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選択肢が拗ねました  作者: esora
本編
68/206

67 中毒にあらず

「え?」

「……女の子?」


 栗色の髪の毛を揺らしながら白いワンピースを着た少女が少し離れた場所から私たちを見つめている。

 白い靴を鳴らして近づいてきた彼女はワンピースの裾を少し持ち上げて淑女の礼をした。

 その姿が可愛くて思わず頬を緩ませてしまった私に、神原君が目を見開いて腰を浮かす。


「ギン! お前っ」

「どうどうどう。落ち着け直人。俺はホンモノだ」

「何だよそれ、どうやって信じろって」


 少女の背後からひょっこりと姿を現した鳩に食って掛かる神原君を、鳩がたじろぎながら宥めている。

 人語を話す鳩は、美羽もどきと会う前に出会ったものと同じで違いが分からない。

 神原君は拳を強く握り締めて射るように鳩を睨みつけており、怒りのオーラを纏っているせいか空気がビリビリと震えているような気がした。

 殺気や怒気を肌で感じるというのはこういう事なんだろう。

 私はそう思いながら周囲を見回し、イナバの姿がない事に気がついた。

 後でと言って別れたからここにはいないんだろうか。


「はじめまして。わたしは【かんそくりょういき】のかんりしゃです」

「初めまして。羽藤由宇です」

「神原直人です」


 恐らく彼女は私と神原君の事を知っているだろうから、こうして自己紹介をしても意味はないけど。

 それでも挨拶してしまうのはその行為が身に染みているからだろう。

 にっこりと笑った少女は、小走りで近づいてくると座ってもいいかと尋ねてくる。

 私が神原君に視線を向ければ彼は「どうぞ」と笑顔で告げた。

 そうは言ってもテーブルは小さく椅子は私と神原君が座っているものしかない。

 どこに座るのか、私が立てばいいのかと考えていると少女は「うんしょ」と声を上げてテーブルに小さな手を置いた。

 その瞬間に小さな円形のテーブルは楕円形へと変わり、椅子の数も増えている。

 おまけにテーブルの上に乗っている茶器やお菓子類も増えていて私と神原君は顔を見合わせ首を傾げた。

 どこで変わったのか、違和感無く変化した目の前の光景に私たちが戸惑っていると少女は白い鳩が器用に注いだお茶を飲んでにっこりと笑う。

 可愛い子には違いないけど、恐らく魔王様と同等、それ以上の力を持っているだろう。

 【観測領域】の管理者というのが嘘でなければ、彼女こそが世界を監視してる存在になる。


「おう。お前とは初めましてだな。俺はギン。ナオトの相棒やってるんで一つよろしく」

「はぁ、どうも」


 人見知りだとか聞いていたような気がしたのは気のせいだろうか。

 馴れ馴れしい言動に気圧されながら差し出された右翼と軽く握手をする。


「ギン……」

「そんな怖い顔で睨むなって。忍ちゃんとはラッキースケベして、えぐっちから最近妙に懐かれてる色男が台無しだぜ?」


 忍ちゃん? えぐっち?

 どこかで聞いた事のある名前だと思いながら首を傾げる。

 神原君は慌てたように両手を振りながら「違うんです、違うんです」と必死に繰り返していたがどうしたんだろう。

 彼の相棒はニヤニヤとした様子で「クルックー」と鳴くのだが馬鹿にしているようにしか見えない。


「ああ。なるほど」


 そうか二人ともキュンシュガのヒロインか。

 最近はもうこの世界が恋愛ゲームの世界だという事を忘れてしまうくらい、恋愛とは縁の無い状況で生きている。

 もっとも、端役でしかない私にそうそうフラグが乱立するはずもないけど。

 神原君は一応主人公だったなぁと思いながら微笑ましく思っていると、彼は顔を真っ赤にして「事故ですから! フラグ立ってませんし!」と必死に告げる。

 モテることは悪いことじゃない。ハーレムを作って鼻の下伸ばしてようと何をしていようとそれは彼の勝手だ。

 何もしていないのに自然と可愛い子が寄ってくるとか、大した事してないのにそういう子達から頼りにされてしまうとか、現実で聞いたら「もげろ」と言ってしまいそうなものだが神原君なら仕方ない。

