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向こう
「……何もないですね、部屋があった筈の場所には壁しかなくて、入る為のドアは全部なくなってます」
暗闇の中を、二人は歩く。
歩いてかれこれ二十分は経っただろうか。
暗闇を歩くにつれ、ロウの裸眼は環境に適応し始めた。
今では、手探りで前方の障害物をなどを確認する必要などなく、転ばない程度には歩ける。
一方、初めから夜目が効くヴァルドレッドは、悠然と廊下を闊歩していた。
ロウはその後をそそくさとついて行く。
「逆だ、バカ。 無くなったんじゃねえ、初めから無かったんだ。 そんでもって、壁や床に手ぇ当ててみろ」
言われてロウは、不安ながらも壁に手を当ててみた。
どうだ、とヴァルドレッドは聞く。
「………動いて、ます?」
ああ、とヴァルドレッドは肯定する。
「胎動してやがる」




