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十一話『うん、知ってた』

小学校の頃の漢字テストが出てきてさ

大西洋の読みを書けって問題が出てたんだが。


「ふぁ……あー、眠い。とある吸血鬼さんみたいに、惰眠を貪って暮らしたいくらいに眠い」


 翌朝、目が覚めた俺はまだ覚醒しきってない目を擦りながら、学園の準備をするために、袋から制服を取り出して着替え……ようとしたところで手が止まる。

 目の錯覚だろう、一瞬ひらひらしたものが見えたからだ。一旦それを袋に戻して遠ざけ、深呼吸する。

 きっと幻覚に違いない。見間違いか、はたまた蜃気楼だ。誰かが鏡花水月でも使ったんだ。一体いつからや。


「……ふぅ、これはいけない。まだ寝ぼけてたみたいですね。ですが、変な幻覚のお陰で目は覚めました」


 深呼吸して落ち着いた所で、再び袋を手に取り中に入っている制服を取り出す。


「やっぱ、見間違いじゃないです」


 ひらひらは見間違いなどではなかった。間違いない、これはスカートだ。


「ま、まあ、あれでしょう、きっと間違って入ってたんでしょう」


 三着買ったんだ、一着くらいは混入しててもなんらおかしくはないさ。全く、あのお姉さんもドジだなぁ。

 そう思いながら、袋の中から新たな制服を取り出す。これも女子の制服だ。


 落ち着け、一旦落ち着こう。三着目はきっと男子の制服だ。既に袋の中に見えてるスカートは見ちゃダメだ。

 見ちゃダメだ見ちゃダメだ見ちゃダメだ見ちゃダメだ見ちゃダメだ。


 そう暗示しながら、袋の中から三着目の制服を取り出す。無論、女子の制服だ。


「うん、知ってた」


 三連続となると、認めたくはないが認めざるをえない。

 あのお姉さん、俺の性別間違えてる。


「いやぁ、流石にどうしましょうか」


 昨日の内に確認しなかった自分にも非はあるのだが、まさかこうなるとは予想していなかった。


「ユウリ様、ご学友がおいでに……そちらは?」


 使用人がやって来て、ベッドの上に並ぶ制服を見てそう聞いてくる。


「見ての通りです。多分、性別を間違えられました」

「困りましたね、今から新しいのを手配しても間に合いませんし、今日のところは、そちらをお召しになられるしかないかと」

「なんか喜んでません?」


 声が嬉しそうな気がする。


「……いいえ、そんな事はないですよ」

「今の間はなんですか」


 すごい怪しいんだけど。


「おーい、ユウリー早くしないと間に合わなくなる……ってなんだそりゃ」


 待ちきれなくなったのか、ルークが部屋に入ってきて使用人と同じようにベッドの上に並ぶ制服を見て驚く。

 寮は男女別になるので、ルナはこの場には来ない。寧ろ俺にとっては幸いな事だ。ルナが居れば有無を言わせずこれを着せに来ていただろうから。


「見ての通りです」


 ベッドの並ぶ制服を指差してそう説明する。


「そういう趣味?」

「すいません、僕の説明が悪かったですね。どうやら性別を間違われてしまったみたいなんですけど、今からでは他のを用意できませんし、どうしたものかと困っているんですよ」

