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元自衛官が明治時代に遡行転生!なんか歴史が違うんですけど!?〜皇国陸軍戦記〜  作者: ELS
【第二部】

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【第三部】第39話.撹乱

明継の身体から、ふっと力が抜けた。


父親の腕に抱かれたまま、視界が傾いた。まだ遠くで銃声が続いているというのに、それは別の世界の出来事に思えた。


「父、さま……」


掠れた声で呼ぶと、父は小さく頷いた。


「今は休め」


そう言って、父は明継を地面にそっと下ろした。穂高は、足元に落ちていた回転式拳銃を拾い上げた。それはウナが明継に託した、彼の拳銃だ。縦に折りたたんで、中折れ式の弾倉を確認する。6つに分かれたそこには全て弾丸が詰まっていた。


「貴様ーッ!」


倒れていた黒服の男が、立ち上がり叫んだ。胸元から拳銃を取り出すと同時に引き金を引いた。刹那、彼の頬を掠めるように銃弾が飛ぶ。それを一瞥もせずに、穂高は再び拳銃の弾倉を戻した。


パン!パァン!!


男が叫びながら発砲する。しかしその弾丸は、穂高がわずかに振れると、空を切って砂塵の中に消えていった。ゆっくりと、穂高が歩いて近づく。一歩一歩、距離が詰まるにつれて黒服の男の顔が、恐怖に歪んでいく。


「は……馬鹿な……そ、そうだ!」


男は、銃身を倒れている明継に向けた。その瞬間、男の眉間の間にもう一つ空洞ができた。後ろ向きに倒れて動かなくなる。


それを見届けると、穂高は鋭い目で左右を見回した。散発的に発砲音、争う男たちの声が聞こえる。だが、それももう少しずつ薄れているように感じる。クレーンの爆破は驚いたが、ここ襲撃は規模としてはそんなに大規模なものではない。


「ルシヤめ、何を企んでいる。沖合の軍艦を動かすわけでもなく、ここに上陸してくる訳でもない。こいつらは何だ?」


一人呟く。砂煙の切れ目から向かってくる男に二発。心臓と頭蓋を撃ち抜いた。港を攻撃して、ここに保管されている資材、すなわち我々の補給を断つのが目的か?それにしては、兵が少なすぎる。この程度の戦力では、駐留している日本軍を押し除けて占領できるとは思えない。


地面に寝かされている明継とトリィに目を向ける。いくらか負傷はしているようだが、どれも軽いものだ。彼らを背に庇うように立つ。


「補給でも、港そのものでもない」


切れ切れに乾いた銃声が鳴る。


「撹乱か」


爆破、狙撃。少数精鋭の浸透。致命打にはならないが、混乱は確実に広がる。その時、短く鋭い笛の音が鳴った。合図だ。その瞬間、黒い影がいくつも動き、蜘蛛の子を散らすように港の外縁に散っていくのが見えた。


追撃しようとした日本兵が前に出るが、穂高は低く制した。


「追うな!」


兵は驚いて立ち止まる。


「罠だ、今は負傷者の回収を優先しろ。連中はもう、そうだ。もう目的を果たしている」


そう言うと、明継に視線を落とした。彼は地面に横たわり、浅い呼吸を繰り返している。血と煤にまみれた顔は幼いが、それでいて先まで確かに戦場に立っていた者の顔だった。


「よく生き残ったな」


穂高は、明継の額に手を当てる。


「父、さま……トリィは……?」


掠れた声が小さく響く。穂高は、トリィがいる方に視線を向ける。少し離れた場所に倒れているが、息はあった。


「大丈夫だ、二人とも生きている。生き残ったよ」


その言葉を聞いたのか、明継の表情が緩み力が完全に抜けた。穂高は彼を抱き上げた。明継の寝顔を見る父の表情には、生きていたと言う安心と、ここまで来てしまったという思いが複雑に絡み合っていた。

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