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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
玖 ―私の居場所―
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死神少女は芸術作品を作り出す

過激な残酷描写にご注意下さい

【ベルセイン帝国 魔の森】

ギルドマスターのフローラは選りすぐりの冒険者を引き連れて廃砦に来ていた。

あれだけの野盗が身を潜めそうな場所は魔の森が広いとはいえここしかないと判断した。


前線主義の彼女はこういった大捕物はすぐに出てくる。留守は彼女の愛弟子に任せてこうして出撃してきたのだ。


「御助力、感謝するよ。」

「アズマの人間として困っている者を見過ごすわけにはいきませんから。」


今回の騒動はアズマの巫女、桃江も村で戦闘に参加していた。

彼女の故郷では面倒事には積極的に協力するのが普通らしい。


「間違いなくお姉様はいますわ。」


勿論ナタリー達もいる。


「何故わかるのです?」

「妹ですから。」

「おぉ、流石姉妹。そういうのわかるものなんだねぇ。」


ハンナは一人っ子なのでナタリーの超理論を信じてしまったようだ。





冒険者達の戦闘準備も整い突入直前のことだった?


「ん?何の音?」


最初に気づいたのは耳の良いハンナ。


そしてこの世界ではあまり聞かない金属音に多数の悲鳴。


「仲間割れでも起こしたか?今が好機みたいだ、突入!!」


フローラの号令と共に冒険者達が廃砦に侵入した。













「あぐぁぁぁ……!!!」


私の通った跡は全部人間だったものが転がっている。


ノコギリの使い心地はそこそこ。

切れ味はあまり良くはないけど、ノコギリ部分を回転させれば刃が続けて出てくるし、当てるだけで簡単に肉を裂いてくれる。


今も私を襲ってきたグループを文字通り両断したところだ。



…………背中に張りつくグリムリーパーが使って欲しそうだけど、もうちょっとだけこれ使わせて。



「くそ!!俺はこんなところで死ぬつもりはないんだ!!こんなガキに………!!」


仲間を殺された男が何か言ってる。

殺しても良いんだけどこいつにも聞いておかないと。


「ねぇ、赤い髪の女の子知らない?」

「あん?あのうるさいガキならタケシが連れてきた奴だな。」


お、なんか知ってそう。


「タケシ?」

「親分の仲間の異界人だ。魔物を使役できる力を持ってる、俺達がここまで生きてこれたのもあいつのおかげだな。」


もう死ぬのがわかってるのか観念していろいろ喋ってくれてる。


「しかし、あんなガキの何が気になるんだ?とにかく泣いてうるせぇからよ、殴ったら簡単に黙っちまった。所詮はガキってことだな。」











あ?










「ぐふっ?!」


ノコギリが生えた箱部分でぶん殴った。



レイラを殴った?

私と違っていい子のレイラを殴った?



もういい。


ノコギリを腹に突き立て、回転させた。


「うごぉぉぉぉぉ!!」


うるさい、すぐに黙らせてやる。


ノコギリが完全に腹に入った。そのまま回転させ少しずつ上に動かす。


胸…………首……………頭……………抜けた。



悪い奴は殺さないと。


それよりもレイラ、裏口は…………多分あっちの方かな?














フローラ達が目にしたのは地獄だった。


村を襲撃した野盗の仲間であるのはわかったが、何れも頭や体の何処かが削られていた。


冒険者の中には長いことやってきている者もいるがこんな死体は見たことがないらしい。



ナタリー達は全部エミリアがやったのだとすぐにわかった。


「生き残ってる奴がいるかもしれないな、手分けして探すぞ。」













タケシはレイラを連れて砦の裏口に向かっていた。


殴られたレイラの腫れた部分を不器用に撫でたら少し大人しくなってくれた。

一緒に行くか聞いたら頷いてくれたので少しは心を開いてくれたのかもしれない。




あの男もあの男だ。

こんな幼い女の子を殴ることはないだろう。


砦に入り込んでいる死神とやらにざまぁでもされればいいのに。








「レイラ?」


タケシが裏口から出た直後、すぐ後ろに一人の少女が立っていた。

その格好は異常だった。


全身血塗れで背中に禍々しい気を放つ剣を背負う。

そして手にはこの世界にあるはずのないチェーンソー………しかもブレードが血に染まっていることから何人かを仕留めているのがわかった。


「お姉ちゃん!」


レイラはタケシの手を振りほどくとエミリアの元へと走っていった。



タケシは思い違いをしていた。


レイラは確かに魔物だ。

ただし人間と感性が大きく違うこと、別にタケシに心を開いたわけではない。

ただこの青年といれば傷つくことなく大好きなエミリアに会えると思い利用していたに過ぎなかったのだ。


何よりレイラは自分を操った人間をタケシだと気づいていた。




エミリアはレイラと少し抱き合うとすぐにタケシに視線を移した。


「レイラ、あいつなの?」

「うん。」


そのやり取りだけやってエミリアは近づいてくる。

手には起動状態のチェーンソーを持ったまま。


あの女の子が死神だ!


次の標的が自分だと分かるとタケシは砦の近くにいる魔物を呼び寄せた。

そしてレイラも再び使役しようとした。






が、魔法の効果が現れる前にレイラが突然光り出す。


幼い少女は光と共に姿を変えていく。



光が失くなるとそこには見上げるほどにの赤い巨体、異界の本でもよく見る強力な魔物の代名詞であるドラゴンが立っていた。


タケシによって集められた魔物は本来この森には現れない筈の絶対的な強者、フレイムドラゴンの姿を見て明らかに怯えていた。


ファング程度では束になっても敵わないような相手だ。その反応は当然だった。



「グァオオォォォォ!!」


フレイムドラゴンは群がるファングに向かって咆哮をあげた。


途端にファングは使役魔法にかかっているにも関わらず一目散に逃げ出した。


頼みの綱である魔物は離散した。

目の前にいるドラゴンは使役できそうにない、そしてその足元に立つ死神を倒すこともできない。



万策尽きたタケシは逃げ出した。











逃がさない。


背中のグリムリーパーをあいつに投げた。



「うぎゃあ!!」


うまいこと足に突き刺さってくれた。


もう立ち上がれないよね?タケシとかいう奴へ少しずつ距離を詰めていく。


這いつくばって逃げようとしてもだめ。

そもそもレイラをこんな場所に連れてきたのが悪いんだから。


「グルルゥ。」


レイラも怒ってるし、殺してもいいね。


背中を思い切り踏みつけてノコギリを動かす。




「死んで後悔して。」


ノコギリを振り降ろし背中を削っていく。


叫んでいるけどレイラの受けた痛みなんか非じゃないんだからね?

あんたなんか死んで当然なんだから。


ノコギリは回転しながら体を削り、反対側にたどり着いた。



うん、死んだ。





死体の上にノコギリを投げ捨てる。

もう用はないしね。


「レイラ、全部焼いて。」

「ガウッ。」


私の言う通り死体とノコギリを焼き尽くしていく。



あのノコギリは異界の道具、ここにあっちゃいけないやつ。


わかんないけどあーいうのは壊さなきゃいけない。そんな気がした。



「ふぅっ。」


疲れた………何人殺したかな。


「キュウゥゥ。」


レイラが頭を擦り付けてきた。

くすぐったいなぁ、心配してくれてるのかな。


あぁー、レイラの頭あったかい…………。


ちょっと………眠くなってきちゃった…………。




少しだけ………………寝かせて……………?



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