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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾 ―降臨―
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死神少女が聖剣に選ばれた理由

【魔のダンジョン 第五階層】

「私はルールー。聖剣に宿りし者。」

「やどりし………もの?」


エミリアは首をかしげた。


「えっと………精霊みたいなもの。」

「精霊さん?じゃあ貴女は凄いんだ。」

「ん。」


「じゃあさっきの声はルールーの?」


ルールーの声は先程の戦闘中に聞いた声とよく似ていた。


「主が聖剣で沢山魔力を回収してくれた。おかげでルールーが出られるようになった。」



聖剣は長いこと邪神封印に使われており魔力を年々失っていた。

本来なら主人が居なくなって十年程で枯渇する筈だったが、歴代の聖女が祈祷によって魔力を補填していた為なんとか持っていた。


結果的に邪神の封印は解けてしまったが、偶然にもそこにいたエミリアが聖剣の新たな主に選ばれた。






お伽噺では聖剣に選ばれるには厳しい試練を乗り越えたりだとか、様々な条件を満たした勇者が共に描かれる。


しかし誰にも知られていないことが一つだけあった。聖剣が持ち主として選ぶのは『純粋な殺意』の持ち主だった。


純粋な殺意………………それは殺害行為に一切の躊躇をしない者が持つ。

人間は魔物や動物などを殺すのは遠慮はしない。だが戦争などで同じ人間と戦う際、止めの一撃はどうしても一瞬躊躇ってしまう。

勇者の修行はそういった慈悲の心を取り除くのが目的だ。

前の持ち主である異界の勇者ユウキも、つまりはそんな人物だった。




エミリアは初めての殺害行為の時点で既に躊躇は存在しなかった。

初めての殺害は妹の初恋相手。そして自分の初恋相手でもあった。


妹をこっぴどく振った少年をエミリアは自分に告白した直後に崖から突き落とした。

夕陽が綺麗なティア火山での出来事だった。


妹を泣かせるような人間は居なくていい。



以降、姉妹は恋愛に無関心になり将来は共に余生を過ごす事を誓った。

ちなみにこの日からエミリアが剣の稽古を両親から受けるようになった。



聖剣がエミリアを選んだ理由はもう一つあった。


両親を失い壊れかけた彼女の魂は邪神に蝕まれた聖剣と相性が良かったのだ。

彼女が聖剣を手に取った瞬間、歪な魂と共鳴した聖剣は前代未聞の変化を遂げた。


本来存在し得ない闇の力を宿した聖剣は闇剣として変異し、強大な力を得た。



しかし邪神の封印に力を使い果たした闇剣は完全ではなかった。

力を取り戻すには直接切りつけて魔力を回収する必要があった。


エミリアはそれから多くの魔物と人間を殺害した。

剣の魔力は高まり、遂にルールーが出てこられる迄に至った。




ルールー自身は脆弱でゴブリンにすらボッコボコにされる程だ。

しかし彼女は『主人に憑依』することで潜在能力を最大限まで引き出すことができるのだ。

この時、瞳が赤く光るのが特徴だ。


以前、エミリアに憑依した時はまだ完全ではなくルールーが身体を動かしていたのだ。

慣れない身体だったためいくらか痛手は受けてしまったが。


剣の形状が変化するのは他の武器を使われて魔力回収ができなくなるのを防ぐために付与されたもの。

使用者の思念を読み取り都合のいい形状に変化して同じ武器を使わせるのが目的だ。

ちなみに形状が大鎌に変化したのはエミリアが主人になって初めての現象だ。








「これからは主の為に力を授けられる。その力をどう使うかは自由。」

「力ってさっきの奴のこと?」

「そう。」


「これで皆を守れる。」



自分よりも仲間の事を優先するエミリア。

エミリアの側にいて何となく気づいてはいたがこの主人はあまり自分を大事にしない。

危険には自分が真っ先に挑む。

彼女はもう一人では生きることができなくなっていた。



「そうだ…………皆の所に戻らないと。」


オークとゴブリンに気をとられていたが今は仲間とはぐれていた。

自分がいない間に一人欠けていたらエミリアは発狂するだろう。






突然、気配を感じた。

ルールーも何かに気づいて周りを見渡す。


エミリアが感じた気配はオークがいた上り階段のすぐ横の壁だった。


壁をぺたぺた触るが何も起きない。

なぜかこの気配が物凄く気になってしまう。



考えた末にエミリアは闇剣をハンマーに変化させると壁に向かって叩きつけた。


ガツンと一発当てるとヒビが入った。

調べたときは気づかなかったが、この部分は木の壁に土を塗り固めてできていた。


もう一発当ててヒビが更に広がるとエミリアは力任せに蹴り破った。



ズガァーン!







「な、何だ貴様らは?!」


壁をぶち破った先にはそこには羽を生やしたいかにもな姿の魔族がいた。

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