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七話『ようするに高校みたいなもの』



「そういやよ、最近は体の方は大丈夫なのか?」


 何時ものようにルークと剣の模擬戦をしていると、彼はふと思い出したようにそう聞いてくる。


「ええ、大丈夫ですよ」

「そうか。しかし、なんでまた模擬戦なんて言い出したんだ? 剣はやめるんじゃないのか?」

「たまには体を動かす事も大切ですから……というか、やめるとは言ってません。難しいとは言いましたが、だからやらないと言うのは違います」


 難しいから出来ないと決めつけていては何も出来はしない。それに、人より体力が付きにくいというのであれば、寧ろ人一倍に鍛練を積まねばならないだろう。欠けているものは努力で補う。簡単な話だ。


「ったく、ほんとに病弱なのかよ」


 体が弱いというのが嘘と思えるように元気な俺に、ルークは苦笑を漏らし、柄握りしめると地面を蹴って一気に切りかかる。


「嘘ならいいなとは思っています」


 それを俺は真正面から迎え撃つ。勝負の行方は想像におまかせする。

 そうしてまた変わらない日々過ごし、更に月日は過ぎ、九歳迎えようとする彼らの元にも騎士学園への入学の話が入ってきた。


 騎士学園とはその名の通り騎士を育成する学園だ。

 その説明をするには、先ずはこの国の歴史から話す必要がある。


 俺達の住んでいる国は ライラット王国と言う。

 別名『戦の国』と呼ばれているこの国は、その名の通り戦いが多い国であった。戦いと言っても、それは戦争ではない。

 この世界において、人の居住する土地は三割程だ。エルフやドワーフなど亜人が暮らしている土地が三割。

 残りの四割は魔獣や魔族が支配する無法地帯だ。魔獣以外にも、盗賊や犯罪者が身を潜めていたりと治安は最悪。人や亜人が足を踏み入れる場所ではないとされている。

 その魔族が支配する無法地帯と隣接するこの国では、魔獣や盗賊の襲撃が他国より遥かに高い。

 とりわけに狙われやすいのが農地を耕作する農民であり、その被害はそのまま税収、食料供給の低下に直結する問題であり無視はできない。


 無論、魔獣や盗賊から身を守るために騎士、冒険者ギルドから仕事を斡旋された冒険者などといった者達がいるのだが、それだけでは手が回らないし、仕組み上どうしても後手に回ってしまう。

 そんな時代背景から、いつしか農民達も自らが戦う術を欲するようになった。


 そういった国民の声が大きかった為に設立されたのが、この騎士学園というわけだ。


 これにより、民は自衛の術を得たことで、自力で魔獣を撃退、それができなくとも応援が来るまで持ちこたえられるようになり、被害は減り税収、食料確保の問題は緩和。さらに期せずして、平民の学力向上にも繋がり、さらに生産効率が上がった。

 余談だが、平民でも戦士のように戦える事から戦士の国とも呼ばれるようになった。


 その為、国はこの学園への入学を推奨し、それに掛かる費用の多くを国で負担するという声明を発表した。

 おかげで、入学希望者が殺到してその年は王様も寒い思いをしたとかなんとか。

 だが、今では各地にその騎士学園があり、多くの民の生活は安定している為、国からの補助金もそう多くは必要ない。よほどの事がない限り、身分に関係なく騎士学園に入学するのが当たり前というようになっている。

 義務ではないが、行くのが当たり前……要するに高校みたいなものだ。


 ……という説明をリュカから受けた俺達三人は、それぞれ学園の案内に目を通していた。


「この学園への入学は十歳から、つまりあなた達も来年度から入学というわけね」


「なんか、学科? っての、どれか一つ選ぶんだよね」

「なんか、いっぱいあるな」


 元々は学科分けなどはなかったそうだが、様々な身分が入学してくるため、それにあわせて学園側も農業や商業、騎士など細分化を行った。

 各学科に共通して一定の戦闘技術科目に、基礎学問は存在するが、基本は自身に必要な職能についての教育がメインだそうだ。


「僕は騎士科ですかね、興味があると言えば魔法くらいですから……魔法科があればそこにするのですが」


 魔法は騎士科に組み込まれている。他の科でも教えることには教えるが、大体下級まで。中級以上となると殆どが戦闘向けの魔法となるので、騎士科でしか教えないのだ。

 といっても、既に最上級魔法にまで手を出している身としては、物足りなさを感じる所だ。

 正直、学園で学べる事はそう多くないだろうとも思っている。リュカから魔法を教わって三年、すでに初級、下級の魔法は殆どが詠唱破棄できるまでになった。中級魔法もライトランスの詠唱破棄ができる。

 それでも学園に入学する理由は、入学案内に目を通した際に図書館という文字が目にはいったからだ。

 この家の本もかなり種類が豊富ではあるが、図書館程ではない。現に最上級より上の魔法書はこの家にはない。最上級魔法も一冊のみだ。

 この学園の図書館であれば、最上級魔法についての魔法書やそれ以上の魔法に関する書物がある可能性は高い。要は、図書館に自由に出入りする権利が欲しいのだ。

 ……それに、前世ではろくに学校に行っていなかった。だから、学校生活というものに憧れているというのもある。


「じゃあ、私も騎士科かな。他はなんだかよくわからないし」


 商業や農業、鍛冶といったものはルナからすればなにをするかも検討がつかないのだろう。それにルナも貴族の娘だ。そういうものからは離れた位置に居るのも事実。

 ならば、騎士科を選ぶのは当然だろう。


「ルナ、騎士科では剣を折ってはいけませんよ」

「すぐに折るからな」


 とはいえ、ルナが騎士科に入るのは些か不安もある。

 剣は騎士の誇りとされている。しかし、ルナが全力で剣を使えば簡単に折れる。果てには素手が一番強いと言い出す始末だし、実際に素手で戦った方が強い。

 そんな中に、ルナが入っていっても大丈夫だろうか。


「そんなことないよ」

「ルナちゃんが折った剣、累計何本かしらねぇ」


 ルナ本人はちゃんと剣を使えているつもりなのだろう、少しムッとして否定するが、その様子を見ていたリュカが額に指をあてて、困ったような表情でそう言う。


「うぐっ、大きくなったら返します……」


 痛いところを付かれ、尻すぼみなりながらルナはそう答える。


「ふふ、冗談よ」


 楽しそうな笑みを浮かべてそう言うリュカ。

 実際、稽古で使っていたのは木剣か刃を潰した安物の品だ。折れた所で困るようなものではない。


「ルークはどうしますか?」


 ルナとリュカのやり取りを尻目に、俺はルークにそう聞く。


「そうだな……やっぱり騎士科だな。折角だし他の事にも手を出すってのはありかもしれねーけど、今はまだ剣と魔法で精一杯だし」


 ルークにとっては必要ない事であるかもしれないが、自分の知らない事に興味があるのだろう。

 まだ魔法はまだ習熟には至っていないが、俺から見て剣の方は既にかなりの腕があるように見える。最も、本人はまだまだだと思っているようではあるが。

 剣の腕を伸ばしたいのであれば、騎士科はおあつらえ向きだろう。

 何が必要でその為に何をすべきかは、よくわかっているようだ。


「ルークはしっかりしているので、安心ですね」

「まあ、一番の理由は俺が居ないと、ルナを止める役が居ないってのなんだけどな」

「確かに、それは否めませんね」


 ブレーキ役とアクセル役。コンビとしては良い感じの兄妹だ。


「何々? 何の話? 私もまーぜてっ」


 ……アクセルが常にベタ踏みなのを除けば




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