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十六話『努力で強くなれるなら、それは才能があるって事だと思うよ』

ぶっつぶせー!はったおせー!


アイシールド21が部活で流行ってた時期があって、走り込んでる時にそんな掛け声だしてる奴がいた。

文字通り顧問にはっ倒されてた。

 ルークが決闘広場に到着すると、観客席にはかなりの野次馬が詰め掛けていた。

 騎士科ではその性質上、揉め事の解決を決闘で付けることは日常茶飯事であり、たびたび暇をもて余した生徒らが観戦していた。

 だが、観客席がほぼ満員という事態になるのはかなり珍しい。 それも、噂の新入生を一目見ようとしてのものだ。 

 

「観客多いな……お、あそこに居るのはルナとアルだ」


 二人の姿があるならユウリの姿もあるはずだがと、ルークは二人の周りを探すがどこにも見当たらない事に多少の疑問を覚える。

 白い髪に赤目なのだから、居れば直ぐにわかるはずだが、そうでないということはこの場には居ないということだ。


「おや、誰を探してるのかな」


 既に勝ち誇ったような表情でルークにそう声をかけるのは、決闘相手のデュラコだ。


「別に、誰でもねーよ」


 ルークは眉を潜めながら、そう言い明後日の方向を向く。


 やがて審判を買って出た一人の生徒が、決闘のルールを読み上げる。


 ライレイ騎士学園では生徒同士の戦闘行為を原則として禁止としているが、決闘と呼ばれる戦闘だけは例外だ。

 そして、決闘にはいくつかルールが存在している。

 必ず一対一で行うこと、決闘に参加する両者の合意が必要であること、武器は木剣を使用すること、決着は片方の意識の喪失もしくは敗北の意思表明により決まること。


 審判は、最後に両者の意思を確認すると、両者が木剣を構えるのを待ち決闘開始の宣言をする。


 開始直後、デュラコはルークに突っ込んでいくが、ルークは軽くあしらうようにデュラコの一撃を防ぐ。


「一つ教えてやる、白い髪のお友達だが、こっちで預からせて貰ったぞ」


 そうして鍔迫り合いに持ち込んだデュラコは、周りに聞こえないような声量でルークにそう耳打ちする。


「なに」


 ルークは剣を払いのけ、距離をとってデュラコを睨む。

 まさか、そんな事があるはずがないと思いながらも、デュラコの態度といい観客席に姿が無いことといい、本当に捕まっている可能性も捨てきれない。


「おお怖い……だが、わかるだろ? 無事に返してほしければ、何もするな」


「……」


 ルークは軽く息を吐くと、構えをといて木剣を下ろす。

 ユウリに危害が及ぶ可能性がある以上、下手に動く訳にはいかないと思ったからだ。


「そうだ、それでいい」


 デュラコは下卑た笑みを浮かべたまま、木剣を構えてルークに向かっていく。

 わざと急所を外し、勢いに欠けている。倒しにいくのではなく、ただルークを打ち据える事が目的の攻撃だ。

 ルークは防御することなく、表情一つ変える事なくその攻撃を受け止める。


「ルナに比べりゃ可愛いもんか」


 もっと強烈な一撃を散々喰らって来たのだ。今更、倒す気の欠けた攻撃をいくら喰らったところで膝をついたりはしない。

 とはいえ、このまま攻撃できずに時間が立てば、やがて負けるのはルークの方だ。


「なにか手は……何してんだあいつ」


 何か手はないかと思案していた時、デュラコの後ろの観客席、その一番前の席で必死にアピールしている白い美少女と見間違うほどに可愛い少年の姿が目にうつった。

 ルークもよく知っている、ユウリ・ライトロードだ。


 飛んだり跳ねたりと、小さい体で忙しく動くユウリに思わず笑いそうになるのをこらえる。

 そして、弾かれたような勢いで踏み出し、デュラコの剣を軽く払うとそのまま一歩踏み出し、デュラコの前髪を掴んで地面に引き倒す。