「なんだそんな事か」

「そんな事ではないです。一大事です」


 人生で二度も女装するのは勘弁してほしい。


「俺の予備のを貸すよ、サイズが合うかはわかんねーけどさ」


 どうしたらいいか、考えあぐねているとルークが思わぬ助け船を出してくれる。


「……ルーク! 助かります! やはり持つべきものは友達ですね!」


 流石は親友。困っている時に頼りになる。


「持ってくるよ」


 そう言ってルークは一度自分の部屋に戻ると、少しして予備の制服を持って戻ってきた。

 俺はそれを受けとると、別室に移動してそれに着替える。

 貴族用の寮は二部屋ある。片方は使用人が寝泊まりする為のものであるが、そこを借りて着替えさせてもらった。


「どうだ?」

「そうですね、気分はさながらヒップホップダンサーといったところです」


 ヒップホップダンサーとまでは行かないが、体格的にルークは俺よりも一回り程大きい為、袖は手の甲まで覆い、全体的に服装がユルユルになってしまう。

 ズボンは裾を折って腰回りをベルトで留めているので落ちたりする心配はない……腰回りが皺になるかも知れないけど、それは許して欲しい。


「ひっぷ……? 着れたならそれで良いや。早く朝飯食べに行こうぜ」


 ヒップホップダンサーという聞き慣れない単語に首をかしげるルークだったが、まぁいいかとばかりに軽く流して、早く食堂に行こうと急かしてくる。


「そうですね、行きましょうか」

「言ってらっしゃいませ、お坊っちゃま」


 手早く準備を済ませ、ルークと共に食堂へと向かい朝食をとる。

 朝食にしては中々にボリューミーではあったが、昨日の夕飯を食べそびれてしまった分、かなりお腹が空いていた為に二人ともペロリと平らげた。


 味の方はルークが言っていた通り、中々のものだった。少し薄味ではあったが、それ故に素材の旨さというのを堪能出来る味だった。

 


 

◇◆◇◆


「ユウリおっはよー……って何!? 何なの、その可愛らしい格好!?」


 ルークと共に登校し、騎士科の教室に入るや否やルナが猛スピードで飛び込んでくる。

 

「説明すると面倒になるので、いろいろと事情があったとだけ言っておきます」


 朝から抱きついてくるルナを華麗に避けつつ、そう説明する。


「性別間違えられて、制服がないって言うから俺のやつ貸してるんだ」


 人が言いたくないからあえて誤魔化したというのに、ルークがあっさりと喋ってしまう。


「ちょっ、言わないでください」


「なるほど、納得! 女の子の制服着てるのも見てみたかったけど、こういうのも良い! でかしたルーク!」


 ルナはサムズアップでそう言う。


「おー、そうかー」


 心底どうでも良さそうにそう答えたルークは、そのまま自分の席へと向かった。


「僕もそろそろ席に……」


 俺も何時までも入り口で立っている訳にもいかないので、自分の席へと向かう。


「しかし、これはこれで目立ちませんかね」


 女装してくるよりも、サイズが合ってない制服を着ている方が目立ちそうだなと、自分の格好をしながらそう呟いて席につく。


「そうでもない、周りをよく見てみるがいい」


 独り言を聞いていたのか、アルが後ろから話しかけてくる。

 どうやら後ろの席だったらしい。尚のこと入学式の時に気づけよ。寝てたからしかたないけども。


「あ、アル、おはようございます。周りですか……あれ、以外と制服のサイズ合ってない人がちらほら居ますね」


 アルに言われ、教室の生徒に目を向けると、以外にも自分と同じような生徒がちらほらと居た。


「うむ、補助金が出るとはいえ、仕立てはいいからな。値も相応のものだ」


「なるほど、そういう事ですか」


 この年頃は成長期だ。直ぐに大きくなって服のサイズは合わなくなってしまう。その度に制服を買い換えていたのでは、かかる費用はバカにならない。

 金にあまり余裕がない家庭では、兄や姉のお下がりだったり、成長を見越して大きめのサイズを買っていたりと、身の丈に合わないものを着ている生徒は少なからず居るのだろう。


「皆、おはよう……僕はこの騎士科の担任のセイラ・カタリアだ。昨日も会ったけれどね」


 チャイムが鳴り、生徒全員が席について少しして茶色の髪を長めに伸ばして後ろで縛っている優しそうな雰囲気の男性が入ってきた。

 足首より少し上まである長い白衣のようなコートを着こなし、一重で狐目とまではいかないが細い目が特徴的だ。


「えーと、全員居るようだね」


 教室内を見渡し、全ての席が埋まっているのを確認したセイラは広げていた出席簿を閉じると、教壇に手をついて言った。


「さて、突然だけど最初の授業は身体測定を行う。といっても、背丈を測るわけじゃない、君達が現段階で何れくらい魔法や剣が扱えるのか、何れくらい運動できるかを測定しるんだ」


 それは体力測定って言うんじゃないかなーと内心で思ったが、それに対してツッコミを入れるのは野暮だろうか。


「というわけで、君達、運動着に着替えた後に昨日購入した防具と木剣を持って、外にある闘技場に集合だ」

『おおにしひろし』って書いてた。

一応は三角で点数はくれてたけど、先生が『間違っては無いけどそうじゃない』ってコメントしてた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あの、すみません。本編とは全く関係ないかもしれませんが、どうしても伝えたくて。 前書きと後書きが、滅茶苦茶面白かったです。先生のコメントもまた面白さに拍車をかけていました。小学校の頃から…
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