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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
拾 ―降臨―
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死神少女達は蹂躙する

【魔のダンジョン 第三階層】

階段を降りた先の小部屋でエミリアは足を止めた。


「……………沢山いる。」


その言葉で四人は戦闘体勢に移る。

エミリアの探知能力で無数の気配が感じ取れていた。

この数を相手にマトモにやり合って勝てる保証はない。


「私の出番ですわね。」

「私もっ。」


ナタリーとレイラが魔法で何とかするつもりのようだ。

扉の前に立つと二人は詠唱を開始する。


二人の意図に気づいたエミリアとハンナはドアノブに手をかける。



「今です!」


クリスティアナの合図で扉を開けた。



「『エクスプロージョン』!!」

「『フレイムブラスト』!!」


扉の外に向けて魔法が放たれる。


炎が飛び出し、凄まじい爆発が起きる。

それと同時に夥しい数の悲鳴があがった。




魔法が切れると再びエミリアが様子を伺う。


「ん、かなり減ってる。」

「この程度は造作もありませんわ。」

「えっへん。」


ナタリーとレイラが得意気に胸を張った。



「まだ居るけど、この数なら行けそう。やろうか。」

「おっけ。」


エミリアに続いて四人が突入する。






第三階層はフロア全体が広間になっていた。

そこに多種多様の魔物が跋扈し冒険者を待ち構えていた。


エミリア達は知らないが世間では『モンスターハウス』と呼ばれる場所だ。












突然エミリアの頭に何かが浮かんだ。


以前吸血姫と戦った時のように何か凄そうなことが出来そうな気がした。


徐に取り出したグリムリーパーを地面に突き刺す。



「ウガァァ!?」


エミリアに対峙していたトロールの足元から無数の刃が突き出た。

これは使える、とエミリアは再びグリムリーパーを突き刺す。

刃は足を貫く程度の長さしか出ないが動きを止めることは出来ていた。


衝撃波も悪くないがこの串刺しも良い。


串刺しを繰り返す内にトロールの足は穴だらけになり、立っていられなり転倒した。


「じゃあね。」


迫るトロールの両手をジャンプでかわし、グリムリーパーを脳天に突き刺した。


「アガ、ガッ……………!」


ビクンっと体が震え、やがて絶命した。





エミリアがトロールと戦っている間に大半の魔物が魔法やクロスボウによって悲惨な末路を迎えたようだ。


大物はこのトロールだけだったらしい。



トロールの体が鈍く光出すとやがて小さな石に変化した。


ダンジョンで倒した魔物はこのように魔石とよばれる物体に変化することがある。

魔石はそのままでは使えないが稀少なため高く売れる。

鍛冶屋でドワーフが、魔道具工房でエルフが特殊な工程で使うらしい。

因みに帝国の人型兵器の魔導人形にも使用される。


「お願いクリス。」

「えぇ。」


魔石はクリスティアナの空間魔法で回収する。




今回、クリスティアナは戦闘には参加しなかった。クリスティアナの聖魔法はどうやら普通の魔物にはあまり効果は無いらしい。


とはいえただ立っているだけではなく、不可視の障壁で四人の守りを固めることは忘れない。







「ねぇ、なんか光が見えない?」


次の階層への階段を探している最中にハンナが壁を指差す。


壁には人がギリギリ通れるくらいの隙間ができており、向こうは小部屋が見えた。




「行けそう?」

「やってみる。」


ハンナが体を横にして隙間に入ろうとした。


が、途中で引っ掛かったらしく進めなかった。



「ごめん、胸がひっかかって行けない。多分エミリアなら行けるんじゃない?」

「そっか……………そう…………。」


ハンナに悪気はない。

裏表のない彼女はただ真正面から物を言うだけだ。


だからエミリアの機嫌が急降下したことにも気づかない。

もげちまえばいい。



「私も行くっ。」


隙間の通り抜けは薄い胸のエミリアとレイラが敢行した。

二人でも割りとギリギリの狭さだ。

あの三人では入ってこれないだろう。




隙間を通り抜けた先の小部屋には幾つかの棚、そしてど真ん中にはこれ見よがしに宝箱が一つ置いてあった。


棚には使えそうなものはない。

目を引くのは宝箱。



「レイラ、ちょっと離れてて。」


ここまで罠に引っ掛かりまくったエミリアは最大限に警戒する。

ミミックが擬態しているわけではないようだ。

もしかしたら爆発するかもしれないし、宝箱から針が飛んでくるかもしれない。


あらゆる可能性を考慮して宝箱を開ける。





「熱っっっちゃい!!!」

「お姉ちゃん!?」


触れた瞬間、全く無警戒の感覚が襲い思わず跳び跳ねた。


宝箱が熱いなど誰が予想できるだろうか。


レイラの目の前で醜態を晒したエミリアは熱さをごまかすために棚に手を打ち付けた。

幸い火傷はしてないようだが。




「お姉ちゃん…………これ。」


レイラは小瓶を手にしていた。ハイポーションだった。

宝箱は開いている。


そういえばレイラは熱いのに強かった。

来てくれなかったらただ熱い思いして終わっただけだったろう。


「みゅっ。」


何となくレイラの頬っぺたに触れるとちょっぴりひんやりした。

ちょっと冷ましてから戻ろう。













小部屋から戻ると広間一体に氷山ができていた。


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