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十二話『中級でいいですかね』

モンハンワールド買った。

箱版なんだけど、だれか居ないかな。一緒にやる相手。

 闘技場に移動した騎士科の一年生は早速、身体測定を行っていた。

 最初は魔法能力の測定だ。使用可能な魔法の(クラス)、呪文を唱え使用するまでの速度、そして魔力の総量などを測定する。

 参加している生徒はそれぞれにやる気を漲らせながら、自身に可能な最大の魔法を放ち、魔力の限界まで使い続ける。

 といっても、単に現状何れだけ出来るのかを知るためのものなので、能力の上下で何か決まるわけではない。

 それでもやはり他人よりよい成績を出すと嬉しいらしく、良い成績を納めた生徒は得意気な顔をしていた。

 

 ある生徒、というかアルがアースランスの魔法を放つ。

 土属性の魔法では中級に位置する魔法だ。

 放たれた土と言うよりは岩のような槍が木製の的を簡単に貫通し、的に大穴を空ける。

 それを放ったアルは立て続けにもう一発放った。

 もう一発行けるかと思ったが、その生徒はそこで限界らしく肩で息をしている。

 それでも、その様子を見ていた周囲の生徒がどよめく。


 その様子を見て、俺は少し困っていた。

 昨日図書館で覚えた最上級魔法の試し射ちをと思って居たのだが、かなりやりづらい空気だ。

 自分以外で同年代の魔法のレベルを正確に知っているのはルナとルークの二人だ。だから、彼らを基準に考えて、上級魔法くらいが精々だと思っていた。だから、最上級魔法を使って少し驚かれる程度かなと思っていた。

 だが、実際は中級魔法が二発も使えれば凄いというレベル。


 いや、考えてみればルナとルークは一年遅れとはいえ、共に必要以上の鍛練を積んできたのだ、一般的なレベルに収まっている筈がない。

 リュカも一般的なレベルに関しては、殆ど説明をしなかった。精々、魔法の威力を一般的なレベルに調節させる程度で、誰がどのくらいの魔法を使えるとかは一切聞かされていない。

