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十五話『後は単なる消化試合ですね』

主人公が活躍。

 噂を聞き付けたデュラコが絡んできて以降、特に何か手出しをしてくるような様子はなく、一部面倒事を除いて、俺達は普通に学園生活を送っていた。

 だが、魔法に関してはもはや学園で習う事がないレベルだった為に、授業は正直無駄な時間であった。

 出席率が悪くとも、結果さえ残せれば次の学年に上がるのに支障はない。

 無駄な時間を過ごすよりは自分達で有意義に過ごした方が良いと、授業をサボり、そうして出来た時間を利用し、俺は最上級魔法の習熟練習を隠れて行っていた。


「我、滅びの意志をここに示す! 聖光よ、原初の光よ、燃やせ、焦がせ、滅せ、神の威光を以てその身に刻み、塵となりて光明に消えよ! ラスター・オベリスク」


 暗雲の空を切り裂き、薄明光線のように割れた空から一筋の光が降り注ぐ。

 百メートルにも及ぶ広大な範囲が光に照らされたかと思うと、次の瞬間には全てを飲み込む巨大なレーザーが降り注ぐ。


「……えっ」


 レーザーが収まった後には、草木は残らず、地面は焼け焦げて煙を上げ、一部溶解し赤々と熱気を帯びていた。

 あまりの威力に言葉を失う。


「うわ……」

「えげつねぇ」


 近くで見ていたルナとルークも、その光景を見て頬をひきつらせている。


 無理もない。隠れてやっているのだから、当然威力は最小限に抑えてある。

 それこの状態なのだ。全力で使えば更に広い範囲で、シュワルツネッガーもサムズアップな溶岩プールの完成だ。


「今の光はなんだ?」

「こっちの方じゃなかったか?」


 今の騒ぎを聞き付け、教師や暇な学生が様子を見に来ようとしていた。


「ルーク、ルナ、バレないうちに逃げましょう!」

「そーね!」


 見つかったら怒られそうだし、反省文とか書かされそうだから……という理由もないわけではないが、それよりも最上級魔法を使えるなんて知られるのが困る。

 なので誰かが来る前に、急いでその場から逃げ出す。


 そして人気のない静かな中庭まで逃げてくると、日陰で本を読んだり、軽くトレーニングをして時間を潰し、何事も無かったかのように次の授業に間に合うように教室へと帰って来る。

