夢見がち
沢田あんずは、ごく普通の夢見がちである。
毎日夢小説を綴り、毎日授業中にニラニラして教師に気味悪がられている、齢14の夢見がちである。
今日も今日とて、いきなり難しい問題を解かせにかかったムカつく塾講師を妄想の中でコテンパンにしたあと、行きつけのコンビニで季刊誌異世界LOVE冬の特大号とチャーシューまんを買って家路についていた―――のだが。
キイッ!!キキキキ――――!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
沢田あんずの魂と…、女神が対面している。
「沢田あんずさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「キタ――(゜∀゜)――!!!」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
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沢田あんず(14)
レベル59
称号:転生者
保有スキル:夢見がち
HP:3
MP:45
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「というわけで、いきなり草原に放り出されましたぞ!!ぎゅふふ…これから一体どうなる?!チートでグフフ、さらには…えへ、えへへへへ!!!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…夢見がちの前に現れた!
「スライムかあ…わりかし透明でキレイだけど…なんかツルッとしててつまんないな、もっとこう、ド派手なドラゴンとかの方がよかったよー!」
うろたえない、魔法使い。
「あ、待って!保有スキル…《夢見がち》使ったら、スゴイの召喚できるんじゃない?!」
スライムはあまりにも失礼なことを堂々と目の前でぬかす夢見がちに…心底呆れかえっている!!
「すごいイケメン悪魔出て来い♡つよつよドラゴンかもーん☆でもってカワイイ妖精…」
ばたっ!!!
夢見がちはあっと言う間に魔力枯渇で倒れた。
はらわたが煮えくり返ってきたスライムがその場に夢見がちを放置して去ろうとした時、ブサイクな悪魔と腐ったドラゴン、妖精になりそこねたキモいガサガサの塊があらわれた。
何やらもめ始めた三匹だったが、スライムの仲裁により夢見がちをキッチリ三等分し、事なきを得たようだ。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
夢見がちは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。
コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
夢見がちはコンビニで季刊誌異世界LOVE冬の特大号とチャーシューまんを買って家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「今ごろ異世界でロリババアとイチャコラやってんでしょwww」
夢見がちは128879文字に及ぶ夢小説を完成させ、はりきって投稿サイトで公開したものの思うように称賛を得ることができず、ムカついて黒歴史にしてしまったのですが、モラハラ上司のせいで会社を辞めて時間が有り余るようになったころに発掘および大幅な手直しをして再投稿してみた結果、ぽつぽつと反応があったので少しだけ気力を取り戻し、趣味として小説執筆をつづけ、65歳になった時に小さなコンテストで入賞したことをきっかけにブレイクを果たしたのち、取材旅行先の高原で足を滑らせ69歳の生涯を閉じたという事です。
なお、念願の異世界転生を果たしたようですが、残念ながら前世の記憶は取り戻しておらず、ごく普通の村娘として過ごしているそうです。




