こちらね、とってもいい方なの!
大島美津子は、ごく普通の結婚アドバイザーである。
毎日結婚したい人の縁をつなぎ、毎日最低限の大人のマナーを非常識な人に伝授する、齢50の結婚アドバイザーである。
今日も今日とて、どうしても20代と結婚したいと駄々をこねる昭和40年生まれの男性にガチ説教をかましたあと、行きつけのコンビニで美容系ビューチューバーがプロデュースしたストッキングと目玉ホッとパック(二枚入り)を買って家路についていた―――のだが。
キイーッ!!キキキ――――ッ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
大島美津子の魂と…、女神が対面している。
「大島美津子さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「あらま」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
────────
大島美津子(50)
レベル47
称号:転生者
保有スキル:こちらね、とってもいい方なの!
HP:99
MP:108
────────
「というわけで、いきなり草原に来てしまったわ、どうしましょう…」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…結婚アドバイザーの前に現れた!
「これは…スライムね?大昔にトラクエプレイしたことがあるわ、お隣のお兄ちゃんと早クリ目指して競って…って、どうしよう」
ボチボチうろたえる、結婚アドバイザー。
「とりあえず、いただいた保有スキルを試してみましょう、《こちらね、とってもいい方なの!》って…もしかしてこのスライム…さん、ご縁を求めていらっしゃる?」
スライムは頬を薄ピンク色に染めて、モジモジし始めたぞ!
どうやら婚活にめちゃめちゃ興味があるようだ!!!!
うばほん!!!
会員数12万匹越え、真剣に結婚を考えているモンスターの皆さんに年間300体を紹介可能、業界ナンバーワンの実績を誇る【まるモ婚活】のアドバイザールームが出てきた!!
「では、まず初めに…スライムさんのプロフィールを作成しましょう。お名前は?…ピゲルさん、ステキなお名前ね、まあ、お父様がお付けになったのですか?愛されて育ったのですねえ。年齢は…544歳、まだお若いですね、きっといいお嬢さんが見つかりますよ!…ご趣味は?あらステキ!……、……」
30分に及ぶ丁寧な聞き取りを終え、スライムのプロフィールが完成した。
「スライムさんは猛毒をお持ちなので、毒耐性は必須ですね。年齢は…上下100歳差までにしておきましょう。正直なところスライムさんはかなりお強くておモテになる要素が高めなの、欲張って年齢問わずにしちゃうといい出会いが埋もれてしまうから…、条件を絞って様子を見たいわ?…あら、コチラのお嬢さまがぴったりみたい!お会いになる?」
お見合いしたスライムは、無事初彼女をゲットした!
ものすごい凄腕縁結び人がいると言う噂が秒で草原に広まった!
モテないモンスター達が、我先に縁を繋いでもらおうと草原に集まってきたぞ!
一人ずつお話をうかがうので並んでお待ちくださいと声を上げた結婚アドバイザーは、380年も独り身を貫いているんだから自分を最優先するのが当然だろうと声を荒らげたマナー知らずの大巨人に握りつぶされ絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
結婚アドバイザーは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。
コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
結婚アドバイザーはコンビニで美容系ビューチューバーがプロデュースしたストッキングと目玉ホッとパック(二枚入り)を買って家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「お気の毒に…」
結婚アドバイザーは、「45にもなって男の好みの味のメシが作れないなんて女失格」と暴言を吐かれたお嬢さんを慰めていた時に男性会員と揉め、理不尽な会社規定にぶち切れて退社を決めましたが、長きに渡って縁を結び続けて蓄積された知識やテクニックやグチを動画サイトで惜しみなく拡散したところ信じられないくらい信者を得ることになり、業界1位の会員数を誇るマッチングサイトから運営陣に加わってほしいと懇願されて快諾したのちそこそこ活躍し、77歳で生涯を閉じたと言うことです。
なお、結んだ赤い糸の多さが絶賛されて天界に引き抜かれ、今は凄腕キューピッドとして大活躍しているとのことです。




