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第百十三話

平成最後の投稿








「それで戦果報告はどうなっている?」


 1日が終わり、闇夜となっている2000過ぎ、サイパン島沖合いに進出を急がせている将和以下の第一艦隊はサイパン島南南東約300キロの海域にいた。


「はっ、ヤップの一航艦と第一機動艦隊からの報告を纏めますと……大型空母8、軽空母8を撃沈した模様です」


 報告書を見ながら松田少将はそう報告をする。両艦隊は一連の航空攻撃で米第五艦隊を攻撃、正規空母8(フランクリン ランドルフ バンカー・ヒル ハンコック ベニントン ボクサー エンタープライズ2 アンティータム)と軽空母8(インディペンデンス ベロー・ウッド カウペンス モンテレー ラングレー2 カボット バターン サン・ジャシント)を撃沈し残るは正規空母5隻だった。

 勿論、山口は現状では満足せずに機体を収容後に艦隊を前進させ第五艦隊へ向かわせている。


「後は……」

「サイパンに上陸した輸送船団を叩くだけです」


 宇垣はそう主張する。勿論将和も頷いている。


「その通りだ。艦隊はこのままサイパンを目指す」

「了解です」


 第一艦隊は対潜警戒をしつつサイパン島沖へ目指す。勿論、その様子を一隻の潜水艦が目撃していた。それはテンチ級潜水艦のトースクであった。


「間違いない……バトルシップヤマトだ……それにナガトやムツもいやがる!?」


 トースクは発見されるのを覚悟して敵艦隊接近を伝える。その電波は第一艦隊も受信して直ちに対潜戦闘が発令された。


「アクティブソナーです!?」


 聴音手が叫ぶ、洋上で一式ソナーを駆逐艦長波が使用したからだ。トースクの図上を長波が14ノットの速度で通過した。勿論、置き土産として一式爆雷が投棄される。


「爆雷……来る!?」


 聴音手はイヤホンを投げた。その瞬間、トースクの真上と左右、真下で次々と爆雷が爆発していく。


「修理急げェ!!」


 艦内のあちこちから漏水が発生、乗員が修理に取り掛かるがトースクは追い討ちをかけるように更に接近してきた駆逐艦早霜の爆雷攻撃により圧壊、撃沈されるのであった。


「発見されましたな……」

「遅かれ早かれは気付かれる。このまま行くぞ、南雲の艦隊はまだ発見されてないな?」

「報告は来てませんのでまだでしょう」

「ならば良い」


 第一艦隊は突き進むのである。その一方で第五艦隊はトースクから最期の電文を受信した。


「バトルシップヤマトだと!?」

「狙いは確実にサイパン島沖の上陸船団だ!!」

「直ちに攻撃隊を……」

「それではミヨシの機動艦隊を無視する気か!!」


 インディアナポリスの作戦室で参謀達は口々に吠えるがスプルーアンスは冷静だった。


「静まれェ!!」


 スプルーアンスの怒号にシンと静まり返る作戦室。そしてスプルーアンスは制帽を被り立ち上がる。


「第七機動群のオルデンドルフに連絡!! 貴官は戦艦部隊を率いてヤマトの艦隊へ前進、艦隊決戦を挑み上陸船団が退避する時間を稼ぐのだ!!」

「イエッサー!!」

「空母部隊もサイパン島の北北東方面に退避して態勢を建て直す!! 諸君、まだ戦いは終わってないぞ!!」

『サーイエッサー!!』


 そして第五艦隊の方針は決まった。上陸船団の護衛にはターナー中将の第51任務部隊が引き続きサイパン島沖にて待機して上陸船団の撤収を援護する。そしてオルデンドルフは戦艦モンタナの艦橋で冷や汗をかいていた。


「……やはり来るか」


 彼は武蔵との死闘を経験しており大和型の性能は分かっていた。


(戦艦部隊の戦力が回復してからでも良かったのだが……現実は酷というものか)