 素敵な青春を謳歌しているのねと生温い目で見つめながら内心で舌打ちしてしまうが、仕方ない。

 私と彼の立ち位置は全く違うんだから羨んだところでどうしようもないだろう。

 しかし、なつみが関係してくると私や兄さんが漏れなく動き出すというのは彼も知っているだろうから不用意な行動はしないはずだ。


「生徒会副会長、ツンデレ枠で真面目な性格の三年生、大井忍とウワサ話大好きポジティブで明るいムードメーカーだけどちょっとウザがられてる二年生の江口志保……か」

「大丈夫ですよ! フラグ立ってないですからね!」

「主人公が階段を上っている時に下りてきた大井忍とすれ違い、起こるイベント。資料を運んでいた大井忍がバランスを崩して主人公が咄嗟に庇い下敷きになる時に体が密着してしまうという通称ラッキースケベ」


 それも主人公の顔に大井忍の胸が押し当てられるという正にラッキースチルが出る。

 主人公が下敷きになってるから押し倒したわけじゃないし、逆に押し倒されてる側なんだけど理不尽にも平手打ちを食らってしまうという。

 あれは本当に酷い。

 いくらパニックになって恥ずかしくてたまらないとは言え、暴力はどうかと思う。涙目で自分を抱きしめるようにしながら下敷きにしてる男にビンタ。

 ありきたりな展開で、お約束とも言える光景なんだろうけどドン引きしたのを思い出した。

 きっと私が女だからそう思っただけで、男にとっては可愛らしく見えるのかもしれない。


「そのイベント発生の為には、なつみの手伝いを数回行い生徒会室にて生徒会長と会話するフラグを立てなければいけない。ちなみにその為には……」

「ストップ! ストップです由宇さん!」


 おや、神原君。

 何をそんなに必死になっているのかね。

 これはゲームをしたことがある私や君ならば良く知っている事だろう?

 あぁ、そうかなるほど。江口志保についての説明もすべきと、そういう事か。

 了解した。


「えぐっちこと江口志保から最近懐かれてる。なるほど、という事は何度か彼女のパシリをしたということだね。放課後に一緒に帰ろうと誘われたり、休日は暇かとデートのお誘いがあったりするんじゃないのかな?」


 怒涛のようにその光景が頭の中に蘇る。

 自分でも恐ろしいくらいに前後のやり取りを説明しながら私はにっこりと微笑んだ。

 私と神原君が前世で遊んだと思われるゲームの内容ですら、嘘だったとしてもどうやら彼はその通り(・・・・)に色々なヒロインと仲を深めているらしい。

 いいね、青春。

 いいよね、甘酸っぱいって。

 本当に、羨まし過ぎて泣けてくるわ。


「どうしてかな。ユウがとても男前に見えるんだが」

「というか、ギャルゲー内容詳しく覚えてるって……中毒者か」

「ああああああ、由宇さぁぁぁん」


 フラグが立ってないとは言ってたけど順調に立ってるじゃない。

 モテないに比べたらマシじゃないと呟けば、がっくりとしたように神原君が大きく肩を落とした。どうしてだろう。

 例え作られた環境であっても、楽しんでしまえばいいのに。

 それとも、相手の気持ちをちゃんと考える彼のことだからそうなるように仕組まれて好きになられても嬉しくないというところだろうか。

 それには私も同意する。


「ギン……」

「いや、俺のせいじゃないし。俺はホンモノだよって証明する為に、直前までお前が経験してきた事をだな」

「ハマム・マッハシ、ハマム・マッハシハマム・マッハシ」


 澱んだ目をした神原君が急に呪文のようなものを唱え始めた。悪魔召喚の呪文か何かか?

