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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
玖 ―私の居場所―
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死神少女と元冒険者のボス

【ベルセイン帝国 魔の森 廃砦】

「何の騒ぎだ?」


元冒険者集団のリーダー、ダニエルは拠点内の異常に気づいたようだ。

何人もの場違いな悲鳴は彼のいる階にも聞こえていた。


「親分!助けてください!」

「一体何が起きてる?」

「ガキだっ、ガキが一人で皆殺しやがった!!」

「子供が?」


ダニエルには言っている意味がわからなかった。

子供がたった一人で殺している?

冒険者稼業から離れているとはいえそれなりの戦闘経験はあるはずだ。

それが子供一人に苦戦しているとなると…………


「あいつは普通じゃない、子供の皮を被った死神だ!」


報告に来た男は怯えている。

この短時間で大の大人をこんな状態に?

これはダニエル本人が何とかしなければ………相手が子供だと気は引けるが。


「俺が行こう。加減するわけにはいかないようだ。」









一階を探索している内にどんどん人が集まってきているみたい。

来てる奴等殺せばその内レイラの気配だけになるし、もうちょっと頑張ってみようかな。


次はこの部屋…………三人か。

並んでるならあれが使えるかな。


グリムリーパーを構えて………………思い切り振る!


衝撃波が扉と中にいる奴等を巻き込んでいく。

カッコいい技名考えようかな。


む、一人残ってる。

中に入って………!?


危ないっ。

こいつ槍持ちだ、こんな狭い部屋で槍を振り回さないで。

ほら、ひっかかった。こういう場所はナイフとかのが良いのに。


心臓…………いや、頭行こうか。それっ。


うん。グリムリーパーは簡単に貫通するね。

スカートで返り血を拭っておく。こんな時黒い服は便利。気を付けないとスカート斬れるから注意しないと。

いや、ハンカチみたいなのが良いのかな。こっちも買っておこうかな。


気配は感じないけど奥に部屋がある。

何かあるかな………倉庫?

一通り見てみたけどよくわかんないガラクタばかり。

もういい、次に行こう。


む?こっちに誰か来てる。



「お前が仲間を殺した子供か?」


凄い雰囲気の男………こいつがボス?


「お前の目的は知らないが、少し暴れすぎたな。俺が止めてやる。」


ボスがなんか良さげな剣を向けてくる。

うーんこういう奴と戦うなら狭い部屋は戦いにくい。でも扉は向こう側、あっち側に回り込みたいけど………。


強い殺気!

ボスの剣を何とか避ける。


「今のをよけるか、できるな!」


ボスがにたりと笑うけど気色悪い。

私もあれからうまく笑えてないけど。


続く斬擊をグリムリーパーて受け止める。


一撃が重い……………ずっと受け続けるのは良くないかも。

一回受けただけで腕が少し痺れてきた。グリムリーパーよりも先に私の腕がもたない。


ナイフを投げて牽制………うーんボスだけあって小細工は通じないか。

鎧も良いものを着てるし、意外と機敏に動いてる。


状況は不利、でも私はまだ死ぬつもりはない。


グリムリーパーを握る手に力を込めて………いけっ!



「うぉ!?」


ボスが衝撃波を防いでよろけた。

今っ。


頭…………いや、足を狙って斬りかかる。


「うぉぉぉ!!させるかぁ!!」


ボスが奮起してグリムリーパーが止められた。


「う゛っ!?」


お腹を蹴られ体勢が………これは………っ!?


「ショックウェーブ!!」


グリムリーパーを構える間もなく刃状の衝撃波が飛んでくる。


「きゃあ!!」













背中とお腹が痛い………あの衝撃波で奥の倉庫に飛ばされた。

扉ごと私を吹き飛ばしたみたい。


それよりもグリムリーパーがない。あの衝撃波で手放してしまった?

丸腰であんなのに敵うはずない。


倉庫の棚は倒れて物が乱雑になってしまっている。

グリムリーパーは元が黒いから薄暗いのもあって見分けがつかない。


ボスの足音が近づいてきた。

焦って私は思わず探り当てたものを構えた。


………これって………。











その瞬間私の中にある光景が浮かんだ。


それはこの子が使われている光景だった。




これは使える。そう確信できる。




頭のビジョンが消えるとボスが倉庫に入ってきた。


「剣はどうした?ノコギリでは戦えないぞ?」

「…………。」


無言で私は構える。

正直喋る余裕は無くなっている。でも私はこの子を信じてみる。


「第二ラウンドといこうか。」


ボスの剣に合わせて私も振り上げ、刃を受け止めた。

その瞬間、私は()()()()()














エミリアが持つノコギリ、異界では『チェーンソー』と呼ばれる物だ。


交わったブレード部分が機械により回転し始めた。



「なっ、なんだこれは?!」


まさかノコギリが回転するとは思わなかったのかダニエルの表情が変わった。

愛用の剣がノコギリによって削られていくのがわかりすぐに離れる。


ミスリル鋼でできた剣にひびができている。


チェーンソーの刃を回す音を威嚇代わりにエミリアがゆっくり迫る。


ダニエルが再び衝撃波を放とうと距離をとって構えた。



直後、エミリアが走って間合いを詰めた。


「しまっ」


その瞬間首にノコギリが当たりダニエルの意識は途切れた。











「はぁっ、はぁっ……。」


息が荒れる私の前には顔が削れたボスが倒れている。

これだけ苦戦した男がこんなに簡単に倒せると少し表紙抜けた。


このノコギリは強い。

でも…………返り血が凄い。


白かったブラウスがボスの血で赤くなってしまった。

顔にもかかって袖で拭ったから飛ばなかった部分も汚れた。


着替え、まだあったかな………







エミリアはレイラを探しにチェーンソーを回転させながら部屋の外へ出た。


その後ろを探し当てられなかったグリムリーパーがふよふよと漂って着いていく。

チェーンソーは人に向けて使う物ではありません。

くれぐれもエミリアの真似はしないでくださいね。

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