三十七話『着いたーーー!』
お久しぶりです。平日は実習やら、レポートやらで忙しく、休日はバイトPUBGやってました作者です。
XboxでやるPUBGも良いですが、やはりPUBGはPCでプレイしてみたいです。とはいえ、手持ちのNPCではスペックが足りないし、ゲーミングPCは高すぎるしでなかなかPCでやるのは難しい。
「着いたーーー!」
馬車から飛び降り、手を天高く上げググっと背伸びをするルナ。
王都を立ってから数週間、あれ以降アルを狙った襲撃は無く無事にティシュトルまでたどり着く事が出来た。それが返って不気味ではあるが、セロの送った知らせにより、王都の方で片を付けたのかもしれない。
「しっかし、こう長旅だと良い馬車でも、流石に腰に来ますね」
すっかりと凝り固まった腰をほぐしながら、俺はそう呟いた。
我ながら、この貧弱体質も筋金入りだと思う。貧弱なのに筋金入りってのも矛盾してるけど。
「よろしければ、私が負ぶって差し上げましょうか? なんでしたら、お姫様抱っこでも」
「いえ、自分で歩けますので大丈夫です」
「お待ちしておりましたライラット御一行様」
馬車を降りてすぐ、初老の男性が俺達を出迎えてくれる。ティシュトルの正装なのか、黒い漢服のような着物を着ていた。
「こちらで宿泊施設をご用意させて頂いておりますので、そちらまで案内させていただきます」
男性の案内で街中を歩く。ここがティシュトルの首都かと思いながら街並みをじっくりと観察する。ライラットとはまた随分と違っており、予想していた以上に工業が盛んのようだった。
街のあちこちに工房らしき建物があり、至る所からもくもくと煙が昇っており、金属を叩く音や木を削る音が聞こえてくる。店先には、鉄板や木材などの資材が山積みされている。
「これだけ工房が揃っているのに、武器は殆ど見かけませんね」
「そうですね」
ライラットで工房を見かければ十中八九武器を作っているが、ティシュトルでは逆に武器を作っている工房は殆どなく、大半は一見しただけでは何に使うかよくわからないような道具を店先に並べていた。
あれが噂に聞いた魔道具だろう。後で誰か誘ってじっくりと見に行きたいものだ。
「こちらになります」
男性に案内されて歩くこと十数分、熱気あふれる工房だらけの街中を抜けて大会の間世話になる宿へと到着した。
城かと思うような立派な宿泊施設。ここに無料で泊まれるというのだから、ティシュトルは随分と太っ腹だ。
「一人一部屋となっております、食事、娯楽施設等もありまして、そちらもすべて無料でのご利用が可能です。ただし、この施設内はすべて無料ですが、街に観光に行く際はティシュトルの通貨が必要となりますので、両替所等で各自資金の調達をお願いいたします。それから最後に、ほかの国からの参加者らもこの施設に宿泊されますので、くれぐれも揉め事だけはお控えするようお願いいたします」
男性はそう説明しながら、ルームキーを俺達一人一人に配布していく。サーシャの言った通り本当になにからなにまで面倒を見てくれるらしい。
鍵を受け取った俺達は各々自分の部屋に行き、荷物を整理する……といっても、俺の荷物は殆どが魔獣の素材。戦う為に必要な武器や防具の手入れもなく、部屋の隅にまとめて置いておくだけなのですぐに終わる。
だからといって、時間を持て余すなんてことはない。むしろ足りないくらいだ。
「ここまで来るのに一体何話使ったことか、ようやく目的に指がかかりました」
まずは魔獣の素材を売って金に換えなければならない。次に魔道具について教えてくれそうな人物を探す、もしくは魔道具についての書物を手に入れる事が出来るのであれば手に入れる。後は時間が許す限り勉学に勤しむ。
「失礼します、ユウリ様」
「サーシャ先輩、丁度よかった。これから街に出かけようかと思うのですが、手伝ってもらえま」「よろこんで!!」
軽い気持ちで誘ったつもりだったが、嬉しそうに笑みを浮かべて食い気味に答えるサーシャ。
別にデートのお誘いというわけじゃないのだがと、内心苦笑する。
「ほかの皆は何をしてます?」
「アル王子はセロ殿と共にティシュトルの王へと挨拶に伺ったようですが、他の皆は自室で休んでおられます」
「まぁ、長旅での疲れも溜まっていますでしょうし、二人で行きますか」
「ええ、まずどちらへ行かれますか?」
「宝石店へ」
◇◆◇◆
探すのに苦労するかと思ったが、この街では宝石の需要が高いのか宝石店は数多く存在していた。その中から一番大きな宝石店を選んで中へと入る。