 きっと、普通はこれくらいだと教えることが、成長の枷になるのを危惧してあえて教えなかったのだろうが。


 しかし、どこまでやっていいものか……。


「次、ユウリ・ライトロード君」

「はい」


 自分の番になり、返事をしながら前に出る。


 最上級魔法を試し射ちしたいというのが本音だが……やれば面倒事は避けられないだろう。

 面倒事に巻き込まれるのも、それはそれで面白そうではあるのだが、ただでさえルークが目立っているのだ。

 そして希少な属性や、特異体質を持つルナは間違いなく目立つ。それに加えて俺までともなると、きっとこの先ひっきりなしに面倒事に巻き込まれる事は間違いない。


 といっても、二人とつるんでいる時点でそうなるのも時間の問題なのだが……いきなり目を付けられるよりは、いくらかマシだろう。


「中級でいいですかね」


 そう結論付けた俺は、軽く右手を振り中級魔法であるライトランスを放つ。

 先の生徒が使っていたのと同じ系統の魔法だ。

 手を降ると同時に宙に光の槍が表れ、的まで一直線に進み、的である鉄製の鎧を簡単に穿つ。鎧は胴体部分が消えるほどの穴が空き、辛うじて原型を保っているような状態だ。

 それを見た周囲の生徒から、またもやざわめきが起こる。こういうのは中々どうして、気分がいいものだ。


「こんな感じかな」


 威力も普通のレベルに抑えてあるし、発動時間も詠唱を省いたので申し分ない筈だ。


「き、君、限界まで使いなさい」


 戻ろうとすると、二人居る教師の一人がそう言ってくる。


「ああ、はい」


 そういえば限界まで使うんだっけ。

 正直に限界が来るまでやっていたのでは、何日かかるかわかったものではない。

 もう二発ほど魔法を放ったところで、疲れた振りをして早々に切り上げた。



「見ましたか?」

「ええ、生徒は気付いて無いようですが、詠唱してない上に、ほぼ動作無しで鎧を簡単に破壊する威力」

「詠唱破棄自体は魔法に長けた者であれば、別段珍しいものではないですが、あの年でそれをやってのけるとは……それに、中級三発程度では疲れも見せていませんでしたな」

「ええ、魔力切れによる疲労ではなく、ただの演技でした」

「ユウリ・ライトロード……底が知れないですな」



「うむ、流石は我が友だ! 余の記録を越えてくるとはな!」


 戻ってくるや否や、アルが上機嫌になりながら、そう褒めてくれる。


「ありがとうございます」


 かなり手抜きなので怒られはすれど褒められるような事ではないのだが、称賛は受け取っておこう。


「うむ。だが剣では負けぬ故な、ゆめ忘れるでないぞ」 


 そう言い残し、高笑いしながら去っていくアル。


「ねぇねぇ、さっきのショボくない?」


 アルと入れ替わりで側に寄ってきたルナが、小声でそう話しかけてくる。ショボいというのは、アルの事ではなく俺の使った魔法に対しての事だろう。


「目立たないよにしただけです」


「えーっと、じゃあ、私らも中級魔法がいいの?」


「いえ、別に何でも……いや、ルークは本気でやることをオススメします」


 ルークは既に目立っているし、ルナは目立つ要素が多いために必然的にそうなるだろうから、別に何でも良いと言おうとしたが、途中で止めてルークには上級魔法を使うように言う。


「なんでだ?」


 何故自分だけ上級魔法なのか理由がわからず、ルークはそう聞き返してくる。


「喧嘩する相手に挨拶をしてあげたらどうですか?」


 新入生がいきなり上級魔法を使えば、その噂は学園中に広まるだろう。そうなれば、決闘をする事になった例の貴族の耳にも届く事は間違いない。

 相手は恐らく新入生だからと完全に舐めきっているであろう事は想像に難くない、なので先ずはその思い上がりを叩こうと思ったのだ。

 といっても、それが決闘相手だと知らなければ何の意味もないし、仮にそうだと知ったところで何かメリットがあるわけではない。

 少しでも焦ってくれれば、それだけ気分がスッキリするというだけの事だ。

 

「……ああ、そういうことか。じゃあそうしてくるわ」


 ルークも俺の意図を察してくれたらしく、ニヤリと口許を弛めるとやる気を漲らせながら前に出る。


「ふぅー……天落とす道、爆布、大火の淵より刻む」


 深呼吸をして気持ちを落ち着かせたルークは、魔法の詠唱を始める。次第に周囲の温度が上がっていく。

 それと同時に聞いたこともない呪文に、生徒達の間にどよめきが広がっていく。


「こ、これは上級魔法!?」

「急いで防御魔法を!」


 教師が慌てて中級の防御魔法を展開し、余波から生徒を守る。


「我が仇に爪を立てよ、フレイムフォール」


 一つの巨大な火の玉が、空から落ちてくる。

 的を飲み込み巨大な爆発を起こし、直撃を避けた的もその爆風に煽られる。


「ふぅ……流石にしんどいな……」


 流石に上級魔法を連発するだけの魔力はなく、魔力が枯渇したルークは額に汗を滲ませながらそう言う。


 生徒達は間近で目の当たりにした上級魔法の威力に圧倒され、声も出ない様子でただただ口を開けてポカンとしているだけだった。

 教師らも、まさか上級魔法が出てくるとは思いもよらなかったのだろう、信じられないものを見るような目で、消し炭になった的の数々を見つめる。


 そんな生徒や教師を置きざりにするように、次は自分の番だと前に出たルナはニコニコと笑みを浮かべながら魔法の詠唱を始める。


「葉よりしずりし柱、はらと敵を穿て! アイススランス!」


 ヒヤリとした大気を裂く鋭い音と共に、標的に氷柱が突き刺さる。一つではなく同じ魔法を複数同時に使用し、残った的全てを同時に射抜いた。


「こ、氷属性!?」

「しかも複数を同時に」


 その光景を見た教師は目を見開いて驚き、生徒はなにも言えずただただ呆然としているだけだった。


 騎士科の人間は貴族の子供が多い。後は、商人の次男坊や村の纏め役など比較的裕福な家庭の子供だ。

 周囲より優遇された環境で育った彼らは、皆一様に自尊心が高い。

 子供らしい短気さと結びついた幼いそれは、容易に勘気になる……のだが、二人が見せたのはそんなものを、いとも容易く砕いた。

 上には上が居ると思い知らされた彼らは、明らかに意気消沈したように静まりかえる。


「これは、別の意味で失敗してしまいましたか」


 これからお通夜でもあるかのような暗さに、そう反省する。


 彼らのプライドを崩す事は決して悪いことではない。挫折は対抗心に火をつけ成長を促す。

 だが、クラスの雰囲気を見る限り、全員既に対抗心すらも砕かれているようだ。それでは意味がないだろう。


「うむ、流石は余の友達だ。それくらい出来なくてはな! 余も王子として負けてはおれぬな!」

 

 ただ一人、アルだけは今の光景を見ても意気消沈する事も悔しがる事もなく、自分も後に続こうと燃えている様子だった。

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