 それを聞いた魔王様は「はははは」と笑い、ギンと呼ばれた白い鳩は羽を大きく広げて神原君の元から離れる。

 情けなくも少女に隠れるようにした鳩は「美味くない! 美味くないから!」と叫んでいた。

 少女は管理者だと自己紹介してから特に何も話さない。

 目が合えばにっこりと微笑まれるので私も笑い返すが、八つ当たりできるような対象じゃないので仕方なく私は魔王様に目を向けた。


「魔王様、前二回も魔王様がああやって介入してきたんですか?」

「まさか。あんな事は今回が初めてだよ。間に合って良かったけれど」

「……察知できるなら、前二回も何とかなったんじゃないですかね?」

「それは無理だね。今回初めて君とイナバが同調したお陰で、私はあの場に行く事ができたのだから」


 同調。

 それはイナバが私の思考を読む事と関係があるんだろうか。

 眉を寄せて考えていると、魔王様は大体考えている通りだよと告げる。


「君はイナバと同調できる。同調とは自分と相手の精神波を合わせること。一度繋がってしまえば再度接続するのは難しくない」

「そこまでします?」

「言い訳にしか聞こえないだろうが、身の安全の為だよ」


 それは誰の身の安全の為なのだろう。

 魔王様に危険が及ばないようにする為なのか、それとも素直に私の心配をしてくれていると思っていいのか複雑だ。


「もちろん、常時同調したままじゃない。基本的に同調できるのは、接続器がある場合か夢の中で。夢を見ている時は精神に干渉しやすいからね」

「……はぁ」


 接続器とはスマホとイヤホンの事だろうか。

 【観測領域】で監視され、イナバを通して監視され、同調してまで行動を制御されていたのかと思うと怒りを通り越して呆れてしまう。

 それならばいっその事、人格などなくしてしまえば良かったのに。


「イナバは私の一部でもあるからね。イナバを通してユウと同調する事も可能だ」

「えっ」

「そんな嫌そうな顔をしなくても大丈夫だよ。イナバは君に随分懐いているようで、君を護る為に強固な防御壁(プロテクト)を張っている。不完全な私では弾かれて終わりさ」

「でも、だったら今回はどうして……」

「緊急事態だからイナバが融通をきかせたんだろう。自分では無理だと理解していたからこそ、かな」


 それは主でもある魔王様の為なのか。

 それとも私の事を心配してくれての事なのか。

 イナバにはっきり聞いてみたい気もするけれど、怖くて聞けそうにもない。

 そう思ってから、私は自分で思う以上にイナバの事を気に入っていたんだなと苦笑した。


「イナバが、助けを?」

「ああ。自分では無理だから、君たちを助けてくれってね。意外で驚いてしまったよ」


 その言葉も本当なのか嘘なのか。

 真っ先にそう疑ってしまう自分が悲しくなりながら、先に帰っていると言っていたイナバを思い浮かべた。


「予想外の邪魔は入ったが、君たち二人を逃す事はできた。これは成功と言ってもいい」

「今までは無理でした?」

「今までにはない事だよ。つまり、新しいルートというわけだ」

「新しい?」


 神原君と出会った事も初めてではなかったという事実に落胆している私に、魔王様は楽しそうな声でそう告げる。

 この状況でウキウキできるだけでの余裕が羨ましいが、上位にいる彼ならば当然なのかもしれない。


「人の行動はデータがあれば簡単に予測できる。幸い、世界は一定期間をループし続ける構造になっているから、そこに存在する人々のデータには困らない。勿論、君やナオトもだ」

