第78話 ミラーナさんにとって、私と一緒の王都帰還は失敗だった様ですw
「「エリカちゃ~ん、いらっしゃ~い♡」」
王宮に入るなり、声をハモらせてキャサリン様とロザンヌ様が駆け寄って来る。
「エリカお姉ちゃん、いらっしゃい♪」
少し遅れてフェルナンド様も駆けて来る。
「おい、お前等… アタシより先にエリカちゃんかよ!?」
不満気なミラーナさん。
妹達や弟の意識が自分より私に向いているのが気に入らないのかな?
「あら。私達、ミラーナ姉様とは半年毎に逢えますけど、エリカちゃんとは滅多に逢えないんですよ?」
「そうですわ! 私達、エリカちゃんと一緒に暮らしてるミラーナ姉様が羨ましいんですの!」
キャサリン様とロザンヌ様がミラーナさんに詰め寄りながら言い返す。
フェルナンド様は…
「エリカお姉ちゃん、新しいドレス? 似合ってるね。やっぱり可愛いなぁ♡」
ニコニコ笑顔で私の側から離れようとしない。
何だか罪悪感が…
「エリカちゃん… なんで…?」
「そうそう。なんでそんなに王女殿下や王子殿下達が懐いてんの?」
信じられないといった表情の2人。
そりゃそうか。
平民にとって王族は雲の上の存在だ。
その雲の上の存在の人々が、あたかも友人の様に私に接している。
普通は信じられないだろう。
「て言うか、確か表彰式って明後日よね?」
「ミラーナさんは当然としても、なんで私達まで王宮に居るんだろ…?」
そうか…
私はマインバーグ伯爵と一緒の馬車だったから聞いているが、別の馬車だった2人は聞いてないのか。
途中の街や宿場町でも伯爵から2人に説明は無かったし…
きっと伯爵は私に説明したから話が伝わってると思い、2人に説明しなかったんだろう。
私は私で、2人には伯爵から話が伝わってると思ってたし…
「私からもマインバーグ伯爵様からも2人に説明してませんでしたね。それは申し訳無かったです。今回の援軍で、特に功績の高かった人物… ミラーナさんを除いた私達3人の事なんですが、王宮に宿泊させて貰える事になったんです」
王宮に宿泊と聞いて固まる2人。
その気持ちは解る。
私も以前、同じ気持ちになった… 気がする。
違ったかな?
まぁ、どうでも良いか。
「積もる話もあるでしょうけど、まずは旅の疲れを癒して下さいね♪ 食事の前に、お風呂は如何かしら?」
げっ!?
王妃様!?
居ないと思ったら、風呂の用意してたのか?
軽快な足取りで近付いて来た王妃様は、ガシッと私を小脇に抱える。
なんなんだ、この力強さは!?
「さぁ♪ ミラーナ、キャサリン、ロザンヌ、フェルナンド、ローランド、行きますわよ♡ お連れの2人も、ご一緒にどうぞ♡」
そうして私は王宮の大浴場に連行… と言うより拉致される。
待てぇえええええええいっ!!!!
また私はオモチャにされるんかぁああああああああああいっ!!!!
────────────────
私は王宮の客室の一つでベッドに横たわっている。
いや、完全に脱力して倒れ込んでいると言った方が正しい。
ぷしゅぅうううう~…
そんな音が聞こえる様な感じで…
前回の王宮滞在でも経験した。
ロザミアでもミラーナさんで経験した。
寄って集って私の全身を洗う。
今回は、それに加えてミリアさんとモーリィさんも参加した。
しかも嬉々として。
抵抗なんか出来ない。
まだ幼いローランド様以外の7人が、好き放題に私の全身を洗うのだ。
抵抗なんて出来るワケがない。
何が楽しいのか解らないが、7人は嬉しそうに私の全身を洗うのだ。
これ、絶対にミラーナさん達3人はロザミアに帰ってから再現するだろ。
多分だが、アリアさんも加わる可能性は高い。
何で皆、私を風呂で洗いたがるんだよぉ…
…私も誰かを洗ったら理解出来るんだろうか?
ロザミアに帰ったら、アリアさんで試してみるか?
なんて考えてる内に、夕食の用意が出来たと侍女さんが呼びに来た。
私達と夕食の席を共にするのは国王一家。
ミリアさんとモーリィさんは、ガチガチに緊張している。
まだマシだよ?
