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月を染めゆく緋色のベルベット  作者: 藍スミレ
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寸前で

「とりあえず、ここを出るぞ!」


 ロウの手首を握り、部屋を出ようとするヴァルドレッド。


 すると、先程ヴァルドレッドが開けていた筈のドアが閉まっていた。

 だが、彼女はそんな事を意にも介さず、ドアノブに手をかけようとする。


「待って!」


 一瞬、ヴァルドレッドはたじろぐ。

 普段から、あまり大声を出そうとしないロウが声を張り上げたからだ。


「なんだよ、もやし……いや、その通りだな」


 ヴァルドレッドが触れようとしたドアノブを見ると、彼女の手が触れる寸前で歪な形に変形しているのが分かった。

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