【第三部】第37話.爆破
銃声は今度は近い。それも単発ではなく、複数回。明継とトリィの脳裏には、先日の飛行場の襲撃がよぎる。
兵隊達の表情が変わった。それまでの雰囲気ではない、年長の兵隊が指示を飛ばすと、皆が緊張した面持ちで動き始めた。
「全員、無事か!異常事態だ……」
さらに港の方角からは大きな金属音がして、地面が揺れるほどの重く鈍い音が続けておきた。いくつかの悲鳴があがる。
「状況を確認!港の方角だ、応援に向かうぞ!」
「こいつらは、どうしますか!」
そう言うと、兵隊は明継を立ち上がらせた。ねじった腕が軋んで、眉間に皺がよる。
「拳銃所持では、村の子供とて捨て置くわけにはいかん。危険だが同行させて、ひとまず本隊まで連れていく!」
若い兵隊が、トリィと明継に近づいてきた。
「おい!今からお前達を連行する。緊急事態ゆえ、我々の指示に従い協力してくれたまえ。縄はかけぬが、決して逃げぬように」
兵隊の声は荒く焦りが見えた。銃声は断続的に続いている。家々の向こう、港の方角からは煙が上がっている。明継はトリィの顔を見る。彼女は黙って頷いた。
「良し、歩け!」
号令と共に、一団は歩き始めた。細い道に従って、蟻の行列のように。しかしその歩幅は大きく、明継は腕を引かれて走ることになった。しばらく歩き海が近づいてきた時、それは起こった。
ドン!
大きな音の衝撃が空気を震わせた。地面が僅かに揺れて、兵隊達の足が一瞬止まる。何か大きなものが動き出している。そんな予感がこの場にいる全員に伝わった。
「ああああー!!」
同時に大きな叫び声。集団の前方の方で何かが起こっている。明継とトリィは、そちらに目を向けるも、兵隊達の背中で何も見えない。その瞬間。
「前方注意ー!伏せろーーッ!!」
近くの兵隊に引っ掴まれて、明継とトリィは地面に押し倒されるように伏せさせられた。
「なっ、何が!?」
「伏せろ!」
明継が頭を上げようとすると、兵隊がそれを掴んで後頭部を押さえつけられる。地面に這いつくばったまま、目線を上げる。
大きな土煙が上がり、視界の隙間から何か巨大な影が揺れ動くのが見えた。ギギギィーっと不気味な金属が軋む音。港の荷役用の大きなクレーンの腕が、重力に抗えずにゆっくりと倒れかけていた。
「倒れるぞー!!退避ーっ!!」
兵隊が叫び、皆が散り散りに退避する。明継は反射的に身を起こして、トリィの手を取る。次の瞬間。
ガァァアンッ!!
クレーンの先端が建物の壁に衝突して、破片が四方に飛び散った。砂塵が渦巻き、兵隊達の怒号と、住民だろう者たちの混乱した悲鳴が飛び交った。
「クレーンが爆発したぞ!爆破だ!」
誰かが言った。土煙にまかれ、視界はゼロに近い。明継はトリィの手を引っ張って、近くまで這っていく。
「無事か!トリィ!」
「うん。明継は?」
「俺は大丈夫……」
言い終わる前に、またも銃声。ひゅっと風を切る音がして、石壁に火花が散った。
「敵襲だ、伏せろッ!!!」
怒鳴り声と共に、若い兵隊が二人の近くに駆け寄り身を屈めた。
「おい!貴様ら、死にたくなければ伏せていろ!」
兵隊はそう言いながら、片手にピストルを構えた。