私の時は国王一家に加え、50人程の貴族も列席してたんだから。
「ミリア殿、モーリィ殿。そんなに緊張しないで食事を楽しんでくれ。確かに余は国王であるが、貴殿達と同じく普通の人間なのだ。ただ、国王という立場なだけなのだよ」
国王陛下が臣民に慕われる理由。
それはきっと、この自らを特別な存在だと誇示しない謙虚な想いが国民に伝わっているからだろう。
その想いは王女らしからぬミラーナさんへと受け継がれているのは間違い無い。
ホント、王女様だと言われても信じられないからな、ミラーナさんは…
「なんか今、貶された気がしたんだけど…」
「気がしただけです。そんな事より、このサーモン美味しいですね♡」
誤魔化しつつ、私は食事を楽しむ。
「エリカちゃん、よく平気ね…」
「私、緊張し過ぎて味なんて分かんないよ…」
ミリアさんとモーリィさんは未だに緊張が解けないらしく、ガチガチのままだ。
私は前回の滞在で、すっかり慣れちゃったからなぁ…
「ミリアさんもモーリィさんも、しばらく滞在したら慣れますよ♪ 両陛下も子女の皆さんも、凄く優しいですから♪」
これで少しは緊張が解れたら良いんだけど…
「…そのワリにエリカちゃん、お風呂でオモチャにされてた様な…」
「…まぁ、私達も悪ノリしてオモチャにしてた気がするけど…」
頼むから忘れてくれ!
て言うか、忘れろっ!!!!
「エリカちゃん、どうしましたか?」
「何故、テーブルに突っ伏してらっしゃるの?」
キャサリン様にロザンヌ様、アンタ等2人と王妃様が原因だろ…
言えんけど…
もしかして、今回の滞在中も毎晩…
いや、考えるのは止めよう…
どうせ抵抗したって無駄なのだ。
こっちは私1人。
対する相手は7人掛かり。
どう足掻いても勝ち目は無い。
もう、好きにしてくれって感じだな…
諦めよう。
自動で全身を洗ってくれる機械だと思えば…
なんか違う気がするけど…
だが、せめてフェルナンド様には釘を刺しておかなければ!
「あの~… フェルナンド殿下に、お願いがあるんですけど…」
「何? 何? 僕に出来る事なら何でもするよ!」
いや、そんなに食い付かないで欲しいんだけど…
「フェルナンド殿下は6歳だから、まだ私や王女殿下達と一緒に入浴するのも大丈夫でしょうけど…」
「うん… そうだね… もう少ししたら、一緒に入るのはダメだよね…」
理解してはいるんだな。
「ですので、一緒に入れる今は私を洗うのを楽しむのも良いでしょう」
何が楽しいのかは解らんが。
できれば楽しまんで欲しいが。
「ですけど、せめて正面からは洗わないで下さい… もう少ししたら理解して貰えると思いますが、モロに正面から裸を見られるのは凄く恥ずかしいんで…」
「あ… そうだったんだ… て言うか、エリカお姉ちゃんも僕の裸を見てたんだね?」
「…皆さんから全身を洗われて、そんな余裕があると思いますか? 前から横から後ろから、寄って集って全身を… さっきなんて、合計14本の手が私の身体を…」
そう言う私の顔は、真っ赤になってるかも知れない。
「エリカちゃん、恥ずかしかったのかい? まぁ、フェルナンドに対しては恥ずかしいだろうけど、アタシ達に対しては平気だと思ってたよ」
そんなワケあるかいっ!
すぱぁあああああああんっ!!!!
「あ痛っ!」
「平気なワケ無いでしょうがっ! 何の抵抗も出来ずに全身を洗われて、恥ずかしくないワケ無いでしょうがっ!」
「だったら言ってくれよぉ…」
王宮の食堂に響くハリセンの音と、私とミラーナさんの掛け合い。
何故かキャサリン様やロザンヌ様を押し退け、私の隣に座ったのがミラーナさんのミス。
離れた席なら食らわなかったであろうハリセンを、モロに後頭部に食らったのだ。
一応は遠慮して、通常のハリセンを使用した。
さすがに『ミラーナ仕様ハリセン』で殴り飛ばすのはマズいだろうからな。
しかし、配膳を担当していたメイド達の目は点になり、国王陛下達も唖然としている。
微妙な空気。
あれ?
もしかしてヤバい事しちゃった?
だが、その空気を一変させたのは王妃様。
「あはははははは♪ さすがのミラーナも、エリカちゃんには形無しですわね♪ もしかして、ロザミアでも同様なのかしら? これはもう、詳しく話を聞かせて貰わないといけませんわ♪」
「ちょっ… 母上! そんな事されたらアタシの威厳… なんて捨てたけど… アタシの立場… は、単なるハンターで… とにかく、ロザミアでの話は… そのぉ… うわぁああああああっ!!!!」
悶絶するミラーナさん。
その後、ロザミアでのミラーナさんの話に花が咲き、話を聞いていたメイドさん達は勿論、王宮の使用人達からミラーナさんに対する畏怖の念は──ほぼ──消えたのだった。
日頃の行いって、大切なんだなぁ…




