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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾壱 ―巨人と巨船と魔導人形―
131/174

海賊に保護される異能の異界人

【ナーガ海】

あれからエミリア達は帝国海軍に救助され港湾都市セーベグに送られることとなった。


「君達のお陰で海賊征伐に新たな一歩を踏み出すことができた。」


初老の軍人エーリヒはエミリア達に感謝状を贈っていた。

近年勢力を広げているバイキンゴー海賊は帝国海軍の悩みの種でもあった。

というのもバイキンゴー海賊が所有する船は海軍所属の軍船に匹敵する物が多い。

調べてみても海賊に支援するような団体は発見できず、海賊は自力で造船しているとしか考えられない。

沈めても拿捕しても明らかに向こうの造船速度、技術は常軌を逸していた。

偶然とはいえ海賊の戦力を減らし、更には数十名を捕まえる機会を与えてくれたエミリアは正に英雄となっていた。


「んー…………?」

「お姉様、お辞儀をして受けとるのですわ。」

「うん。」


こういった事例に慣れてないエミリアをナタリーがフォローする。


ちなみに頭の怪我はナタリーにバレずにクリスティアナが完治させた。

あれが発覚していたら良くないことが起きていただろう。


「軍船故、快適ではないかもしれないがセーベグまで送らせていただこう。」

「ありがとうございます。」


ゴォォーーン ゴォォーーン


鈍い鐘の音が鳴ると巨船は少女達を乗せてゆったり動き出した。















ツヨシヨシダとケンジタダは二人揃ってこの世界に転移してきた異界人だ。


喧嘩っ早いツヨシと内気なケンジは幼馴染みで性格は真逆だが喧嘩や恋愛とは無縁の生活を送っていた。

どこへ行くにも一緒の二人は趣味も一緒で最近では異世界系のライトノベルに夢中だった。

トラックに轢かれるでもなく、魔方陣が現れるでもなく、ある日起きたら二人は見知らぬ森で目を覚ました。


よくある話ではこういった時、たまたま知り合った美少女と一緒に成り上がって世界の驚異に立ち向かい、幸せな生活を送るものだ。

それを夢見てツヨシとケンジは森をさ迷い始めた。




しかし現実は厳しい、彼等を保護したのは女っ気を感じない海賊だった。


バイキンゴー海賊団を名乗る彼等は海賊の中で底辺を行く集団だった。

ドミニクと名乗る厳つい男はいつかビッグになることを夢見て商船を襲っているが失敗に終わっていた。

異界人は何か特別な力を授かっている事が多いため、ドミニクは少年二人を保護したのだった。


ツヨシとケンジは確かに力を持っていた。

二人の力でバイキンゴー海賊団は一気に勢力を拡大し国にとって見過ごせない存在となった。


彼等は何故かその力で海賊を倒そうという考えには至らなかった。


やがて彼等は大きな戦いに巻き込まれていくことになる。

その時に待っているのは希望か、絶望か。


彼等の夢である美少女との出会いはあるのか、それは神のみぞ知る。

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