まったり
山田初子は、ごく普通のばーちゃんである。
毎日甘いお菓子で苦いお茶を啜り、毎日孫と一緒に折り紙を折る、齢70のばーちゃんである。
今日も今日とて、朝ごはんの後片付けをしたあと、行きつけのコンビニで100円の羊羹とワッフルを買って家路についていた―――のだが。
キイィイ!!キ――――イイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
山田初子の魂と…、女神が対面している。
「山田初子さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「そうかい」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」
────────
山田初子(70)
レベル68
称号:転生者
保有スキル:まったり
HP:2
MP:80
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「草原は気持ちがいいねえ…」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…ばーちゃんの前に現れた!
「おや、これはなんだい?」
うろたえない、ばーちゃん。
「ちいととはなんだろうね??保有スキル??《まったり》??いつもみたいにしていればいいのかねえ??」
うばほん!!
ばーちゃんの部屋が出てきたぞ!!
こたつの上のみかんも、テレビ台の引き出しの中に収納してあるおせんべいなんかのおやつの袋も、バッチリ補充されている!
鏡台の横にはキッチンに行かなくてもいいように水のペットボトルがずらり、おちゃっぱのカンカンの中身もみっちりと詰まっている!
「甘いもんでもご馳走しようかねえ…えっ、よっこらしょ」
ばーちゃんがお菓子を取りに行こうとしたその時、こたつの布団につまずいてバランスを崩した!
あぶない!!
すかさず触手を伸ばしたスライム!!
新鮮な猛毒がばーちゃんのからっからに乾ききったしわしわの皮膚に染み込んでいく!!
「ぐべ?!」
ばーちゃんの丸まっていた背中がびゅッとまっすぐに伸びた!!
すご~い!!伸ばせるんだ!!
スライムの感心はさておき、ばーちゃんは猛毒が全身に回って絶命した。
なお、ばーちゃんが二ヶ月かかって消費していたお茶や水、おやつはスライムが二時間で完食したらしい。
「う、うーん???夢でも見とったかね??」
ばーちゃんは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。
コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
ばーちゃんはコンビニで100円の羊羹とワッフルを買って家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「おそがいねえ、なまんだぶ、なまんだぶ…」
ばーちゃんは、共働きで忙しい息子夫婦をサポートしながら孫の世話にせいを出し、ひ孫には会えないだろうねえと寂しく思っていたものの、思いがけず対面が叶い、大喜びではしゃぐ日々を過ごしていたらいつの間にか100歳を越えていたある日、日向ぼっこをしている最中に天に召されていて家族がパニックになったのを見ながらにこやかに成仏したとのことです。




