死神少女は掃除する
過激な残酷描写にご注意ください
【魔のダンジョン 第四階層】
レオのパーティーは五人組。
剣士のレオと盗賊、弓使い、魔導師に神官のオーソドックスな構成だ。
彼等の後ろには扉。その先の通路を越えなければ上層へは行けない。
「殺せ!!」
レオの一声でナイフ、矢、火の玉が飛んでくる。
それらはクリスティアナの障壁で全て阻まれた。
以前黒の森で使われた物だ。変異態エビルベアには破壊されたが強度は聖女が張るだけあり最高クラスの物だ。
障壁の中からナイフ、氷刃、毒矢に火球で反撃。
向こうの神官も障壁を張って防御する。
「邪魔なのは全部殺す。」
エミリアに合わせて仲間達が殺意を向ける。
グリムリーパーを斧状に変形させると向こうの障壁に振り下ろす。
障壁に当たる度に高い金属音、障壁にダメージが入っている証拠だ。
やがて障壁はひびが入り粉々に砕け散った。
クリスティアナの障壁はまだ無事だが殺しに行くには障壁から抜けなければならない。
エミリアを大きな影が覆うとレオ達を指差す。
「やっちゃって。」
「グオォォォ!!」
エミリアのお願いに応えてフレイムドラゴンが飛び出した。
突然現れたドラゴンにレオ達は混乱した。
フレイムドラゴンは危険度Aの魔物の頂点とされる存在。幼体とはいえレオ達では到底敵わない相手だ。
ドラゴンに驚いてレオ達は分散してしまう。
そんな中、魔導師が勇敢にもドラゴンに向けて氷の刃を放つ。
直前に押し倒され魔法は不発に終わる。
「死んで。」
大きく見開かれた青い瞳は魔導師にナイフを突き立てた。
ドラゴンに氷を当てようとした為にエミリアの最優先殺害対象となってしまったのだ。
執拗に、何度も、何度も突き刺す。
魔導師の死によっていよいよドラゴンへの対抗手段がなくなってしまった。
ナイフや矢は鱗に弾かれ通用しない。
聖魔法はアンデッドや魔族に有効だが魔物には効果が薄いのだ。
それでも盗賊と弓使いはブレスを掻い潜り攻撃する。
「ぐぁっ!?」
弓使いの額に矢が刺さった。
「あぎゃああぁぁぁぁ!!」
それに気を取られた盗賊が火達磨になった。
「一丁上がり!」
ドラゴンに登ったハンナはガッツポーズ。
ハンナが弓ではなくクロスボウを使うのは隠れながら狙撃しやすいのが理由の一つだ。
障壁を再展開しようとした神官の胸に氷柱が突き刺さっていた。
ナタリーは珍しく杖を取り出していた。
普段は杖無しで魔法を使っている彼女がそれを使うのは魔力制御を必用とする時。
大魔法を使うときには必須の得物だ。
「私、ちょっと気になることがありますの。それを貴方で試させていただきますわね。」
「んがっ?!」
小さい杖を神官の口に突っ込むと詠唱を始めた。
すると神官の口に細長いものが出現し顔が変形した。
ナタリーが口のなかに氷柱を出したらしい。
神官が首を振って助けを請うとナタリーは笑顔になる。
「お姉様の敵は私の敵。お姉様が許さないので死んでくださいな。」
指をぱちんと鳴らすと神官の口の内側から氷が突き出て吐血する。
あっという間に四人が犠牲になってレオは逃げ出した。
本来の予定では少女達を殺して自分達の手柄になるはずだったがもはやそれどころではなかった。
リーダー格の少女が一人を餌食にしたのを皮切りに次々と犠牲者を増やしていく。
もはや生きて逃げることしか考えられなかった。
フロアから脱出するため扉に向かう。
バチンッ
「うぎゃああぁぁぁ!!!」
金属音と共にレオの足に激痛が走る。
足を挟むのはベアトラップ。来たときには仕掛けてなかった筈の物だった。
フレイムドラゴン登場と共にレオ達が分散した隙にハンナは扉の目の前にベアトラップを仕掛けていた。
仲間の誰かが踏む可能性もあったがハンナには自信があった。
絶対にあの男連中がひっかかると。
ベアトラップに苦戦しているレオの真後ろにエミリアが立つと、首をつかんで地面に叩きつけた。
「うぐぇ!」
背中を踏みつけるとグリムリーパーを首に当てる。
「あの世で一生ごめんなさいしてて。」
それがレオが最後に聞いた言葉になった。