「考えてみりゃ、お前が捕まるわけがねぇよな」


 起き上がろうとしたところに追い討ちで蹴りが入り、デュラコの上体を無理矢理起こさせる。

 直後、木剣がデュラコの腹に叩き込まれる。

 蛙が潰れるような声と共にバルトサールの肺から空気が吐き出され、足が宙に浮く。追い討ちをかけるように、次は背中に木剣が叩き込まれ、再び地面に叩き付けられる。


「立てよ先輩。そこまで強く打ってはないだろ?」


「ぐっ、余程お友達が大切ではないとみえる」


 かなりのダメージを負いながらも、ゆっくりと起き上がるデュラコ。


「よーく目を凝らして後ろを見てみなよ」


 木剣で肩を叩きながら、顎でデュラコの後ろを指す。


「……なっ、なぜだ」


 後ろの観客席を見て、驚愕するデュラコ。

 当然だろう、彼の予定では居る筈のない人間が何食わぬ顔で座って居たのだから。


「端から拐えるわけなかったんだよ」


 ルークはよく知っていた。自分の親友の強さを。

 どういう訳か目立ちたくないからと手を抜いているが、本気を出せば新入生ながらも、この学園で最強かもしれないと思っていた。

 中級魔法までしか使えない中等部レベルの生徒がいくら集まったところで、ユウリを捕まえるなんて事は出来る筈がないと。


「くそっ、くそっ!」


 単純な実力はルークの方が上だということは今までの戦いではっきりとわかっていた。

 一撃目の髪を掴まれたのは、虚を突かれた為に反応出来なかった。だが、続く連撃は見えていたにも関わらず、反応出来なかった。ルーク自身は手を抜いたつもりだったようだが、デュラコ受けたダメージは大きい。実力差は明白だ。

 目論見が失敗したことで、デュラコの勝ちは絶望的だ。


「中等部でもかなり強いんだよな? どんなもんか参考程度に教えてくれねーか?」


 ルークは極めて自然にそう言う。


 端から見れば、既に決着がついている。

 観客席では、既に立ち去る者も少なからず見受けられる。

 にもかかわらず、ルークがトドメを刺さずに続けようとしているのは、デュラコがまだ本気を出していない思っているからだ。


 初等部では既にトップレベルの力量はあるということは理解しているが、ルークは自分の実力が、既に学園内でも上位に位置するという事に気づいていない。

 故に、中等部学生がこの程度だと思わなかったのだ。


「舐めるなぁぁぁ!」


 このまま恥をかいたまま終われるかと、デュラコは身体強化を使い、渾身の力を込めてルークに斬りかかった。 戦闘中、ずっと維持出来るほど使いこなせはしないが、剣を降りきる程度であれば十分に保つ。


 ルークは身体強化を使い、その攻撃を真半身でかわす。

 そして、そのまま体を回転させ相手の背後に回り込むと、がら空きの背中に木剣を打ち込んだ。

 身体強化に加え回転による遠心力も乗り、デュラコの意識を刈り取るには申し分ない一撃だ。


◇◆◇◆


「見事なものですね」


 ルークの勝利で決着が付き、観客席が最高潮に盛り上がる中ささやかながら俺も賞賛の言葉を送る。


 わかりやすいように、一人で一番前の席で見ていたのだが、ルークは居ることに気付かなかったようで、最初に構えをといた時は少し焦った。

 跳んだり手を振ったりして存在をアピールして、ようやく気づいてくれたが、あのまま気付かなければどうなっていたことやら。


「肝を冷やす所もありましたが、中等部では相手になりませんか」


 正面切っての戦いであれば、既に現役の騎士相手でも引けはとらない……というのは、流石に言い過ぎか。


「やあ」


 担架で運ばれていくデュラコ先輩を眺めていると、幸の薄そうな少年が声をかけてくる。


「あ、メイコウ先輩も見てたんですね」


 ルークが決闘を行うことになった日に、デュラコに手痛くやられていたメイコウ先輩だ。

 

