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38 神寄せの儀式、やっちゃいました

新連載、開始しました!


宮廷の『スキル調律師チューナー』 我が国のスキルに調律は必要ないとお払い箱になったので、早期リタイアして旧友のいるエルフの里で暮らす。後になってスキルが暴走したので戻ってきてと言われても困るのだが


オッサン好き、ざまぁ好きの方には楽しんでいただける内容となっておりますので、ぜひ読んでみてください!

このお話の最後に、小説へのリンクがあります。

 『運び屋スカイ』は中層階級エリアを征服し、とうとう上流階級エリアにまでシェアを伸ばしていた。

 そんなある日のこと、本拠地である下層階級エリアの事務所に、ひとりの老人が訪れる。


「ふが、ふが、ふが……。おひさしふりれす、らふらいんひゃま……」


 その老人は黒いローブをまとい、フードを目深に被っていた。

 袖から覗く腕はミイラのように渇死していて、さらに歯が1本もないので何を言っているのかさっぱりわからない。


 老人が入れ歯をはめてようやく、言葉が聞き取れるようになる。


「お久しぶりです、ラブライン様」


「あの……すみません、どちら様ですか?」


「ワシです、ヒラクルです」


「ええっ、スカイ様のお父様の!? 少し見ない間にお歳を召されて、いったいどうされたのですか!?」


「いや、スカイという跡継ぎができて安心してしまったのでしょう。

 このとおり、すっかり老いぼれになってしまいましたわ」


 ラブラインは痛ましい顔をしていたが、隣にいたレディバグは厳しい顔つきで問う。


「ヒラクルよ、いったい何用なのだ?

 貴様の統括するハイランダー一族が、我らにどれだけのことをしたか、知らぬわけではあるまい」


「ああ、レディバグよ。もちろん知っておる。なにもかも、部下たちが勝手にやったことだ。

 しかし責任逃れをするつもりはない。先ほどスカイと会ったのだが、ちゃんと謝って許しを得た」


「なに、それはまことか?」


「当然だ。なにせスカイは我が一族を背負って立つ希望の星だからのう。

 そこで仲直りを記念して、ワシの屋敷で晩餐会を開くことにしたのだ。

 スカイはすでに屋敷で待っておる。みなさんも来るであろう?」


「はい、ぜひご一緒させてください。スカイ様が幼少期を過ごしたというお屋敷を、一度拝見したいと思っていたのです」


 『あおぞら荘』の10人の女性たちは、ヒラクルがよこした馬車に乗って事務所をあとにする。

 それから夕方になって、スカイが配達から戻ってきた。


「今日は隣国まで行く配達が何軒もあったから、一度も事務所に戻れなかったなぁ。

 昼メシも一緒に食えなかったから、ラブラインはきっと寂しがってることだろう」


 しかし事務所には従業員だけで、いつも花咲く笑顔で迎えてくれる女性陣はひとりもいなかった。

 不審に思って従業員に尋ねてみると、昼にヒラクルが来て馬車で連れて行ったらしい。


「なんだと!? どうしてラブラインたちはノコノコついていったりしたんだ!?」


「ヒラクル様は、スカイ様とはすでに仲直りされていて、いっしょに晩餐を召し上がるとおっしゃっていましたが……!?」


「そんなわけあるか! アイツは俺を『追放』してから、ただの一度だって会いに来たすらないんだぞ!」


 スカイは疲れた身体に鞭打つように、ヒラクルの屋敷に向かって飛んだ。

 しかしヒラクルの屋敷にはヒラクルどころか、ラブラインたちすらいなかった。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 その頃ヒラクルは、セイクルド王国のはずれにある、とある岩山の山頂にいた。

 ステージのような岩棚の上には魔法陣があり、そのまわりには等間隔で磔台が。


 磔台には、10人の少女たちが拘束されていた。


「お父様、これはいったいどういうことなのですか!?」


「ラブラインよ、お父様などと気やすく呼ぶ出ない! これからワシのことは魔王様と呼ぶのだ!」


「ま、魔王ですって!?」


「左様! これよりセイクルド王国のハイランダー一族に伝わる、『神寄せの儀式』を始める!」


「『神寄せの儀式』だと!? それは、まさか……!?」


「左様! ハイランダー一族はもともと、邪神信奉の一族!

 だからこそ天から堕ちた神を神とは呼ばず、魔物として狩るという風習を定着させたのだ!

 なぜならば神は天から堕ちたのではなく、地の底からやって来る悪魔を喰らうために、姿を変えてやって来るのだからな!

 我らが神と信奉する、邪神が生み出した悪魔を!」


「ぐぐぐっ……! ハイランダー一族は、腐っているどころではなかったのか……!」


「なんとでも言うがいい! 『神寄せの儀式』は禁断の秘技とされておる!

 なぜならばその国の王女と乳母と騎士、さらに7人の生娘の生贄を捧げねばならんのだからな!

 儀式を行なった時点で、その国は滅ぶとされているのだ!」


「な、なぜなのですか!? スカイ様がおられれば、この国はもうハイランダー一族のもの同然ではないですか!」


「そのスカイこそが儀式の発端なのだ! あやつは無能であるうえに、このワシの言うことに逆らってばかりおったのだ!

 ヤツがこの国の王になどなったら、真っ先にハイランダー一族を迫害するに違いない!

 だからこそワシは、こうして最後の手段に出たのだ!」


「こ、こんなことをしても無駄です! スカイ様がきっと助けに来てくださいます!」


「ここは我が一族でもワシしか知らぬ秘境中の秘境!

 たとえスカイが千里を飛ぶ者だったとしても、この場所がわらかぬ以上はどうしようもあるまい!

 さぁ、月が雲に覆われた! 今こそ、魔界への扉が開く時!

 これからそなたらをたっぷり怖がらせて、その恐怖を糧に、我らが邪神を呼び出すとしよう!

 邪神が復活すれば、このワシは魔王となれるのだ!」


「いっ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!?

 す……スカイ様っ! スカイさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」


「わっはっはっはっはっ! 叫べ叫べ! 泣き喚け!

 そなたら助かるには、空から神でも降ってこねば……!」


 ……ドグワッ……シャァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >先ほどスカイと会ったのだが、ちゃんと『誤』って許しを得た 多分誤字だと思うけど、あながち間違ってないから困るw [一言] そして「振ってこねば」はもはやフラグ
[気になる点] どう考えてもヒラルクが暴走してるだけなのに唐突に父親が魔王なりきりで登場は意味がわからん…
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