 オルデンドルフとしては後二隻程度のモンタナ級は欲しかったが無い物ねだりをしては仕方ない。


「だがやるしかあるまい。第七機動群は前進、敵艦隊との艦隊決戦を挑む!!」


 斯くして将和の第一艦隊とオルデンドルフの第七機動群はサイパン島南南西約250キロ付近の海域にて激突する事になる。

 先行していた甲巡八雲の32号対水上電探(探知60キロ 出力10Kw)がオルデンドルフの第七機動群を探知したのは0300頃であった。


「長官」

「待ち構えているのは想定済みだな。八雲の部隊は直ちに退避して我々と合流するよう伝えろ」

「はっ」


 オルデンドルフの第七機動群も八雲の部隊を探知しており退避している事に気付いた。


「このまま行こう。そこにヤマトがいる」


 両艦隊が会敵したのは0430頃だった。


「「左(右)砲戦、用意!!」」


 両艦隊は反航戦を展開、互いに砲身を向け合う。


「左艦首に米艦隊!!」

「距離650!!」

「………」


 見張り員からの報告に将和は何も言わない。何かを待っていたのだ。そして距離が500に近づいた時、通信兵が駆け込んできた。


「に、二艦隊より電文!!」

「読め!!」

「『我、サイパン島沖ニ突入セリ。トラ・トラ・トラ』です!!」

「やったか南雲……」


 報告を聞いた将和はニヤリと笑う。オルデンドルフも電文を聞いて愕然としていた。


「そんな馬鹿な!? 奴等、どんな魔法を使ったのだ!!」


 第51任務部隊からの悲痛な電文をグシャリと握り潰すオルデンドルフ。簡単な事だった、南雲中将の第二艦隊はヤップ島付近から大きく円を書きながらサイパン島の南方から高速で侵入、空母部隊と第七機動群が抜けた穴を潜り抜けて第51任務部隊の前面に現れる事に成功したのだ。


「踏み潰せ」


 二艦隊旗艦薩摩の艦橋で南雲はニヤリと笑いながら僅かにそう発した。そしてその命令を受け取り、精鋭の水雷戦隊は突撃を開始する。


「上陸船団を守れ!!」


 第51任務部隊は砲撃を開始するが薩摩・岩代の戦艦がいる二艦隊に勝ち目はなかった。ターナー中将は岩代からの砲撃で旗艦ロッキー・マウントごと海底に引き摺り込まれた。

 第51任務部隊が壊滅したのは二艦隊と接触してから43分後だった。この時点で第51任務部隊は護衛空母19隻、軽巡8隻、護衛駆逐艦23隻を撃沈されていた。

 二艦隊はサイパン島沖に停泊していた上陸船団を壊滅させるのはまだ少し先の話である。


「司令……」

「……このままヤマトと当たる。今引けばヤマトの艦隊をも合流させてしまう。上陸船団には空母部隊に賭けるしかない!!」


 オルデンドルフはスプルーアンスに打電をするのである。そして両艦隊は激突する。


「距離450!!」

「……420まで近づくか。観測機は?」

「上空にて待機中です」

「対空砲火にやられんようにしとけ」


 将和はこの戦いで観測機を9機、水偵10機を発艦させて万全の状態にさせていた。無論、第七機動群も水偵を出して上空を飛行している。


「……あぁ、そうだ。通信」

「はッ!!」

「最大出力で構わんから全方位に打電しろ。内容はーーー」

「は……はいッ!!」


 将和の命令を聞いた通信参謀は涙を流しながら通信室へ自ら駆けていく。

 そして旗艦大和から最大出力で電文が発せられ、横須賀のGF司令部では航空参謀の淵田大佐らと協議していた堀長官の元に届けられた。


「旗艦大和より発信!! マリアナ沖仮称456地点において『敵艦隊見ユトノ警報ニ接シ我ガ第一・第二艦隊ハ直チニ突撃、コレヲ撃滅セントス。本日天気晴朗ナレドモ浪高シ』以上です!!」

「三好長官……」


 大和からの電文に全てを察した堀長官であった。




「距離420!!」

「左舷砲撃準備良ろし!!」


 宇垣が将和に報告をすると将和は頷いた。


「機関最大」

「は?」

「全艦機関最大戦速だ!!」

「は、はい!! 全艦機関最大戦速!!」

「長官……?」

「………」


 怪しむ宇垣らを他所に将和は右手を真上にあげた。


(長官……行きます!!)


 そして左に振り下ろした。その瞬間、宇垣は叫んだ。


「とぉーりかぁーじ、一杯!!」

『とぉーりかぁーじ、一杯!!』


 大和は命令された海域で取舵を選択、後方に続く出雲・長門・陸奥も大和が取舵をした同一地点に来るとよく訓練されたダンサー達のような正確さで取舵をする。

 一艦隊が取舵をした事に気付いたオルデンドルフは即座に叫んだ。


「オーマイガ!? バトルシップヤマトにアドミラル・ミヨシが乗っている!?」





「全艦撃ちぃ方始めェ!!」

「撃ちぃ方始めェ!!」


 戦艦群の取舵を終えた一艦隊は砲撃を開始。大和の50口径46サンチ砲が唸りを上げるのであった。







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[一言] 宇宙戦艦ヤマトの沖田戦法だな。
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