「いらしゃいませ」
「どうも、こんにちは」
子供二人の来店にも、店主はいぶかしむ事無く笑顔で接客してくれる。ティシュトルでは宝石を買いに来る子供は珍しくないのか、はたまた貴族の子供と思ったのだろうかは分からないが、門前払いはされずに済みそうで内心少しほっとする。
「魔石をお買い求めですよね? 規格はどれです? 二型? 三型?」
どうやら前者らしい。なるほど魔導具が広く流通しているティシュトルでは、魔導具の動力源である魔石を買うために、子供がお使いで宝石店に来る事は珍しい事ではないらしい。
店主もそういった子供の一人だと思ったのだろう、どんな魔石が必要なのか色々と質問してくる。
「え? いや、えぇっと……魔石を買いに来たわけではなく、買い取って欲しいものがあって持って来たんです」
当然、魔導具どころか魔石についての知識も殆ど無いため、いきなり規格や型の事を聞かれて少し戸惑うも、一度咳払いをして気を取り直し、来店した目的を店主に伝える。
「ん? それじゃあ何の用事かな?」
「実は買い取って欲しいものがあるんですよ」
俺はそう言いながら、クリスタルホースの角が入った袋をテーブルの上に置く。
「買い取りですか……こ、これは」
袋の中身を見て目の色を変える店主。予想していた通り、魔獣の素材はこのティシュトルに置いては非常に希少価値が高いものらしい。
「クリスタルホースの角です。それをこれだけ売りたいのですが」
相場も軽く倍は行くだろうと、皮算用しながら店主にそう言う。
「おぉ……なるほど、どれも傷のない良質なものばかり、これだけのものを見るのは初めてだ。これだけのものになりますと、一本でも金貨五十枚はくだらない。それが四本となると、最低でも金貨二百枚はするでしょう」
「にひゃっ……」
二百と聞いて驚きのあまり言葉に詰まる。ライラットの相場と比べて五倍も高い。為替レートがどれくらいか分からないので、単純に五倍なのかはわからないが、ティシュトルに置いても金貨二百枚というのが大金という事は間違いないだろう。
「先輩先輩、ライラットとティシュトルの通貨って」
「十対七くらいと聞いてます」
となれば、ティシュトルの金貨二百枚はライラットだと大体二百八十枚程度、一本当たりの相場はライラットの七倍にまで及ぶ。
「えっと、確かに珍しいかもしれませんが、些か高すぎませんか?」
「魔獣の素材は魔導具の素材にうってつけなのです。ですが、ティシュトルに魔獣は生息しておらず、素材の入手は非常に困難ですから」
需要の割に供給が少なすぎるということか。確かに、そうなれば大金を出してでも欲しいという人は少なからず居るだろうから、価値が上がるのも当然といえば当然か。
「なるほど、そういう理由で……でしたら」
買うとなったら困りものだが、売るとなれば話は別だ。需要が高いという事は買い手には困らない。
「ですが申し訳ございませんが、うちでの買取はできません」
もはや商談は成立したも同然……そう思いながら話を進めようとした矢先、店主は角の入った袋を返しながらそう言った。
「え? ど、どうしてです?」
すっかりと売るつもりで居た俺は、店主の言葉に驚く。
「買い取るだけの資金がないのです。宝石店といっても、魔石を売って稼ぐのが主ですから」
「あぁ、なるほど……でしたらこうしませんか? これらすべて、相場の半額で買い取ってください。かわりに、残りの代金で魔導具の技師を紹介していただけませんか?」
「半額……ちなみに、技師にはどんな用事で?」
半額と聞き、生唾を飲み込む店主。しかし、すぐには乗ってこず、こちらの意図を探って来る。
「魔導具について知りたいのです。なにからなにまで」
「魔導具の心臓部は国家機密です。国外の者には教えることができません。それでも良いというのであれば、腕の良い技師を紹介しましょう」
それを知らなければどうしようもない気がするのだが、それについてはまた別の手を考えるとしよう。心臓部以外の構造を知れるだけでも十分だ。
「わかりました。それで良いです」
その後、少しばかり打ち合わせをして店を出る。
「ふー、ただ売りに来ただけなのに、意外と疲れますね」
「あれでよろしかったのですか?」
「なにがですか?」
「いくら時間がないとはいえ、いささか譲歩しすぎではないかと思いまして」
