管理番号27番:貧血鬼 ②
「……あれ?」
「ああ、目覚めましたか?」
俺は目を覚ますと……いつものように部屋のベッドに眠っていた。
そして、傍らにはライナが座っていた。
「……俺、死んだのか」
「ええ、死亡しました」
「……なんで? なんか……血を吸われていたような……」
「覚えていましたか。そうです。全身血を吸血されて死亡しました」
ライナは淡々と説明する。全身の血……そう言われるとなんだかすごい恐怖を感じる。
「……そうか。いや……滅茶苦茶嫌な死に方だな」
「そうですね。ああ。申し訳ないのですが、管理番号28番と会ってくれますか?」
ライナは容赦なく俺にそう言う。俺は嫌だったが……まぁ、拒否権はないのだろう。
「……はいはい。点検行為、やりますよ」
「嫌、ですか? なんだか今回はとても不機嫌そうですが」
「そりゃあ……自分の全身の血を吸血した相手にもう一度会いたくないでしょ?」
俺がそう言うとライナは漸く理解したようだった。しかし、それは関係なく、そのまま俺とライナは部屋を出て、そのまま保管部屋に向かった。
そして、扉の前に立つ。
「……また、全身の血を抜かれるとか?」
「いえ、それはないと思います。おそらく」
かなり不安だったが……仕方ない。俺はそのまま部屋に入る。
「……ん?」
見ると、今度は……死体ではないようだった。なんだか酷く弱っているようだったが、人影が部屋の中央に見えた。
俺は恐る恐る近づいていく。部屋の中央にいたのは……少女だった。黒い服を着て、雪のような白い肌の少女。なんだかとても調子が悪そうである。
「あ……アナタは……昨日の……」
横になったままで少女は俺に話しかけてくる。俺は困惑してしまった。
「あ、ああ……えっと……アンタ、大丈夫か?」
「え……ええ。すいません。私は元々吸血鬼で……アナタの血で生き返ったのですが……私、その、燃費が悪いというか……吸った血液が一日で全部エネルギーとして使われちゃうんです……ですから、いつもちょっと貧血気味で……」
「え……それは……不便だな」
俺がそう言うと吸血鬼の少女は少し嬉しそうな顔をする。
「えっと……申し訳ないのですが、よろしければ今一度、アナタの血、吸わせてくれませんか?」
「え……あー……すまん。それは……」
俺がそう言うと少女は哀しそうに目を伏せた。
「そ、そうですか……まぁ、そうですよね……わかりました。では……また、今度……」
それが最期の言葉だったようだ。少女はまるでそのまま全てを使い果たしてしまったかのようで、そのままミイラ状態に戻ってしまった。
『管理番号1番。どうですか?』
「あ……えっと、元に戻った……かな?」
『そうですか。では、点検行為は終了です。それとも、今一度吸血されますか?』
「はぁ? お前なぁ。もう、当分は遠慮するよ」
俺はそう言って、部屋の中央で倒れているミイラ状態の管理番号28番を今一度見てから、そのまま部屋を出ていったのだった。
点検結果:管理者報告
管理番号28番の危険度判定:軽度
理由:基本的に吸血をしなければミイラ状態の遺体として存在しているだけである。このままの状態で保管するのが適切であると考える。管理番号1番が「定期的に血液を与えてはどうか」と言っていたが、成人男性一人分の血液を用意するのは容易では無いので、この申請は現状却下する。