「この決闘は俺のせいだからね。せめて最後まで見届けないとと思って……しかし、彼は強いね」


 決闘場のど真ん中で、背伸びをするルークを見ながらそう言う。


「そうですね、もう学園で屈指の実力じゃないですか?」

「かもしれない。七歳だというのに恐ろしい程の実力だよ。才能かな、羨ましい」

「それは違いますよ。ルークの強さは、才能というより努力によるところです」


 才能はルナが顕著だ、特異体質に稀少な属性、魔力の量も平均を遥かに上回っている。

 ルークは剣のセンスは三人の中で一番だし、魔力も平均よりは多いが、才能と呼ぶには少しばかり平凡なレベルだ。

 他に目立つようなものはなく、ほぼ努力のみで強くなったと言ってもいい。


「……努力して強くなれるなら、それは才能があるって事だと思うよ」


 努力する事に対して何かあるのだろうか、遠くを見ながらそう呟くメイコウ先輩。


「それなら、万人皆天才な気もしますけどね……さて、僕はルーク所に行きますけど、先輩はどうしますか?」


 無関係というわけではないし、一言ルークに言いたいことでもあるんじゃないかと思いそう尋ねる。


「いや、俺はいいよ。スカッとしたって伝えておいてくれないか」

「わかりました」


 伝言を預りメイコウ先輩と別れると、ルークのところへと向かう。




「お疲れ様です」


 木剣を肩にかけ、決闘場から降りてきたルークにそう声をかける。


「ありがとな……ところで、ありゃなんだ。思わず笑うところだったぞ」


 あれとはたぶん、飛んだり跳ねたりしていた事を言っているのだろう。


「だって、全然気付いてくれないんですもん。あ、それとメイコウ先輩から伝言ですよ、スカッとしたって」

「そりゃ良かった」


 メイコウ先輩からの伝言を聞いたルークは、満足そうに笑って言う。


「ルークってば、中々やるじゃん!」

「見事であったぞ! 特に最後の一撃はな!」


 決着を見届けた野次馬がぞろぞろと解散してゆく中、少し遅れてルナとアルもやってくる。


「けどさ、どうして最初はわざと喰らってたの?」

「む、そういえば余も気になったぞ」


「ちょっとな……」


 


「回復いります?」


 あの程度の攻撃で尾を引くようなダメージを受けるほど、脆い体ではない筈だが念のため回復魔法をかけようとルークに手を伸ばす。


「いらねぇ、あいつもこっちが避けないってわかってたから、急所外してただ剣を振ってただけだし」


 俺の伸ばした手を遮ってそう言うルーク。 


「なに!? つまり、フェアな戦いをしようと、あえて手加減したというわけか! 相手も中々騎士道を重んじているようだな!」


 正確には、あえて急所を外してじわじわとダメージを与えて行き、出来るだけ長くサンドバッグにしてやろう……という魂胆だったのだろうが、アルはそれを前向きな方向に勘違いをしたようだ。


「いや、そういうわけじゃ……」


 アルの勘違いを正そうとするルークだったが、面倒になったのか口を閉ざしてアルに向けていた視線を逸らす。


「ま、何はともあれ、お疲れ様ですルーク。後始末の方は任せてください」


 俺はルークにそう言うと、一足先にその場を離れた。


 これは余談だが、その日何名かの生徒が保健室から聞こえてくる悲鳴を聞いたとかなんとか。

 

 それ以来、デュラコはこれまでの傲慢振りが嘘のように大人しくなり、この決闘騒ぎによりルークの能力を疑うものは居なくなった。

 が、そのおかげというべきかそのせいというべきか、ヴァンデルシア兄妹の名は更に広まり、ルークとルナは暫くの間あらゆる方面からの執拗な勧誘から逃げ回る日々を過ごすことになった。


 こうなるから、あまり目立たない方が良いんだ。

 



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