「そうですね。ですが、相場の二倍程度で売れるだろうと思って計画を立てていました。それが七倍で売れましたからね。半額でも十分ですし、残りのお金で技師まで紹介してくれるというんですから、むしろ儲けものです」
「そうですか。申し訳ございません、差し出がましい事を」
「いえ、サーシャ先輩の言い分も最もです」
金儲けが目的ではないので、損得は正直どうでもいい。
「さて、たしかアナハイムという店で自分の名前を出せば良いとの事でしたが、アナハイムってどこにあるんでしょうね」
しかし、この店の名前だと魔導具というよりは、巨大ロボットを開発している方が似合う。
「看板になんと書いているか分かれば良いのですが、私にはティシュトルの文字は全くでして……申し訳ございません」
言葉は多少イントネーションの違いや、訛りの癖で時折何と言っているか分からない事もあるが、コミュニケーションが取れない程ではない。しかし、文字はライラットとは違っており、多少通じる部分はあるが、基本的にはなんと書いてあるかはさっぱりだ。
「いや、僕も読めませんから仕方ないですよ……まぁ、誰かに聞いて探すしかないですね」
そう言って、何人かにアナハイムという店について尋ねてみたが、誰もアナハイムという店は知らず、宝石商に場所の地図でも書いてもらえば良かったなという後悔と、誰も知らないようなマイナーな所で大丈夫なのかという不安を感じながらも、道行く人に道を聞きまわること一時間。どうにかアナハイムを見つけることが出来たので、気を取り直して店の中に入る。
「ごめんくださーい」
「いらっしゃい。今ちょっと手が離せないから、勝手に見ててくれ」
店に入るが、誰の姿も見当たらず、代わりに奥から声が聞こえてくる。
良いのだろうか? 店番が誰も居ないと盗まれ放題な気がする。
「ふむ、一口に魔導具と言っても色々とあるのか」
店に置かれている魔導具を見ながら小さく呟くサーシャ。
「まぁ、殆どが何に使うか分かりませんけどね」
平たい箱のような形をした金属板に、足に着ける鎧のようなものに小さなボードのようなものがついている物。
「これは魔法を撃ちだす杖ですかね」
そう言いながらサーシャが手に取ったのは、杖というよりも銃に近い代物だった。
銃床のような幅の広いやや湾曲した持ち手、弾倉を入れるところはあるが、排莢口は見当たらない。それどころか、薬室もなく、銃身を模して伸びている先端には、複雑な模様が掘られた銀板がはめ込まれている。
形こそ銃に見えるものの、本当に形だけで全くの別物と言ってもいい。それこそ、サーシャの言った通り魔法を撃ちだす道具というわけだ。
打てる魔法は一種類だろうが、引き金を引くだけで魔法が打てるというのは非常に画期的だろう。同時に、もし仮に戦争で相手する事になったらと思うとゾッとする。相手が全員詠唱破棄を使ってくるようなものなのだ。それをこうして一般市民でも容易に手に入れられるという事は、軍用はもっと性能が良いのだろうか。
「なにか気になるものでもあったかい僕?」
手に取ってまじまじと眺めていると、背後から店員らしき男性がそう声をかけてくる。
「ええ、色々と……ところで、ここはアナハイムという店で合っていますか?」
「ああ、合ってるよ、ここはアナハイムで、俺は魔導技師のアナハイム」
「魔導具について教えて欲しいのですが、宝石商のビストさんにここで自分の名前を出せと紹介されまして」
そう言って、俺は宝石商に書いてもらった紹介状を手渡す。
「あのオッサンか……なるほど、わかった。で、何から教えようか? 学校でもある程度は教わってると思うけど」
紹介状に目を通し、小さく溜息を付くとそれをそのままポケットに仕舞い込み、俺達にそう聞いてくる。
「あー、いえ、僕らはライラットから来たので、魔導具について何も知らないんです」
「ライラットから? なるほど随分と遠くからわざわざ……そうだな、じゃあとりあえず魔導具とはなにか、そこから教えていこう。一口に魔導具と言っても、見ての通り色々とあるだろ?」
そう言って平たい箱のような金属板を指さしてそう尋ねるアナハイム。
「それは料理するときに使うもので、ここに魔石を入れる事でお手軽に火を起こせる」
「それは便利ですね」
カセットコンロみたいなものか。
「ではこれは?」
銃のような形の杖を手に取りそう尋ねるサーシャ。
「それは魔導砲だ、この国の兵隊はみんな持っているもので、引き金を引けば先端に埋め込まれた魔法陣に対応した魔法が使えるってもんだ。これは自衛用だから、初級魔法しか使えないけど」
