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14 王女と幼なじみと、ひとつ屋根の下で暮しちゃいました

 俺の右胸のあたりにいたラブラインは、新生活に向けてぐっ、と握り拳を固めていた。

 その健気な仕草を、俺は素直にかわいいと思ってしまう。


 彼女はふと俺の存在に気付き、「はああっ!?」と息を呑んだ。


「すっ、スカイ様!? なぜこのような所に!?」


「いや、ここが俺の部屋だから」


「あああっ!? これも運命のお導きなのですね!

 毎日、お祈りをしていた甲斐がありました! スカイ様とお会いできますように、って!

 私はスカイ様にお会いしたくて、毎日ずっとベランダに出ておりました!

 でもスカイ様のお姿は、いっこうに見えなくて……」


「ああ、俺は下層階級エリアで働いてたからな。王城からじゃ見えなかったかもな。

 でも、よく俺がいるアパートがわかったな」


「はい! それはこちらにいる、わたくしの警護のレディバグのおかげです!」


 見ると俺の左胸のほうには、結い髪の女騎士がいた。


「お前はたしか、コロシアムでフロッグと戦っていた……」


「レディバグだ。あの時は世話になったな。

 コロシアムで会ったとき、貴様は運送会社の制服を着ていたであろう。

 その手掛かりを元に、貴様のことを調べあげたのだ」


「そういうことだったのか……」


「おかげで、これからはずっと一緒でございます!

 ああっ、スカイ様、ずっとお慕い申しあげておりました……!」


 砂埃が舞うなか、ラブラインは俺をぎゅーっと抱きしめてくる。


「な、なりません! ラブライン様! 姫巫女ともあろうあなた様が男と抱擁など!

 おいスカイ、ラブライン様から離れろっ!」


 そしてレディバグは俺をむぎゅーっと押しのけてきて、なんだかしっちゃかめっちゃかだった。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 結局、俺はなし崩し的に『おためし婚』をさせられることになってしまった。

 だって、ラブラインがずっとウルウルした瞳でじーっと俺を見つめてくるので、断れなかったんだ。


 でもまあ、お姫様がこんなボロアパート暮らしに耐えられるわけがない。

 アイリスの正座と同じでたいして持たないだろう。


 すぐにギブアップして、同時に俺への熱も冷めるに違いない。

 それまでは、お姫様のままごとに付き合ってやるとするか。


 ……なんて思っていたのだが、俺はさっそく後悔することになる。

 アパートは即時改築され、次の日から『おためし婚』が始まったのだが、


「朝ですよ、おきてください、旦那様」


 ハッと目が醒めると、そこには4人の美少女が俺の顔を覗き込んでいた。


「うわあああっ!? なんだお前ら!?」


「おはようございます、スカイさん。

 今日は『おためし婚』の初日ということで、ラブライン様にやり方のお手本を示そうかと思いまして」


 ほんわかと微笑むナニーナ。


「スカイ様にふさわしいお嫁さんになれるように、一生懸命がんばります!」


 フンスと鼻息を荒くするラブライン。


 「俺は姫の護衛に付き添っているだけだから気にするな」とレディバグ。

 「なんだか面白そうだからボクも引っ越してきちゃった」とアイリス。


 もはや寝ぼけ眼などパッチリだったが、ナニーナは水の入った手桶を差し出してきた。


「ではラブライン様、私が手桶を持っておりますから、旦那様のお顔を洗って差し上げてください」


「顔くらい、自分で洗うよっ!?」


「そういうわけにはまいりません。もしご結婚なさった場合は、スカイ様は国王となられるのです。

 国王がご自分でお顔を洗うだなんて、とんでもない」


「ここは王の寝室じゃなくてボロアパートだぞ。

 それに百歩譲ってそういうのは使用人の仕事じゃないのか?」


「いいえ、セイクルド王国の伝統で、国王の身の回りのお世話は王妃がすることになっています。

 王妃は国王の妻であり、秘書でもあり、使用人でもあるのです。

 もちろん国王が望まないのであれば、お世話をやめさせることもできますが……」


 しかし「止めてくれ」とは言えなかった。

 なぜならば、ラブラインがタオルを握りしめ、キラキラした瞳で俺を見ていたから。


 俺は観念して、お姫様に顔を洗われた。

 それから俺はようやく寝床から起きだし、『運び屋アイロス』の制服に着替えようとしたのだが……。


 すかさず姉のようなナニーナと、その妹のようなラブラインが、俺の身体に取りついた。


「それではラブライン様、スカイ様のお召し替えをしてください。

 低い位置のお召し替えをするときは、ちゃんと跪いてから行なうようにしてくださいね。

 姫ともあろう方が、国王以外の方の前で膝を折るのは抵抗があるかもしれませんが……」


「いいえ、わたくしはぜんぜん平気です! だってスカイ様はわたくしの旦那様なのですから!」


 ナニーナの気づかいをよそに、ラブラインは嬉々として俺の前でしゃがみこむ。

 パジャマのズボンをえいっとずり降ろしたのだが、現れたパンツに「キャッ!」と真っ赤になって顔を押えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 夜のお世話とかもこのハーレムメンバーでやるのか
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