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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾 ―降臨―
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死神少女の一人ぼっち無双

【魔のダンジョン 第五階層】

足を引きずってエミリアはダンジョンの隅であろう場所へ向かう。

エミリアが落ちてきた時にまぁまぁ大きな音はしたが特に魔物の動きに異常はなかった。


やがて気配が完全に感じ取れなくなると足を痛くしないように座り込みスカートの中を探り出す。

ダンジョンへ入る前にポーションを入れておいたことを覚えていた。




「…………?」


違和感に気づいた。

ポーションは二つ入れたはずだが一つしか入ってない。

そして感じるガラス片と湿り気。


「……………。」


落下の衝撃でポーションの瓶が一つ潰れたらしい。

嫌な位置に広がったそれは見ようによっては漏らしたようにも見える。


無論断じて漏らしてはいない。

我慢できないくらい追い詰められてもいないし、恐怖心が欠けたエミリアは怯えでやらかすこともない。

そもそも最後にやらかしたのは…………今はよしておく。


駄目になったものは仕方ない、使える方を飲むことにした。


「うぇ………。」


ポーションは効果は高いがかなりまずい。

今まで傷の手当てはクリスティアナがやっていたためポーションの味には慣れていない。


あまりにも不味いため戦闘中にはまず使えない。

慣れた冒険者はこんなものを何本も飲んでいる。

まだ生の薬草を傷口に塗りたくった激痛の方がマシだった。


「うぅ~~~っ。」


胃の中の物がせり上がってくるのがわかった。

エミリアの幼い体はポーションに拒否反応を見せている。

吐くと回復成分も出ていってしまうため、根性で押し止める。





しばらくすると足の痛みがひいてきた。

走り回るくらいは余裕だろう。


もうあんな思いは御免だ。


「はぁ………」


スカートに染みたポーションが足に張り付いて気持ち悪い。

着替えたくとも替えの服はクリスティアナが空間魔法管理している。

これで下着も濡れていたら堪ったものではない。





…………念のため確認したが下着は無事だった。










ベタつくスカートを気にしながら進むと気配を感じた。

姿勢を低くして様子を伺うと小さい影と大きな影が見える。




オークとゴブリンだ。


オークとゴブリンは近縁の種族と何かの本に書かれていた。

二種が合流するとゴブリン側はどれだけ大きな勢力でもオークに付き従うという。

オークに率いられたゴブリンは非常に攻撃敵になり町規模の集落を襲ったケースもある。





オーク達の近くには上へ戻る階段が見える。

あれを排除する必要があるようだ。


外簑からナイフを二本、ゴブリンに向けて投げた。


「ギャッ!」

「アギッ!」


二体のゴブリンを撃破。

オークと残りのゴブリンがエミリアに気づいた直後、オークの足元から無数の刃が突きだし縫い付けた。


「ウグァ!ナンダコレハ?!」


どうやらグリムリーパーを地面に突き刺している間はあの刃は引っ込まないらしい。

グリムリーパーをそのままにゴブリンの部隊に向けてナイフを投げまくる。


エミリアと背丈が近いゴブリンは狙いやすいらしく、上手いこと頭にナイフが刺さっていく。


ゴブリンの数が減ってきた所でグリムリーパーを引き抜いて戦闘体勢に入る。

オークは刃から解放され、怒り狂ってエミリアへ突進してくる。


オークの突進を避け、すれ違い様に一撃斬っておく。



「む。」


最初は気づかなかったが良く見るとゴブリンの一体が鎧を着ている。

冒険者の物にしては小さい。

明らかにゴブリン用に作られた物に見えた。


あれはゴブリンのリーダーなのだろう。

動きも早くナイフでは厳しそうだ。


取り敢えずまずは弱いのから片付けることにした。

グリムリーパーを振る度にゴブリンの首と胴体が離れていく。


オークとゴブリンリーダーの攻撃は大振りなので避けるタイミングがややずれる。


「ギャーーッ!!」


最後のゴブリンを仕留めた直後にオークとゴブリンリーダーが怒りに任せて武器を振った。










「?」


ほんの一瞬だったが何かが聞こえた。


小さいがはっきりエミリアの耳に残った。



不思議な事にその声が聞こえてからオークとゴブリンリーダーの動きが止まっていた。

まるで時間が停まっているかのように。





やがてその声ははっきりと聞こえた。





聖剣の力は戻った。

貴女に真の力を与えてあげる。






エミリアの体が赤く光り出すとオークとゴブリンリーダーは思わず下がった。


自分の中に何かが流れ込んでくる感覚。

ただ、これは何故か初めてではない気がした。





光が収束すると彼女は変わっていた。


ガチャンと地面を擦るのは剣ではなく巨大な鎌。初めて持つのに長年使っていたかのように手に馴染む。

青かった瞳は怪しく赤く光っていた。


大鎌を持ち上げ肩に担ぐ。






「じゃあ、死のうか。」

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