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【第19話】 夢の中の絶望と安堵

私は夢の中にいた。小説の中のジェニエットとして、ただの傍観者になったような不思議な感覚――意思はあるのに身体はなく、まるで映画を見ているかのようだった。


目の前の光景は、あまりにも恐ろしく、胸が締めつけられる。


ジェニエットは物語通り、アルフォンス王子と恋に落ち、秘密の逢瀬を重ねていた。だが、それをグラヴィスの部下が目撃し、報告してしまう。


傷ついたグラヴィスの瞳に、胸が痛む。

部下に命じ、アルフォンス王子を暗殺させようとするが失敗。捕らえられた部下は拷問の末に自白し、ついにはグラヴィスが“大罪を犯した者”として捕らえられてしまう――。


(嫌!グラヴィスが……!)


首を跳ねられるその瞬間――私は涙をこぼしながら、息を詰めて目を覚ました。



---


目の前には、心配そうに私を見つめるグラヴィスの顔。

「どうしたのですか? 傷が痛みますか? それとも怖い夢でも?」


(夢……だった。よかった……!)


私は思わず彼の首に抱きつき、声を震わせながら言った。

「なんでもありません……。貴方がそばにいて、幸せすぎて……!」


グラヴィスは優しく私の頭を撫で、額にそっとキスを落とす。

「可愛い人だ……。私はずっとジェニエットのそばにいます。ほら、泣き止んでください。貴方が泣くと胸が痛みます」


彼の掌の温もりに、心の奥まで甘く痺れる。

夢の絶望と現実の安堵が交錯し、涙は温かさと喜びに変わった。


そして少し真剣な表情で、彼は私に問いかける。

「……ジェニエット。貴方を疑ってなどおりません。しかし、気になることがあります。答えてもらえますか?」


私は顔を上げ、力強くうなずいた。


「先日、私の部下があなたとアルフォンス王子が庭園にいるところを見たと報告を受けました。その時の様子が、ただ事ではなかったと……。いったい、何があったのですか?」


(やっぱり知っていたのね! 誤解がなくてよかった……)


私はあの日の顛末を、ありのままに話した。

夢で感じた絶望と恐怖、そして現実で抱きしめられた温もり――そのすべてを胸に刻みながら。



---



夢の中で絶望した瞬間、改めて現実の幸せをかみしめることができました。

今日は18時にもう1話投稿予定です!お楽しみに✨

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