「……今までの行動パターンから次はどんな言動をするか、予測できていた?」

「そういう事だな」


 何だろう。この、過程から答えまで書かれている解答書通りに動かされていた気分は。脚本通りに動いているのと似ているがちょっと違う。

 魔王様たちは私や神原君たちがどう動くかを知っていて、ただそれを眺めていただけ。

 あれだけ苦痛に耐え、辛酸を舐めて這いずりながらも必死に前に進もうとしていた私たちを「予定通り」とか言いつつ高みから見物していたんだろう。

 脚本通りかと薄々思っても、そんなわけがないとどこかで馬鹿にしていた。

 けれどこうやって魔王様の口からそれを肯定するような言葉が出てしまうと、何もかも馬鹿らしくなってしまう。

 私と神原君がここでお茶を飲みながら物事を整理している今だって、彼らにとっては予定通りの事なんだろう。


「しかし今回ばかりは違った。君が今までの予想から外れた行動を取ったからだよ」

「それってつまり、今まで大体同じ道を通ってきたって事ですか」

「もちろん」


 そうはっきり断定されてしまうと何も言えない。

 この先も勝手にしてくれと投げそうになりながら小さく唸る私を、魔王様の声は笑う。

 馬鹿にしたような笑いではなく、とても楽しそうなそんな声。

 いい声なのに、耳障りだとしか思えない。


「どこで何をしたかなんて、覚えてないんですけど」

「君たちが【隔離領域】まで到達できたのは今回を含めて三度目。前二回はどちらとも多少の寄り道はあれ、大体同じ道を通り同じ選択をしてきた」

「ふーん」

「ソレだよ」


 それ、と言われて顎をしゃくられる。

 落ち窪んだ眼光に宿る光の先を辿りながら私は自分の頭を触る。この辺りを見てるような気がしたんだけど気のせいだった?

 さわさわ、と魔王様の反応を確かめながら頭を触っているとシュシュで結わえている部分に何かある。


「ん?」


 おかしい。部屋のジュエリーボックスの中に大事にしまっているはずのこれがどうしてここにあるんだろう。

 私は眉を寄せながらそれを外すと視界に映るように前へ持ってくる。

 決して高級なものじゃないけど、自分だったら買わない素敵な髪飾り。

 良い気分になって暫くずっとつけていたけど、兄さんからの「誰からもらったんだ? 男か?」発言が鬱陶しくてしまっていた。

 なつみも母さんも可愛いと言ってくれたのに、どうして兄さんはそんな言い方しかできないんだろう。

 

「あ、それ僕がプレゼントした……」

「そう。バラの髪飾り。最初は綺麗な白だったんだけどね」


 死亡エンドを繰り返す度に純白のバラは赤に染まってゆく。この赤色は自分の血か、と苦笑していれば神原君は困ったように椅子に座り直した。

 仲直りしたのか彼の相棒らしい鳩が魔王様の上に止まっている。

 軽く手で払おうとすれば手の上に乗られた。重い。

 人見知りが激しくて私に会うのを拒んでいたはずの鳩だが、どこからどう見てもそんな風には見えない。

 クルックー? と覗き込むように見つめられた私は随分馴れ馴れしい鳩だと眉を寄せる。


「ユウがナオトのルートに介入した。それもイレギュラー」

「え、でも偶々なんじゃないんですか? 全て予測できると言っても完璧じゃないでしょうし」

「そのとおり。かんぺきじゃないけど、みんなみちからははなれない。そういうしくみになっていたの」


 そんな事を言われても困る。

 私は私の意志で動いていたわけで。でもそれすら膨大なデータがあれば予測できた行動なんじゃないか。

 あの場に辿り着いて美羽と対峙し、敗れ去ってループを繰り返すパターンというのが一つのお話になっているとするなら大したものだ。

 観客などいないのに、誰かの自己満足の為に演じさせられ退場させられる。

 そして、再び舞台の幕が開くのだろう。再びお話を始める為に。

 

