管理番号19番:騎士の指南 ①
管理番号19番・簡易名称:騎士の指南
概要:管理番号19番は二本の剣と、一つの鎧です。両者は銀色で、その外見からかなりの年代物であることがわかります。(以下管理番号19番の剣を19x、鎧を19yとします)
管理番号19番は対象者が管理番号19xに触れると特異性を発揮します。19yの中は空洞となっていますが、19xに対象者が触れると同時に活動を開始します。
19yはもう一本の19xを使用し、19xを持った対象者に襲い掛かってきます。その際に19yは会話を用いて対象者を「指導」します。「指導」が開始されると対象者は19yの弟子として認識され、対象者が19yの襲撃によって死亡するまで「指導」は続きます。
現状、19yの攻撃によって生存した対象者がいません。不死の能力を持つ管理番号1番によって、管理番号19番の真の特異性を解明して下さい。
「今回は……これなの?」
俺は思わずそう呟いてしまった。
『ええ。目の前にあるのが危険存在です』
ライナは耳元でそう言う。
俺の目の前にあるのは……鎧だった。銀色の鎧と、二本の剣。
鎧は随分と年代物のようである。中身はもちろん空っぽだ。
剣も同様に結構使い込んであるもののようだ。
「……これをどうするっていうのさ?」
『それではまず剣の一本を手に取って下さい』
ライナは大したことはないという感じでそう言う。俺はいつも通り嫌な予感がしたが……言われるままにとりあえず剣を手に取った。
その瞬間だった。
「……よくぞ来た、少年」
「へ?」
と、いきなりどこからか声が聞こえてきた。ライナ……のものではない。もっとしわがれた……老人のような声だった。
「フッ。恐れるな。貴様の目の前だ」
「え……目の前って……え?」
と、俺が動揺していると、鎧がいきなり立ち上がった。
中身は空っぽのはずなのに……鎧の奥からは何か光るような気配すらある。
「え……な、なんで立ち上がって……」
「たわけ者。ワシを何だと思っている?」
「え……な、何って……鎧?」
すると、鎧はもう一本の剣を持ち、俺に対してその剣を突き出す。
「ワシは、騎士だ。誇り高い騎士だ」
「……はぁ」
鎧は随分と自信たっぷりにそういう。まぁ、本人がそういうなら、そうなんだろうけど……
「さぁ、さっそく始めるぞ」
「へ? 何を?」
俺がそう言う間にも、鎧はいきなり剣を構える。
「鍛錬に……決まっておるだろうが!」
そういって、いきなり鎧は剣を振り下ろしてきた。俺は慌ててそれを避ける。
「……なぜ、避ける!?」
鎧は怒っているようで俺のことを叱責するようにそう言ってきた。
「あ、当たり前でしょ……危ないなぁ」
「貴様……騎士を侮辱するか!? 剣を取った以上戦う意思を表明したのではないのか!?」
そういって、鎧は俺の方に突進してくる。俺は慌ててそれを避けようとした……だが……
「え?」
身体が……動かない。まるで身体が動くのを拒否しているようだ。
「よし! 逃げるのはやめたか! 結構! では……この剣を受けきって見せよ!」
「あ! ちょ、ちょっと待って!」
俺が剣を構える間もなく、鎧は剣を振り下ろした……結局、俺は剣を受け切ることもできず……そのまま剣は俺の脳天に突き刺さった。
「あ……」
意識が遠のくのがわかる……何度か経験したことのある感覚。
こうして俺は、謎の鎧に「鍛錬」の最中に殺されてしまったのだった。