「剣や槍と違って、随分と複雑そうだな」
「そうでもないさ。魔導具にはいろいろと種類はあるけど、構造自体は単純なんだ。魔石に貯めてある魔力を使い、魔法陣に魔力を流して魔法を発現させる。構造も単純で、魔導技師が魔法陣を刻んだ銀板を銀線で魔石と繋げているだけ。あとはスイッチで入れ切れが出来るように、すこし工夫してるだけで、なにも難しい事はない。こっちに付いて来てくれ」
そう言いながらアナハイムは店の奥を指す。
「銀を使うのは、なぜです?」
彼の後を付いて行きながら、俺は疑問に思ったことを尋ねる。
「魔力の伝導率が高いからだよ。本当はミスリルが良いんだけどミスリルは高いからね……まぁ、銀も高いんだけど、ミスリルよりは値は張らないから……ここが工房だ、少し散らかってるけど」
「これが……少し?」
ゴミ屋敷というか、地震でも来たのかというくらいに散らかっている。資材はそこら中に散らばっており、小さな山がいくつもできている。工具もしばらく使われていないのか、少し埃を被ったままテーブルの上に出しっぱなし。代わりに片付けたいとさえ思う程だ。
アナハイムは資材の山から古びた椅子を二つ引っ張りだしてくると、俺達に座るように勧める。少し座るのを躊躇したが、折角好意で出してくれたものだからと思い直し椅子に腰を降ろす。
「魔導具の大まかな仕組みは、今説明した通りだけど何か質問はあるかな?」
俺とサーシャが座るのを確認したアナハイムは、また別の資材の山を漁りながら、そう聞いてくる。
「では一つお聞きしたいのですが、魔石を使用する以外に、何か別の方法では使えませんか? 自分の魔力を使うだとか、自分の魔力を溜められるようなもので代用するとか」
「あー、そういえば、確かライラットでは魔石は殆ど摂れないから、魔導具も流行らないんだっけ? ……まぁ、結論から言うと、魔石以外で魔導具を使うというのは難しい」
こちらには目もくれず、何か探し物をするかのように、あちらこちらと動き回りながら答えるアナハイム。
「出来ないではなく、難しいですか?」
「ああ、出来ないというわけではない。まぁ、もう少ししてから説明しようと思っていたんだが、まぁいいか。……魔力には属性があるだろう? 火属性の人は火属性の魔法しか使えない、だっけ? たとえば、最初にお見せした火を起こす魔導具だけど、あれは火属性の魔力でなければ発動しない。早い話、火属性の魔力を持つ人でなければ扱えないってことだ」
「なるほど、では魔石も火属性のものでなければならないという事ですか?」
「いや、魔石が持つのは何の属性でもない、単純な魔力の塊なんだよ。無属性ということでもない。属性を持たない、ただの魔力の塊。この魔導具ではその魔力を、変換炉と呼ばれる物によって火属性に変換して、それで火を起こしているってわけ……ああ、あったあった」
探し物が見つかったのか、資材山の奥底から手の平サイズの黒い箱を取り出してくる。
「つまり、魔石の代わりに直接魔力を流して使う事は出来るけど、属性に応じた魔導具しか扱えないという事ですか」
「そういう事……これがその変換炉。これは国の最重要機密で、無理に開けようとしたりすると、自動的に内部構造が破壊するようになっているから、乱暴に扱わない方が良い」
そう言って、手の平に乗せた黒い箱を俺達に見せる。
にしても、国の最重要機密の扱い雑いな。乱暴に扱わない方が良いと言っていたのに、資材に埋もれていたし。戦闘で使う魔導具もあるし、ある程度の剛性は兼ね備えているのだろうけども。
「もう一つ聞きたいのですが、自分の魔力を別の物に溜めておくって事は出来ませんかね?」
内心、本当にこの人で大丈夫かなという不安が再燃しながらも、ダメ元でそう尋ねてみる。
「んー、技術的には不可能ではない……とは言えるかな」
「本当ですか!?」
思わぬ返答に、期待が膨らむ。
「ただ、効率が悪い。属性の付いた魔力は魔石に含まれる属性の無い魔力と比べて、とても不安定なんだ。だから、外に放出すると、空気中に含まれる魔力と反応して魔力壊変が起こり安定化しようとする。それが魔法と強く関係していると言われているんだけど、その話は割愛」
