残された紅茶 (E)
意味ありげな視線を受けて、エリアルドはショーンとルーファスを見返した。
「……殿下にしては珍しく女性に嫌われているみたいですね」
ルーファスが愉しげな光りを湛えて視線を向けてきた。
「人の不幸を喜ぶな」
声を立てずにニヤリとしているが、その笑みは人が悪いがそれでいて端麗だった。
「……なぜ……カーラと気が合うと思ったのだろうな?」
ショーンの言葉にエリアルドも頷いた。
「会ったのはきっと二回ほどのはずだ。私の幼馴染みだから王宮に招きやすいと思ったのか………」
「なるほど……殿下はさすがは、王子さまだ。噂は耳に入らないか」
「噂?」
「エリアルド殿下は、カーラ・グレイに恋心を抱いている」
「……は?」
「知らぬは当人ばかりなり、か」
ショーンが言えばルーファスは意外そうな顔をしてる。
「そんな噂が?」
「まぁ、王宮の勤め人での噂だ。……フェリシア妃の本音を 私が……確かめてみようか?あの雰囲気では、殿下には維持でも本音を言わないかもしれない。さすがはブロンテ家の令嬢といった感じの強さのある方だ」
「二人で話すつもりか?」
「もちろん。任せてほしい、王太子を支える身として……そして何より友人として力になりたい」
「どんな本音が飛び出しても、受け止める覚悟をしよう。しかし、それにしてもなぜそんな噂が出たのか」
「これまで徹底して特定の女性を作らなかったわりには、幼馴染みのであるカーラには花やら薬やら贈っていたからじゃないか?殿下にとっては、妹の気持ちでも、周りから見れば元 婚約者候補だったのだから」
「二人きりで話したこともないし、あくまで友人の範囲だと思っていたのにな」
「そこが……殿下の甘さでしたね、なるほど私もそこに気づかなかった」
ルーファスが感心したように言った。
「ショーンは……以前から噂を知っていたな?」
「たかだかメイドたちの噂だと思ってましたが、もしかするとフェリシア妃殿下の耳にまで入っていたのだとしたら放ってはおけません」
「……情けないな……」
「第三者が入る方が、丸く収まる事もある」
ショーンはカップの紅茶を飲み干して、
「妃殿下はお茶を淹れるのも、お上手だ」
穏やかな笑みを浮かべた。