「ささいなことのつみかさね」

「そうそう。お前が気付いてないような些細な言動が積み重なって、新しい道ができた」

「私のせいですか?」

「お前って言うより、直人が与えた影響が大きいんだろうけどな」


 鳩が何故か得意げに話してくれる。

 仕組まれていた世界でも、主役を与えられた神原君の影響は強いのか。

 神原君は複雑そうな顔をしてチラチラと私を見ていたが、私はその視線を受け流しながらカップに口をつけた。


「最初のイレギュラーは君にお兄さんができたことだろうね、ユウ」

「はぁ。そうは言われましても」

「そうそう、あれには俺もマジでびっくりしたわ」


 舌ったらずな少女が言うには、ループを繰り返す中での不都合は全て修正されてきたらしい。

 けれども一度、世界のループを止めようとして失敗した結果とても不安定な状態で世界が存在することになったと言っていた。

 ループを止めても世界の運行は自分がするつもりで、それだけの力もあったと告げる少女もまた魔王様と同じく完全な状態ではないらしい。


「なるほど。つまり【隔離領域】に閉じ込めた存在が、元々世界を作ったモノというわけ」

「そうなの」

「神と呼ばれる存在の執念と、世界を維持する為だけに存在する人々。神を倒してループを打ち消しても、世界の管理はちゃんとできるはずだったんだが予想以上に相手が強くてな。完全に封じ込めることもできずこの有様だ」


 確かに完全に封じ込めることができたなら私や神原君が三度も【隔離領域】に入れるはずが無い。

 あれは向こうから招かれたから仕方がないと告げた鳩に神原君が「何故?」と鋭く問えば「解放して欲しいからに決まってんだろ」との答えが返ってきた。

 これはまた面白い。

 無駄にループを繰り返す私たちにどうして神とやらは自分を解放できる素質を見出したのか。


「夢の世界を通じて世界に生きる人に接触し、意のままに操る。そうして自分を解放させようとしていたというわけか」

「ああ。相変わらず【隔離領域】からは出られないけどな。その程度ならできるって事だ」

「何とかできないのか? その力を抑えるとか」

「それはとてもむずかしいの。わたしのちからもちらばっているから、せかいをほうかいさせないようにいじしてるくらいしかできなくて」


 それなら魔王様の力のように回収すればいいじゃないかと私が提案する。

 けれど、少女は悲しげに首を横に振って「とてもむずかしい」と呟いた。

 魔王様みたいに石版で回収というわけにはいかないのか。


「僕たちとしてはループを破壊する為に三度も【隔離領域】に行ったわけですが、相手としては寧ろ好都合でいらっしゃいということですか」

「そうだな。あいつらはどうにかして規格外のお前たちを利用したいらしい。だが、上手く行かなくて何度も同じ事を繰り返してる」

「もう既に利用されてると思うけど……」


 これ以上私と神原君の何を利用しようと言うのか。

 前二回はあの場で朽ち果てた後、すぐに私たちの体はループすべく【再生領域】へと飛ばされたらしい。

 そう言えば途中で目覚める時期がずれたのは気のせい?


「ループの始まりって、人それぞれ?」

「まぁ、大体決まってるな。五年続けばいい方だ」

「あー」

「十年もないのか」


 何と言う寿命の短い世界。

 だったら私の持っている小さな頃の記憶も全て、作られた偽物という事になる。思い出が偽物なんて傷口に塩を塗るような事を平気で言ってくれるなぁと思っていれば、ギンが慌てたように私の前にやってきた。


「お前たちがここに来るのは今回で三度目だが、その前は普通の世界だったんだからな?」

「でもループしてたんでしょう?」

「……いや、してなかった」

「は?」

「へ?」


 何だその衝撃的事実。

 最初からループする世界を神様とやらは作ったんじゃないの?

 話が違う、とばかりに鳩を睨みつければ彼は困ったように視線を少女へと向けていた。

 少女は小さく頷くと笑みを浮かべる。

 その笑顔が悲しそうに見えた私は近づいてきた魔王様に手を置きながら息を吐いた。





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