「それで、その魔力壊変は一定期間で一定の割合で起こるんだ。だから、多く溜め込んでいても、一定期間が過ぎればそれだけ多く減少してしまう。例えば、魔力を百、溜めていたとしよう。それが一定期間すれば五十減少する。逆に十しか溜めていなかったとしよう、だが一定期間すぎても五しか減少しない。時間経過による減少が一定量ではなく、割合で減っていくからとても効率が悪いんだ」
「なるほど……」
放射壊変とかに類似した話なので、何を言っているのかさっぱりという訳ではないが、放射化学はさわり程度の知識しかないから、あまり詳しい事までは理解できない。
ようするに魔力を体内から体外へと放出すると、どうしても魔力自体が安定になろうとして、自身の性質を変化させてしまうという事だろう。それが割合で起こるから、沢山溜めるだけ無駄というわけだ。
「ちなみに、溜めている魔力が元の半分になるまでの時間の事を半減期というんだけど、おれが長ければ長いほど魔力が安定している……まぁ、質が良いという事になる」
「質ですか……」
たしか、俺の魔力の質はかなり良かったと記憶している。だから半減期もそれなりに長い筈だ。魔力量は言わずもがな。そもそも、効率を無視して魔法を行使できるのだから、燃費の悪さは端から気にするような事ではない。
「その、魔力を溜める方法というのを教えて頂けませんか?」
「ああ、構わないと言いたい所だが、それは明日にしよう。二人ともライラットから来たのも決闘大会があるからだろ? 明日に備えて今日はゆっくり休むといい」
「僕は……いえ、そうですね。ではまた明日来ます」
決闘大会はティシュトルに来るための口実に過ぎないので、このまま魔力を溜める方法も教えてほしかったのだが、あまり我儘を言うのも良くない。
アナハイムにお礼を言い、店を出て宿に戻る。
宿に着く頃には日は落ち、夕食には丁度良い時間となっていた。
飛斑から、前情報を貰っていたが、普通に不味かった。シンプルに不味かった。まず、パンが不味い、魚もまずい、肉も野菜も不味い。この先しばらくの間はあの食事だと考えると先が思いやられる。
◇◆◇◆
「ふぅー、明日から決闘大会でしたっけ……まぁ、ルナとルークが出たがるでしょうから、僕らの出番はないでしょうけど」
不味い食事を無理やり水で流し込み、早急に部屋に戻って来た俺はベッドに横たわりそう呟く。
「もう少し手間取るかと思ったけど、初動としては満点ですかね」
これで、魔力の貯蔵という課題はクリアできたが、問題は汎用性だ。
平時に自分の魔力を別の所に溜めておき、戦闘の際にそこから魔力を引き出して魔法を使える道具。戦闘に使うのだから、条件として汎用性は欠かせない。しかし、魔法陣に刻まれた魔法しか使用できないというのは、それに欠けてしまう。どうにかこの課題を解決したいところだが、これと言って良さげな案は浮かばない。
普通、魔法を使う時は、体内の魔力を魔孔を介して外に放出する。体外の魔力を利用して魔法を放つには、魔孔の代わりに魔法陣を介さなければならない。
溜めた魔力を魔法陣ではなく魔孔を介して……という手も思いついたが、そもそも、一度外に出した魔力を再び体内に戻して魔孔を通して魔法を扱うというのは、結局最初から自分の魔力を使っているという事と同じだ。体に負荷がかかりすぎるから、別の方法を模索しているというのに、それでは根本的な所が解決していない。
単純に複数の魔導具を装備するという手もあるが、戦闘になると一瞬の隙が命取りとなることも珍しくないため、あまりゴチャゴチャとしているのは好ましくない。
「すでにある技術の流用では些か難しいですかね」
この問題を解決するには、既成の技術体系ではなく新しい技術を見つけなければならないが……数週間ではあまりにも時間が足りない。最低でも三年、魔導具の知識を深めて、そこから更に何年もの年月をかけてようやくといった所だろう。
「多様性については多少の妥協は致し方ありません……ですが、せめて数種類は必要です」
初級、中級、上級の攻撃魔法、それから拘束、防御魔法、最低でも五種類は必須だ。
「……また明日考えるとしますか」
何も思いつかないから、明日の自分に任せて今日はお休み。
うま味調味料の成分ってグルタミン酸ナトリウムっていう化合物なんですけど、昆布なんかに多く含まれるグルタミンをナトリウムで結晶化しただけのものだから、そこまで有害って程でもないんだぜ。
まぁ、中枢神経を興奮させるから、過剰に摂取すると神経細胞が死滅しちゃうよーってくらい。あくまでも過剰に摂取したらの話だけど。
追記。投稿する話間違えてました。すんません。