 教師らは俺達が授業をサボっている事には気付いていたが、実際に学ぶ事はないのだし、別に受けないなら受けないでも構わないと、見逃してくれているようだった。


「また授業をサボっておったな」


 なに食わぬ顔で席に座ると、後ろの席に座るアルがそう話しかけてきた。


「バレてしまいましたか」

「たわけ、余の前なのだから気付かぬ訳がなかろう」


 そりゃそうだ。


「まぁまぁ、良いではないですか。授業でやる内容は既に習得していますし」

「そうであろうが、それでは余がつまらぬではないか」


 確かに、友達が居らず一人で受ける授業はさぞかしつまらない事だろう。それについては少し申し訳ないとは思うが。


 アルも中級魔法までは習得している。今更下級魔法を教わったところで、実入りするものもないだろうし。


「アルも一緒にサボればいいではないですか」

「愚問だな。余は王子、民の手本にならねばならぬのだ」

「優等生ですねぇ、少しは羽目を外す事も大事ですよ?」

「心配するな、ちゃんと息抜きもしている」

「ならば良し!」

「む、余の真似か」


 他愛もない会話をしていると、やがて授業の時間になる。


 正直、魔法以外にも算数やら歴史やら、そういった座学は既に授業で習う範囲は全て知っているのだが、これらは真面目に出席している。

 ルナやルークはもっぱら魔法と剣術しかやってこなかった為、座学の方はやや疎かになっているため、二人は授業をサボる訳にはいかないのだ。

 一人でサボっても面白くない。だからこうして授業を受けているというわけだ。


「そういえば、今日決闘であったな」


 授業中、周りに聞こえないように潜めた声でおもむろにそう言うアル。


「ええ、今日の放課後です」


 決闘を申し込まれて一週間。今日がその決闘日だ。


「ま、何もなければルークの勝ちは絶対ですが……」


 デュラコのあの様子、何かしら手を打ってくるであろう事は間違いないと見ていいだろう。

 それによっては、ルークにも負ける可能性が出てくる。警戒はしておかねばならない。


「万が一という事もありますし、アルも一緒に観戦してくれませんか?」


 王子であるアルが見ているとなれば、下手な手は打ちづらい。出来ることなら、決闘を見届けて貰いたい所だが。


「……良いぞ、友の誘いを無下には出来ぬ。それに余も決闘の行方は気になる故な」


 放課後は予定があったのか、少し渋い表情をするアル。だが、やがて首を縦に振ってくれる。

 アルなりに、察してくれたのかもしれない。


「ありがとうございます」


 これで、決闘中に何か細工をする事はまず出来ないだろう。デュラコ先輩は貴族意識の強い男だ、自分よりも立場の上の人間……特に王族が観ている中、自分の立場を悪くするような行動は出来ない筈だ。

 問題は決闘の前に決闘場以外の場で、何かしてくることだがそれならこちらも対処は出来る。


 いくつか相手が打ってきそうな手と、その対処法を考えている内に、授業が終わり放課後になった。

 ルークは先に決闘場へと向かったので、観戦するためにルナとアルと共に俺達も決闘場へと向かう。


「君、少しいいかな?」


 その途中、数人の上級生に声をかけられる。前後をガッチリと挟み込むように立っている。おまけに人目のない所を選んで声をかけてきている。


「……ルナとアルは先に。僕に何の用でしょうか?」


 不穏な空気を察し、ルナとアルは先に向かわせる。


「いやなに、少し付き合ってもらおうと思ってねぇ」


 そう言いながら、にやにやと笑う上級生ら。


「なるほど、デュラコ先輩の差し金ですか」


 何を企んでいるかと思えば、用は人質をとってルークに身動きさせないようにするつもりだったという事か。

 確かに、戦う相手が自分よりも遥かに強いのなら、人質をとって身動きを封じるのは手立てとしては悪くない。

 だが、そうするということは、既に敗けを認めているようなもの。


「……単なる消化試合ですね」


 残念ながら、彼らは俺を捕らえるだけの力量は持ち合わせてはいない。

 人質を得られなければ、作戦は失敗。正面から堂々とぶつかれば、ルークの勝ちは揺るぎない。

 行われるのは結果の決まった、単なる消化試合だ。


「大人しく引き下がる気はありますか?」


 もはや付き合うのは時間の無駄だと思い、適当にあしらうようにそう言う。


「そうつれないことを言うなよ」


 言ったところで引き下がる筈もなく、道を塞いだままニヤニヤと笑みを浮かべたままの上級生ら。


「そうですか、では」


 相手が引き下がらないとわかるや否や、前を歩く上級生にライトボールを喰らわせる。

 威力は死なない程度に抑えてあるが、それでも直撃した生徒は数メートルは飛び、壁に勢いよく激突して白目を剥いて倒れる。

 いきなりの事で驚いて固まっているうちに、もう二人にライトボールを土手っ腹に叩き込む。 直撃し吹っ飛んでいくのを確認せず、身体強化を使いさらに加速し、他の上級生に迫った。

 上級生は慌てながらも迎撃しようとしたが、強化状態の俺の方が圧倒的に速い。

 が、強化してあるとはいえ、元の身体能力が低いので、殴るような事はしない。代わりに相手の腹に手を当て、至近距離で魔法を放つ。


「なっ、なんだこれは」


 瞬きするほどの間で、自分以外の仲間が切り揉みしながら吹っ飛んでいくのを見て、残る一人は顔色を驚愕一色に染め上げ、動揺のあまりたたらを踏んで、足を絡まらせて尻餅をつく。


「大人しく引き下がってくれれば、こんな事にはならなかったのに」


 足がすくんで動けないでいる上級生に近づき、しゃがんで視線を合わせてそう言う。


「お、お前っ、一体なんなんだよ」

「ユウリ・ライトロードです」


 恐怖に染まった表情でそう言う上級生に、そう名乗りながらライトボールを叩き込む。


「……あまり、時間はかかってないですね」


 閃光のごとき一瞬の間に差し金を全員倒した後、彼らを放置して決闘場へと向かう。

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