っていたからだ。




そんなナタリーが言っていた『お姉様』と呼ばれる存在。

この凄惨な現場を見れば彼女がやったのだと理解できた。


彼女の目的は分からない。

だが船内へ突入した彼女の標的は分かった。


「一人で全員を相手する気か?」


オーレリアは騎士を連れて船内へ向かった。














異界人ケンジは異世界転移した際に『創造魔法』を授かった。

素材を元に色々な物を作り上げることができる。

ただ彼の創造魔法は特別で素材を探知する範囲が非常に広かった。

数百メートル先の木材を使って船を造れてから海賊の逆襲が始まった。

粉々にされた海賊船は瞬時にケンジが木片から新たに造り直し無限に近い海賊船団が出来上がった。

更に彼の創造魔法は一度見た物を記憶し創造魔法で作り上げることができた。

帝国海軍との戦闘で彼は巨大戦艦ハーベリアを見た。おかげで彼は全く同じ巨大戦艦を造り上げてしまった。


だが炎上した素材は使えず、今まさに彼等は追い詰められていた。


彼は残念ながら戦闘の才能は無かった。

間接的なサポートしかできない彼は自衛手段として密かに造った物がある。

材料集めには苦労したがこの世界では間違いなく最強の自衛手段を手にいれた。


チャンスは一回しか無い。



そんな彼に近づいてくる足音が聞こえてくるのであった。

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