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死神少女はどこへ行く  作者: ハスク
玖 ―私の居場所―
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死神少女は魔物を駆逐する

【ベルセイン帝国 ブルム平原】

帝都を出ると辺り一面平原が広がる。

何もない、と言うわけではないがちょっとした丘や岩、木々が生えてるだけで他は平坦な地が続いていた。


この地は帝国の地上部隊や飛行騎士団の演習場所にもなっており、魔物が帝都に接近したら彼等が対処することになっていた。


とはいえ広大なブルム平原を軍がカバーできるわけではない。

幸いにも現れる魔物は駆け出し冒険者にも対処可能なレベルのため今のところ大きな被害は出ていない。



今飛んできたハーピィも強敵と戦ってきたエミリア達の敵ではなかった。


斬られ、焼かれ、凍らされ、撃ち落とされ全滅。

掠り傷一つの怪我も無かった。


冒険者であれば有用な素材だのなんだのをここで解体していくのだが彼女達は正式な冒険者ではない、ただの旅人だ。


ただ狩人のハンナはハーピィの足の爪に含まれる毒液を瓶に貯めていた。

ただキラービーの毒液の物とは別の瓶に入れている。


「同じ毒ではないのですか?」


クリスティアナは顔を背けていた。

長らく聖女として暮らしていた彼女は訪れる人々に加護を与えたり怪我人に回復魔法を施していた。

しかし未だにグロいのは苦手で気を抜くと嘔吐してしまいそうになる。


「賢い魔物は毒を薬草とかで治しちゃうんだ。キラービーの毒は強力すぎて症状がすぐ出るし。ハーピィの毒はじわじわ効いてくタイプだから相手によってはこっちの方がいいこともあるの。」

「すぐ殺すよりも徐々に殺すか………。」


エミリアの呟きにクリスティアナは顔をしかめた。

何かまたよからぬ事を思いついてしまうのではないのか。


「クリス、どうしたの?」

「あっ………いえ、何でもありません。」


首をかしげたがすぐにハンナの解体作業に目を向けた。


戦闘がなければただの少女。


戦闘となれば…………









【ベルセイン帝国 魔の森】

魔物を撃退しつつ一行は森に辿り着いた。


日は傾き始め夕方になりつつある。


魔物は夜に活発化する。暗くなる前に村には着きたいところだ。


先頭をハンナとエミリア、そして三人が続く。


索敵に優れる二人が先行して脅威を先制して排除する作戦だ。

またエミリアはある程度なら後方も探知できるため後ろを行く三人の危険も察知できる。


もっともクリスティアナが見えない障壁を展開しているためそうそう遅れを取ることはない。



「んー?何か聞こえない?」


まだエミリアの探知範囲にはそれらしい反応は無い。

ハンナの良すぎる耳が何かを聞き取ったようだ。


「どんな音?」

「これは………何かが戦ってる音?」



五人は顔を見合わせるとハンナが音を聞いた場所へ走り出した。












「いやぁ助かったよ。お嬢ちゃん達強いな、冒険者か何かかな?」


エミリア達がやってきた場所には複数の荷馬車を襲うゴブリン、そして応戦するがたいの良い男たち。

一目見て彼等は明らかに冒険者ではないことはわかった。汗だくの彼等は何れもシャツ一枚、もしくは上半身裸の者もいた。


エミリア達に頭を下げた大柄な男は厳つい顔をしつつ案外話しやすそうな印象だった。


散乱した木材を荷馬車に積み直すと再び礼を言った。


「おじさん達はリネに向かうの?」

「おう!向こうで仕事ができたからな!お嬢ちゃん達もか?」

「お姉様と里帰りですわ。」

「そりゃあ奇遇だな!おう、なんなら乗ってけ!歩きよりこっちのが楽だぜ?」


大柄な男は荷馬車の空いてるスペースを指差した。

確かにエミリア達五人くらいは乗れそうだが…………



「親方ぁ!俺たちが乗れませんよ!」


子分らしき男数人が抗議をすると、


「馬鹿野郎!!命の恩人様を森に置いてけるわけねぇだろうが!!お前らは体力作りも兼ねて走って着いてこい!!」

「へい!!申し訳ありません!!」


親方の怒鳴りに子分はすぐに引き下がった。


申し訳ない気もするが折角の厚意、クリスティアナの体力も気になっていたので乗せてもらうことにした。



エミリア達が乗ると荷馬車は発車、子分らしき男数人は言われた通り走ってついてきた。


荷馬車は木材だの石材だのが積まれているものの座れるスペースがうまいこと確保されていた。

親方も同じ荷馬車だ。


ふとエミリアは見慣れない物に気づく。


「おじさん、その箱は?」

「ん?あぁこれか。」


親方が見せたのは色のついた金属の箱に鋸のような刃が付いた物だ。


「異界から来た仲間が持ってた道具だ。魔物に喰われて死んじまってな、それ以来仕事場には必ず持ってきてるんだ。一緒に仕事してる気分になれるからな。」

「異界の道具………」

「まぁ俺たちには使い方がわからないんだがな。」


がははと親方は豪快に笑い飛ばす。


その間エミリアは箱をじっと見つめていた。

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