重いかな?軽いかな?
ずっしんは、ごく普通の試し石である。
毎日いろんな人に持ち上げられて、毎日ぼちぼち意外に重いなと賞される、齢413の試し石である。
今日も今日とて、やんちゃな修学旅行生が調子に乗り過ぎて引率の先生に叱られるのを目の当たりにしたあと、参拝客に磨かれながら1,000円札を崩すためにコンビニでイチゴクリームソーダとチョコビットを買ってこちらに向かってくるカップルを待ち受けていた―――のだが。
キイ―ん!!ギュギギュギャ―――――ン!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ずぶぐわしゃぁああ!!
ぼりゅ。
真っ白な空間。
ずっしんの魂と…、女神が対面している。
「ずっしんさん、あなたは気の毒ですが石生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「……。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
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ずっしん(413)
レベル108
称号:転生石
保有スキル:重いかな?軽いかな?
HP:4000
MP:85669
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「………?」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…試し石の前に現れた!
「………。」
微動だにしない、試し石。
「………。」
動かないし、食べものじゃないよね…?
スライムは丸っこい石を見て、何となく自分と似ているなあと思っている!
「………。」
スライムはその場を立ち去ることを決め、最後に記念に突っついてみることにした。
試し石の端っこをちょびっと触った、その時。
…うん?
これは…!!!
試し石に染み込んだ人々の願いがじわっと滲み出して、スライムの触手に浸透した!
ちょ…ナニコレ!!
得も言われぬうま味がハンパないんですけど?!
スライムは試し石をそっと撫で、優しく舐るべく、覆いかぶさった。
ほんわりじんわり…人々の願いが溶け出してゆく…。
しばし幸せな気分に浸っていたスライムだったが、濃厚な感情の名残は瞬く間に枯渇してしまった。
味気ないただの重たい塊と化した試し石をジャリジャリと咀嚼して飲み下したスライムは、ちょっぴり重たくなってしまった胃袋を抱えて草原をあとにした。
「………!」
試し石は時間を巻き戻されて、神社の境内で参拝客に撫でられていた。
コンビニで1,000円札を崩してきたカップルが5円を投げ込んだ時、ちょっとだけ時空がゆがんでそこそこ驚いたのだが…それに気づくものはいない。
試し石は、お参りを済ませるや否や賽銭箱の前でイチゴクリームソーダを飲みチョコビットを仲良く半分こしたカップルを見送った。
鳥居の向こう側にあるコンビニの駐車場に小さな飛来物が落下して…人々が騒ぎ始めた。
「……ふぅ」
試し石は、人々の願いを受け止めながら重くなったり軽くなったりしつつ、長いこと神社の境内でのんびり過ごしていましたが、ある時時空を超えておかしな術者がやって来た際に連れ去られてしまい、今は3度の飯より錬成が好きなゴーレムマスターのもとで、美味い赤土をたらふく食べさせてもらいながら日々獣人やエルフなどとともに魔獣を懲らしめる役目を担っているそうです。




